【12/29】レビュー「ジョーカー涼」


 「コズミック流」「ジョーカー清」と来て、「ジョーカー涼」を読了。面白かったですよ、とりあえず、ここまでは。

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 さて、何からレビューを書けばいいんだろう。とりあえず言える事は、ネタバレを一切せずに書くことはできないから、未読の人はこのレビューを読まない方がいいということです。それでは読んだ方がいいのかどうか分からずレビューの意味がないと思われるかもしれないので、読んだ方がいいかどうかだけ伝えると、うん、読んだ方がいいんじゃないかなあ。でも、読んだら怒るかもしれないなあ、僕は怒らないけど、怒っても全然不思議じゃないよなあ、というそんな感じです。

 アマゾンの読者レビューでも、一人のレビュアーは満点を付けて、7人中3人が「参考になった」としていますが、もう一人のレビュアーは最低点を付けて、33人中18人が「参考になった」としています。見事なまでに賛否両論分かれてますが、ほんの若干、アンチの方が多い感じでしょうか。僕、個人としては読んだ方がいいんじゃないかなあと思う。もし読むのなら、のほほんと読むのではなく、真剣に推理し、犯人の見当をつけてから解決編に進むことを、強くはオススメできないけど(推理って疲れるからね)それなりにオススメします。

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 では、ここからは読んでいる人しか見てない前提でレビューするけど、物語の構成が非常に良いですね。具体的に言うと、螽斯、鴉城蒼也の第二班探偵二人が一度に毒殺されるくだりが最高にアツイです。黒死館の見立てが完成し、「これ以上死人が出ることはない」と誰もが(竜宮城之介さえもが!)思った直後の無差別殺人。無敵の探偵と思われた第一班竜宮城之介の悔恨と苦悩をバックに、物語が最高潮の盛り上がりを見せるところです。解決編、ならびに、九十九十九登場のカタルシス前にこの一大イベントを差し込むところが、清涼院先生の非凡な才能を感じさせます。

 そして、真打【メタ探偵】九十九十九により明らかになる本当の真犯人。結末は、「ジョーカー清」で感じた、「メチャクチャすごいハズのJDC第一班が二人掛かりでこの様だけど、本当にこの犯人はそんなにスゴイの?」という疑問に答えてくれる、本当に強大な真犯人でした。いや、ネタ自体は別によくあるもので想像の範疇だったんですが、その見せ方が巧かったため文句はありません。大どんでん返しを執拗なまでに繰り返し、そのどんでん返しの連続でアラを大量発生させておき、読者が疲弊し「もうなんか真犯人はどうでもよくなってきた」というところで明かされる本当の真犯人。この「読者をどうでもいい気持ちにさせる」という点が非常に巧妙だったと思うのです。

 例えば、京極夏彦の大長編もそうなのですが、あまりにドラマチックで大掛かりな謎解きは、読者に大きな感動と絶大な疲労感を同時に与えると思うのです。様々な複線が回収され、物語が急速に収束する様は美しくもあるけれど、語られる「驚きの展開」があまりに多すぎて食傷気味になるんですよね。ジョーカーはそれが執拗なまでに繰り返されるので、素直に「おお!」と思えるのは二度目の辺りまで。真犯人魅山をベースとして収束するあたりになると疲労感で、「ああ、はい。魅山犯人ね。動機? ふーん、そうなの」ってなってしまい、さらに源氏物語がうんぬんとなると、「もうどうにでもしてくれ。シラネ」となってしまうわけです。ここまで清涼院先生はきっと計算している。読者がどうでもよくなったからこそ、最後の真犯人をあるがままにすんなりと受け止められるのです。

 また、作中に登場する密室の謎解きのくだらなさ、つまらなさも読者のゲンナリ感を促進します。その極め付けが「奇跡が起こって通り抜けた」であり、次点が「ビックリしてこけた拍子で頭を打った」です。特に前者は、思わず単行本を引き破りそうになりました。僕も「完全HIPHOPマニュアル」の密室殺人で、「よし、こんな密室を作ったのは商業ベースでは僕だけだろう」と自負してたのですが、なんだかこれじゃあ僕が清涼院先生のフォロワーみたいじゃないか。悔しいなあ。

 というわけで、中盤までは盛り上げるところでキチンと盛り上げてる立派なストーリー小説だと思います。終盤はもうテクニックの次元の問題ですね。「読者を疲れさせる」という点まで考慮に入れてる時点で、清涼院先生は一線を越えたクリエイターだと思います。だから、僕の評価は決して低くないですよ。どちらかといえば高いです。ここまでは。

 しかし、問題はここからでしょう。コズミック・ジョーカーを貸してくれたNo.5も、「ジョーカーは良い小説だと思った」「でもコズミックを読み終わったらジョーカーごと破り捨てたくなった」と言ってます。残り一冊、ここからどれほどヒドイ展開を見せるのか、非常に楽しみです。いよいよ「コズミック水」に取り掛かりたいと思います。










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