【11/29-12/1】珍獣か、ビジネスマンか

   

【12/1】

朝:オレンジ
昼:鰯づけ丼、ちゃんこ汁
夜:回転火鍋

・クラウドファンディングの結果……!

 成功! ありがとうございましたー!!! これからはダンジョン&ダンゲロスの製作にエネルギーを傾けていくぜ!

・そして!

 東京コミコンに行ってきた! コミコン参加は何気に初めてである。何があるのかもよく分かってなかったが、お目当てはニンジャスレイヤー翻訳チーム&久正人先生のサイン会、及び、さおとめあげは先生によるコミッションブースであった。いわゆる一つの「おそるべきニンジャバミューダトライアングル」の完成というやつだ。

・ちなみに上記写真で「間に合うかなあ」と呟いていたのは、電車一本乗り遅れたら30分遅刻とかになってしまったからだ。整理券配布に間に合うかビクビクしてたけど、幸いにも間に合いました。

↑無事ゲットしました。

・東京コミコンはいろいろ楽しくて、プレデターとかエイリアンのデカいフィギュアがあるだけで興奮してしまう……。

 映画だとどうしても細部が確認できないんだよな。「エイリアンの体表にはジッパーみたいなのが付いてるんだなぁ」とか、そういう発見がいろいろあった。

・あとDC神輿。

 バットマンとかが乗ってるお神輿で、軽いノリで担ぐのに参加したら、むちゃくちゃ重労働で「だ、誰か変わってくれ~~」って気持ちで必死の視線を見物客に投げかけていた。しかし、こういうのは「ペンキ塗りを手伝わせたければ口笛を吹きながら塗るべきだ」と同じで、どんなに辛くても、私は満面の笑顔で「DC神輿担げて最高に嬉しいです!!!!」みたいなアトモスフィアを漂わせるべきだったのだ。苦役をやりたがる人はいない。羨ましがらせてから恩着せがましく交代するべきだったのだ!!!(最終的にはスタッフに代わってもらいました)

・あまりに疲れたので座れる場所を探した結果、ライブステージに椅子があったので着席。そこで見た「ジュリアナの祟り」というバンドが非常に高クオリティで、そして、私は彼らのライブを見て悟ってしまったのだ……。

・以前より私は「バンドは金にならない」と言っていたが、なぜ金にならないのかが分かったのだ。正確に言えば全くならないわけではないのだが、マネタイズ、及び黒字化が厳しい。というのは、バンドというのは、あれの実際は小さな会社運営なのである。

・私はこれまで、バンドがカネにならないのは「4人とか5人とかで売上を分割しなければならないからだ」と考えていた。単純に考えて、売上額が同じなら一人で作品を作れる作家業は4~5倍の収入となる(だから私は音楽でのマネタイズから離れて作家になったわけだ)。そしてもう一つの理由に「4~5人のメンバーをマネジメントしなければならない」という点がある。

・同様に漫画家にも「実は社長業」という側面がある。アシスタントを雇い、適切に指示を与え、士気を保ち、全体の完成度に責任を持つ。そうして経費を上回る売上を得なければならない。

・一方でバンドだが、こちらは漫画家の「漫画家/アシスタント」という純粋な雇用形態とは異なり、基本的には全員が同じ立ち位置であるため、別種の難しさがある。誰か一人が「もう飽きた」とか「疲れた」とか「音楽性が合わない」とか、そういった「本気度の違い」が生じることで簡単に組織が綻んでしまうのだ。

・「売上が4~5分割される」「士気を保つことが難しい」。つまり、人件費と社員のやる気……。まさに社長の直面する問題ではないか。なぜ「バンドで食うのが難しいのか」。今日、私が気づいたこれのアンサーは、つまり、「音楽家とは全く異なる別種のスキル『社長スキル』が必要になるから」ということだ。この問題は、ある程度アシスタント制度が整っている漫画家よりも、おそらくバンドマンの方がさらに深刻だろう。

・より具体的に言えば、バンドマスターは「俺は個性豊かな才能あふれるメンバーたちと一緒に最高の音楽を作るぜ!」だけではダメで、「俺は個性豊かな才能あふれるメンバーたちと一緒に最高の音楽を作りつつ、それを届けるべき顧客のペルソナ像を明確にし、分かりやすいコンセプトを打ち出して層に訴求し、積極的な広報活動を通じてブランディングを図るぜ!」くらいのことを意識しなければならないのだ……。つまり、会社と同じだ。そうでなければ、「4~5分割されても食える売上」を叩き出すことは難しいのではないだろうか。「プロ志向」とは本来こういう意味で使うべき言葉ではないだろうか……。

・「ジュリアナの祟り」はそれが相当高いレベルで出来ていたと思う。彼らの優れていた点は幾つも挙げられるのだが、一つ例に挙げるとすれば、「ビートたけし命名‼ ジュリアナの祟り」というフレーズをこれでもかという程に打ち出している点がある。どうも以前にテレビの企画で実際に命名してもらったようだが、これをここまで打ち出しているのは本当にすごい。実際に、休憩目的で椅子に座った私が最初に「オッ」と思ったのはやはり「ビートたけし」というフレーズであり、「一体どういう関係性なのだろう???」と疑問に思ったことから興味がスタートした。バンド名より先に「ビートたけし」が目に付いた程である。

・これはそうそうできることではない。だって、ビートたけしは彼らの音楽性に何の関係もないのだから。「一度テレビに出れて良かった」で終わらせず、「ビートたけしに命名された」という事実を延々と宣伝に使い続けている。これはめちゃくちゃ賢い。まず並大抵の人間にはできないことである。「俺達の音楽を届けたい」の前に、「音楽を届けるために、やるべきことをやる」という姿勢がある。そして、届けるために捨てるべきプライドを捨てている。

 女性ボーカルの蕪木蓮さんは中臣鎌足の子孫らしいが、当然そんなことは音楽性には一切関係がない。しかし、その点もものすごくプッシュされている。なんなんだ「#中臣鎌足」って。

・どうやってこんなディレクションができているのか、信じがたい程である。どうやってメンバー全員にこんな腹を決めさせたのか。ディレクション担当はリーダーの江夏さんらしいが、おそらく一廉の人物である。

・「ジュリアナの祟り」はかなりビジネスマンに近いタイプのバンドだと思うのだが、しかし、ここまで言っておいてなんだが、「珍獣」タイプのアーティストというのもあって、珍獣として生きていくのもアリっちゃアリである。たぶん、珍獣にしか生み出せない作品というのもある。あなたが珍獣であった場合は、あなたは檻に入れられて、皆の興味を惹くようなラベルを檻に貼られ、あなたが「あばばばばびびばあばばっばば」とのたうち回っているところを、面白おかしく紹介されることにより商品化される。つまり、セックス・ピストルズに対するマルコム・マクラーレンのようなビジネスマンが必要になるということだ。

・というか、大抵のアーティストはバンドマンも漫画家も小説家も基本は珍獣タイプであり、私も珍獣だ。「すごいプロデューサーの目に留まってメジャーデビューしたい!」という思いを抱いているバンドマンは基本的に珍獣タイプである。「すごいプロデューサーに商品をプレゼンして、自社製品を全国流通に乗せたい」ならビジネスマンであろう。

・そういうわけで、私はほとんど見たことがなかったビジネスマンタイプのバンドを目にしてびっくりしたのだが、といっても、ここ10年位のインディーズシーンにはすっかりご無沙汰なので、ジュリアナの祟りがどれほどレアな存在なのかは正直わからない。もしかして、ここ10年位でゴールデンボンバーなどの影響により、ブランディングなどの概念に精通したバンドマンが増えており、今ではさほど珍しい話ではないのかもしれない。もしくは、昔からこういうのをやっていたバンドはずっと一定数いたのだが、私がアラフォーに至り、そういった概念を獲得していったことにより、初めてそれに気付いたというだけなのかもしれない。

↑せっかく音楽の話をしたので、大昔に出した処女作の宣伝をしておこう。シンコーさん、電子書籍化すると言っときながら、ぜんぜんしてくれないな……。
  
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<今後の活動予定>

12月3日 漫画家勉強会(@トリガー)
12月6日 取材
12月8日 マンガのハナシ vol.3 味漫皇決定戦
12月16日 西山田先生『さくらのはなみち』発売記念イベント
12月18日 取材
12月19日 ナンバーナイン忘年会
12月20日 ヤンマガ忘年会
12月23日 マンガ技術研究会・定例研究会

※10月25日~11月30日 クラウドファンディング
※毎週金曜夜:ダンゲロス・ボードゲーム会(in東中野ディアシュピール)

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