【12/10】レビュー「コズミック流」


 No.5から清涼院流水著「コズミック」上下巻と「ジョーカー」上下巻を借りたのでまったり読んでます。やっとコズミック上巻(流)だけ読み終わったのでレビュー。

 コズミックは密室卿という連続殺人犯(?)が一年間で1200の密室殺人を行うと予告し、それに特殊な推理能力を持った探偵の集まりであるJDC(日本探偵倶楽部)が立ち向かうというケレン味たっぷりのお話です。たぶん。

 たぶんっていうのは、まだ上巻読んだだけだし、いかんせん破天荒すぎるので下巻でどうなるのか想像がつかないんですね。下巻冒頭で漫☆画太郎みたいに密室卿がゲロとウンコにまみれて死んでも驚かないよ。

 で、コズミック流ですが、19の密室殺人が19の短編形式で描かれます。1年間で1200の密室殺人なので、密室卿は1日に3人以上は殺さなきゃいけないわけで、劇中では1月1日から連続殺人がスタートし、1月6日の時点で19の密室殺人が行われています。まあ、当たり前に考えて、このペースで1200も密室殺人が描けるわけないので、下巻に移行する際に密室殺人をガツンと端折るか、それか1月上旬くらいで事件が解決して密室卿が捕まる(捕まるとかそういう次元なのかな?)のだと思われます。つまり、この19の密室殺人エピソードは、探偵が絡む一部を除いて、あまり後に影響してくるとは思えないのです。

 それで、ここが問題なのですが、読者的には「この19の密室殺人エピソードはあまり必要ないな」と思っているわけで、ぶっちゃけあんまり楽しくないのです。特に序盤がきつい。1つ1つの密室殺人エピソードは短く、ページ数にして20ページ前後。その短いページ数に数人の登場人物を登場させ、彼らの性格や生い立ち、現在置かれている状況などを語るのですから、読んでる方も大変です。しかも、清涼院先生は普通の人間の状況描写が別に面白いわけでもないので、主に普通の人しか出てこない序盤が特に辛いです。なんとかそのキャラクターを把握しても、すぐに死んじゃって次の話に移りますし。

 まあ考えてみれば、普通のどこにでもいる人たちの描写なんて、そんな面白く描けるわけないんですから、清涼院先生の筆力の問題というよりは、舞台設定自体が退屈にならざるを得ないのかもしれません。1200もの密室殺人を描くというケレン味たっぷりの設定を用意しつつも、1200も書くからには「ごく普通のありふれた一般人も殺さなければならない」わけで、ケレン味溢れるけど退屈という、なんとも残念なジレンマに読者は序盤で苦悩するのです。退屈なキャラクター設定を連続で読まされるのは結構キツイ。

 しかし、序盤の退屈な連続殺人も、密室卿というキャラクター説明のためには不可欠なこと。少し我慢して読んでいると、ようやくJDC(日本探偵倶楽部)にフォーカスがあたり、物語にケレン味が出てきます。それと同時に、密室連続殺人の被害者たちも特殊な職業だったり、特殊な状況であったり、エピソードの描き方にも工夫が現れますので、中盤からはそれほどまで退屈でもなくなります。

 例えば、8つめのエピソード「ボウリング場の密室」では、これまでキャラクターを描いた後、それが殺害される描写で締めていたのを一変。先に殺害描写を描いた後で、その当時の周囲の人物の様子を描写していきます。また、エピソード10「見えない電話密室」では、素人探偵が今回の事件に関する何かを掴んだところで殺害されるなど、単なる殺人エピソードの寄せ集めではなく、ストーリー性に関わるエピソードとなり、俄然集中力が出ます。

 そして、コズミック流の終盤では、密室卿と思しき人物が密室で殺され、さらにJDCに所属する探偵、ピラミッド水野(核心に触れつつも100%推理を外す能力を持つ)が推理を完成した時点で殺害され、ついにJDCと密室卿が直接的なかかわりを持つところで終わります。つまり、序盤は苦痛、中盤まあまあ、終盤はアツイというわけで、序盤さえ乗り越えれば楽しく読めるんじゃないでしょうか。個人的にはエピソード5までがキツかったですね。

 僕が面白いと思ったエピソードは、エピソード14「パラノイアの小説密室」で、精神異常者のキャラクターが「自分は小説の登場人物に過ぎないのではないか」と思い込むくだり。確かに小説中ではそれは精神異常なのだけれど、でも実際に小説の登場人物だから正鵠を射てるんですよね。さらにそのキャラクターが「誰か、返事をしてくれ。これを読んでいる者が本当にいるなら、声を聞かせてくれ!」と読者に語りかけてくるんですが、これがなんとも不思議な気持ちになってしまい、僕はバカなので本に向かって小声で「おーい」とか言ってしまいましたよ、恥ずかしい。

 後は、本気でホモな店長が、のんけのバイト店員をどうやって手篭めにしようか考えるエピソード15「ホテルのダブル密室」も面白かったです。「屈強なオレの肉体でも、より屈強なあいつには敵わないしなあ」と、どうやって力ずくで無理矢理犯すか真剣に考えてるんですよ。つまり、バイト店員は腕力が衰えたら即座に店長にレイプされるわけで、まことおっそろしい。


 さて、そんなところで、次はジョーカー上巻を読みます。ネタバレは勘弁ねー。











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