【12/9-11】俺はネームを描きながら三日間性的に興奮していた

   

【12/9】

【12/10】

【12/11】

朝:肉じゃが、おひたし、米
昼:うどん
夜:うどん

・この3日間は、東京ネームタンクでネーム集中講座を受けてたのもあって超忙しくて、特に11日はアレコレあって、非常に忙しくてヒーヒー言ってた。というわけで、11日の日記を。

・朝からビッグサイトへゲームマーケットに下見に行った。ほら、私、ボードゲーム作るって言ってたじゃないですか。何となくの会場の下見とか、価格帯とか調べにね。でも、滞在時間の余裕がマックス2時間しかなくってですね……。

・とりあえず予約しておいた米光さんのゲームを購入。2000円。それから、挑戦的な布教活動で知られるクリスチャン、松谷さん(こないだ雑誌に寄稿させて頂きました)のブースを発見して「バイブルリーグ」を購入。2500円。

 イエスやユダが野球をするゲームらしい。私はこういう頭の悪い野球ネタが大好きなんだ。

・あと、前から欲しかった魔導書バッグがあったので衝動買い。

 下見に来ただけなのに、なんのかんので1万円くらい使ってしまった。

・新宿に移動。丸亀製麺でうどんを三分で食ってから東京ネームタンクへ。今日はネーム講座の最終日。

・私が今回受講したのは、金土日の3日間、各日13時から20時までで32ページのネームを完成させるコース。そう聞くとすごくハードなスケジュールに思えるだろうが、「ふええええ! 無理だよおおお」と思いながらでもガリガリやればできるのである。そう、できるのである!!!

・ネームタンクの講義がどの程度有用かは、正直今の段階では適切な評価はできない。今回は講義で習ったシステムに則って、講師のごとう先生に手取り足取り教わりながら作品を完成させたからだ。今後、私が一人でシステムを活用して、それで良いネームが作れるようになれば本物と言っていいだろう。

・……だが、確実に言えることもある。上で書いた通り、「3日間で32ページのネームが描き上がった」ということだ。これは厳然たる事実だ……。もちろんネームはあくまで第一稿であり、ここからブラッシュアップやキャラ造形を煮詰めたりする必要があるが、しかし、ともかくも、できた。最初はふんわりしたアイデアしかなかったのに、ごとう先生に相談したら1時間後には話のコンセプトが固まり、2時間後にはプロットとページ配分が終了し、10時間後くらいにはネームが完成していた。なんだこれ……。

・ところで、今回の講座で最も素晴らしいと感じたところは、ごとう先生が受講者のモチベーションを非常に重要視していたことである。具体的には、作品のテーマ設定に「萌え」を置くことを推奨していた。このご時世に「萌え」とは古さを感じるかもしれないが、要は書き手各々のフェティシズムを作品にぶつけた方が良いという意味だ。これは講義内容が「システム」であるだけに特に重要なのだ。

・ごとう先生の講義では、かなりシステマティックに作品の構造を分析し、独自の手法であるNDS(ネームできるシステム)を踏まえて作品を作る技術を教える。読切漫画を作る時に必要(重要)な要素がピックアップされ、そこに要素を当てはめていき、作品の体裁を整えるやり方だ。

・しかし、創作というものがここまでシステム化されてしまうと、ややもするとそれはパズルになりかねない。「必要な要素」に適した材料を見繕い、適宜当てはめていくだけでも、このシステムに則ればそれなりの作品が作れてしまうのだ。だが、それが非常に危険であることをごとう先生は自覚しているのだろう。

・システムはあくまでもツールなのだが、下手をすると、そちらに振り回されてしまう。薄っすらとした「やりたいこと」があったとしても、システムに適合させようと四苦八苦している内に(漫画としての体裁を整えようとしている内に)、「やりたいこと」がいつの間にか雲散霧消してしまう。担当に言われて色々直しているうちに、体裁は整ってきたけど、最初にやりたかったことがどっかに行ってしまった。出来上がったものに全く納得できない。……そういう経験はクリエイターには結構あるのではないか。

・システムにも似たような危険性がある。システムに振り回されると、仏作って魂入れず、といった状態になりかねない。そうではなく、システムはあくまでもツール。自分がやりたいことを成り立たせるための「道具」でなければならない。フェティシズムはかなり強固な「やりたいこと」になりうる。「やりたいこと」を強く自分の中で持つことができれば、システムを道具として「利用」できるようになる。

・というと、「フェティシズムを人前でばくはつさせるなんて恥ずかしいぜ……」と思われるかもしれないが、そこはもう諦めて下さい! 創作はそういう己の恥ずかしいところを、作品というギリギリのオブラートに包んで人前にさらけ出す行為なので、本質的に恥ずかしいものなのだ。『ブリーチ』を見て頂きたい。どうだ、恥ずかしいだろう。あれこそが正解だ。

・しかし、そこがハッキリしていると作品としての強度が段違いになる。他の受講生の方々のネームを見ていても、結構みんな己のフェティシズムをばくはつさせていて、一本背筋の通った気骨ある作品が多かった。いや、もちろんフェティシズムじゃなくても、他に強く「やりたいこと」があるなら、そちらをやっても良いのだけどね。

・余談だが、講座中にちょっと面白いことをごとう先生が言っていて、「テーマに関しては困ったことがあって……実際、「読者に伝えたいこと」(テーマ)ってそんなにないよね」と。ここをぶっちゃけて言っちゃうのはすごいよなぁ。まあ、なので、そこから先生はフェティシズムに注目したわけだ。「伝えたいことない」からって作品が描けなかったらプロとしてやってられないので、なんか捻り出さねばならない。そういう時にフェティシズムはパワーになるのだ。

・「強固なやりたいこと」は作品のモチベでもある。前にも言った通り、私は英語のニュース記事はだるくなって途中でやめがちなのだが、英語のエロサイトであれば凄まじい集中力を発揮して延々と読める。興奮していると集中力が凄まじいのだ。今回、私は女子高生のおぱんつ漫画を描いていたのだが、3日間の作業中、ほぼ常時、自分の作品に対して性的に興奮しており、かなりの集中力を発揮できた。20人程の教室で、中には「初めて漫画を描いた」という人さえいたのに、大体7~8割くらいの人が最後までネームを完成させていた。おそらくはフェティシズムの力が大きかったのではないか。

・他の受講者の作品は、見た限り、何本かめちゃくちゃ面白い作品があって(「怪物ってそのへんにゴロゴロいるな……」と戦慄した)、半数くらいはちょっと手直しすればかなり良い作品になるレベルで、それ以外もポイントポイントでは光るものがあったりして、箸にも棒にもといった作品は一つもなかった。NDS(ネームできるシステム)の力なのだろうか。あと、全体的にどの作品もハードテイストでヌルさがない(これは何故だかよく分からないが……)。

・というわけで、極めて荒削りながらも32ページのネームができたので後に嫁に見せてみたら、あの辛口な嫁が爆笑して、さらに興奮してヒロインの物真似など始めたので、やっぱりNDSはすごいのではないか……。

・おうちに帰ってからesさんと放課後ウィザード倶楽部の1巻はなんで売れなかったのか、分析する議論を6時間程行った。これはそのうちにまとめる。6時間の議論をテキストにまとめるのは大体18時間くらい掛かるので、公開はまだしばらく先になろう。

 *

・『こころオブ・ザ・デッド』1巻発売です。

 Kindle版も出たよ。

・各種媒体でも取り上げて頂いています。

「原作を守りつつ頭悪いことを」 “アメイジング翻案家”架神恭介が語る、「こころ オブ・ザ・デッド」への義務感

 ねとらぼさんでは、なぜか私が和服を着せられてインタビューに答えたり。

漱石作品ゾンビ化「こころ オブ・ザ・デッド」1巻、文スト・朝霧カフカ推薦

 ナタリーさんでは、担当に言われるままに私が描いた1巻カバー絵付きで紹介されていたりする(一体誰が得するのだろう)。

 *

・それと、文庫版『仁義なきキリスト教史』に増刷が掛かりました。

 発売一週間以内に増刷って本当にあるんだな……都市伝説だと思ってた……。

 - 日記