【11/24】二次創作は違法なのか犯罪なのか

   

 唐突にバズった。ツイッターというのは、いつ、なんのタイミングで、何がバズるのか全く分からない。

・これは元がはてなの記事で、それは今はすでに削除されているが、二次創作者に対して「違反」「犯罪者」「言えないけど止めて欲しい」と言っていた内容であって、それに対するメンションである。

 で、これに対して次のようなメンションが飛んできた。

 最初は脊髄反射で「オッ、バズり名物、クソリプか!?」と思ったが(失礼)、よくよく考えてみると、これは「犯罪」の定義次第によるもので、そして、犯罪の定義に関しては私も確たる知識がないことに気付いた。というわけで、ちょっと調べてみたのだが、分からない。

・確かにWikipediaの「親告罪」のページにはこう書かれている。

しばしば親告罪は親告されなければ犯罪ではないと勘違いされるが、公訴を提起するには告訴が必要というだけでれっきとした犯罪である。

 だが、直感的に「これはおそらく『犯罪』などの見た目の語義に惑わされてはダメで、実際的な意味を、法学の素養がある人から聞かなければ分からない次元の話だ」と感じた。Wikipediaの記述が間違ってるという意味ではなく(間違っている可能性もあるが)、書かれている字句を文字通りに読むのと、その背景知識を踏まえながら読むのとでは受ける印象が全く異なることが多々あり、これもその類の話ではないかと感じたのだ。

・で、素養がありそうな人とTwitter上で議論を行った(とはいえ、相手に本当に素養があるのかどうかの裏付けが取れないのがネックだが、議論の過程を見るにおそらく素養(法学の学士以上、もしくは法律的な実務に携わっている)があるのだろう、と判断した)。その最終的な結論が以下である。今回の日記は備忘録として、以下の情報を自分のために残しておくといった意味合いが強い。なお、この結論は昨日の段階では最終的結論ではあるが、未だ暫定的結論であり、私の知識と素養では正確性を担保できないことを付け加えておく。また、私の以下の解説もおそらく一定の素養がなければ理解しづらいと思われるが、本記事は第一義的には私の備忘録であるため、ご容赦願いたい。

・初め、私は「二次創作は著作権者が訴えるまでホワイトであり、違法でも犯罪でもなく、もちろん犯罪者でもない」と思っていた。なぜなら、裁判で結果が出るまでは、違法であると正確に判定できないし、犯罪であるとも判定できないし、犯罪者でもないからだ。だが、この認識は正確に言えば、どうも違うようである。

・まず、「二次創作は発表した時点で著作権侵害であり、違法である」ようだ。ただ、これには様々な留保が付く。まず「二次創作が著作権侵害である」というのはその内容にも依るが非常に微妙なラインで、先日出た判例を鑑みれば、かなりの程度まで「意外と侵害してない」「ちょっと侵害してるけどまあいいよ」というものである。なので、 「二次創作は発表した時点で著作権侵害であり、違法である」 が、一方で結構な場合において「裁判をしなければ違法かどうかは正確には分からない」。そのため、非常に正確に言うのなら、「二次創作は発表した時点で著作権侵害であり、違法である(と裁判で判定される可能性のある行為)」となる。 裁判で違法だとなれば、その時に違法行為をしていたことになるので、「裁判をしていないから違法ではない」ではなく、「裁判をした結果、違法となる可能性がある行為」である。

・では、違法なら悪いのかというと、これがまた微妙な問題で、このあたりは法整備の問題も絡んでいると思われる。著作権侵害は親告罪なので(※デッドコピーに関しては非親告罪だが、今回は二次創作の話をしているので脇に置く)、著作権者が問題視しなければ起訴されない。ただ、「告訴」と「犯罪」もまた別物らしい。

 無知園児さんとキリュさんの「犯罪」発生タイミングの認識も微妙に異なり、前者は「公的機関が認知した段階で犯罪という事実が成立する」、後者は「裁判で有罪になった段階で犯罪と認められる」となっている。このあたりになると私にはどちらが正しいのかジャッジ不可能だが、どちらにせよ、ここから言えるのは、「著作権者が問題視してアクションしない限りは、二次創作は違反であっても犯罪ではない」ということだろう。

 一方で、発表した時点で犯罪が成立するという意見の方もいることを追記しておく。私としては、二次創作発表時は「犯罪と判定される可能性のある行為」ではあっても、「犯罪」は成立しないと思うのだが、分からない。

・この辺りはもはや言葉遊びのレベルであり、実際上は「著作権者が問題視しなければとにかく問題ない」で間違いないのだが、ただ、「二次創作は行った時点で犯罪か否か」というのは(実際的な意味合いはほぼ無いにせよ)一般人にとっては響きの良さという面で看過できない問題を孕んでいるとも感じる。たいていの人は字面しか読まないのだから。

・まあそれで言うと 「二次創作は発表した時点で著作権侵害であり、違法である(と裁判で判定される可能性のある行為)」 という、これも結構ネックなのだけれど。こうやって正確性を期して言及すると、それを見た多くの人達はふわっと理解して、実際的でない意味合いで情報を広めてしまう。それを防ぐためには、このように長文を使って、実際的な意味合いのニュアンスまで伝えていかなければならないのだが、そのような人たちは長文を読まないので、この努力も意味がないのである。

・閑話休題。で、さらに言えば、公式側が二次創作に関して許可の範囲を明確にするガイドラインを出した場合だが、これが著作権法上の「利用の許諾」に当たるのか、「著作権違反してても特に訴えませんよ」という「表明」に当たるのかは微妙なラインである。私はかつてダンゲロスの二次創作フリーのガイドラインを作る際に、「これはあくまで表明」であると(講談社を通じて)弁護士から説明を受けている。

・「表明」である場合、それが何を意味するかと言うと、公式の提示するガイドライン通りに二次創作を行ったとしても、その二次創作は「著作権侵害」で「違法」であるということだ。逆に言えば「違法」とはその程度の意味しかない。

・この辺りはおそらく法律が「完璧に実情に即してはいないが実際的に機能はしている」という状況によるものだろう。つまり、二次創作が違法で(仮に発表した時点で犯罪ですらあったとしても)著作権者が問題視しない限り、二次創作者側には実際問題なんの支障も発生しない。違法行為をしていても(犯罪行為もしているのかもしれないが)特に誰も困らない。「だからまあ、このままでいっか」。そういうニュアンスでほったらかしにされているのが現状だと思われる。

・問題はこういう状況を、われわれがどう言語化して、何を伝えるべきかだ。もともとの記事にあったように、「違法」で「犯罪者」であるとして二次創作者を罵るのは、これはやはりよろしくない。違法ではあったとしても「違法」は上記のようなニュアンスを孕んでいる。「違法」という字面だけで思考停止してはいけない問題なのである。なお、「犯罪者」というのは全く話が別で、犯罪者とは裁判で有罪判決を受けた者に対する言葉であろうから(推定無罪の原則を考えればそうとしか思えない)、これはもう全く当てはまらない。

・なので、私の以下のツイートは微修正する必要があるだろう。

「二次創作は違法」というのは正確には「誤った認識」ではなかった。ここは私のミスであるようだ。最初はクソリプかと思ったが(失礼!)、TamTan⚓︎4th氏の指摘により、自分の認識にも問題があることに気付くことができたので(上記のまとめが正しいとしてだが)この点では礼を述べておいた。

・以上である。なお、上記のツイートは前述の通り、私の認識ミスが部分的に含まれていたわけだが、特に削除したりはしない。代わりに今書いているような説明を残している。こういった過程を残すことにより、最終的に認識を深めることが大切なので、ミスが含まれているからと言って、すぐに消したりしてはいけないのだ(内容にも依るが)。批判を受けて、訂正する。その過程も重要である。

・私が書いてきた書籍にも、後になって見ると、ミスや認識の甘さ、思索の浅さなどがどうしてもある。しかし、それはその時の私の全力であるので、それはそういうものである。その後の著作やブログなどで適宜修正意見を発表することでフォローするしかない。

・私も含め、すぐに的確な知識を得たいであろう多くの人には残念で仕方ない話だが、どうしても知識というものは発展段階のものを伝えることしかできないのだ。だから、何らかの情報に接した時は、その時点での「点」を見るのではなく、「流れ」の中で受け取ることになる。「A氏はこう言っている」ではなく、「****年のある時にはA氏はこういった認識を持っていた(昔や将来は違うかもしれない)」という形で情報に接するしかない。「なんて面倒な!」「正確で確実で揺るぎない真実だけを示してくれ!」と思うだろうし、私だってそう思いたいのだが、残念ながら、こういった七面倒臭い形でしか情報というものは得られないのだ。私がこれに気付いたのは30歳を過ぎてのことだったので、大学生の方とかは今認識しておくと有利だと思う。

 *

<今後の活動予定>

11/29 定例会 (@マンガ技術研究会
12/16 初めての人歓迎会&今月のニュースと新連載を振り返る会(@マンガ技術研究会

※毎週金曜夜:ダンゲロス・ボードゲーム会(in東中野ディアシュピール)

お布施の窓口:https://www.pixiv.net/fanbox/creator/1149979
(FANBOXに月額課金すると、その溜まったお金でかがみ家が豪華客船でクルーズします。いつか……いつか、その時が来たら……きっとします……)

 - 日記