【9/15】2009年42号のジャンプ感想(まとめ)


リリエンタール

 さすがは葦原先生……! なんという期待を裏切らぬ出来栄え……!

 読切版と違って悪役がハードテイストだったので、「以前のハートフルな感じにはならないのか」とちょっとガッカリしたのも束の間、今度は「room303」のようなホラー要素が不意に現れて、なるほど、これは巧い折衷案だな、と感心したり。確かに読切版のリリエンタールはハートフルではあったけれど、若干、雰囲気が柔らかすぎるきらいはあったからね。room303のホラーテイストが秀逸すぎただけに、葦原先生にはそちらの方向でも才能を発揮してもらいたかったってのはあるので、今回のリリエンタールは葦原先生の良いトコ取りなイメージ。

「RD-1がどんな形状かはまだ不明です」
「こいつ(絵本)がRD-1か!?」

 この辺りも葦原先生の巧いところで、凡百のストーリーテラーなら、「RD-1=犬」まで悪党に認知させちゃうものですが、彼らがこの情報を知らないというだけでグッと緊張感とリアリティが生まれています。「知らない」ために悪党たちも焦って混乱し、彼らの感情の動きに読者も感情移入できちゃうんじゃないかな? 「こいつがRD-1か!?」の誤解なんかも巧いところで、ここですぐに正解に辿り付かず一歩引きながらも、それでも物語的に停滞してないっていう。むしろ、次の展開(良く分からないところに落ちていく)に繋がっています。

 最後の悪党の救助も単なる博愛主義というわけではなく、結果論ではあるけれど、自分たちの脱出には救助が必要不可欠だったというフォローも嬉しいです。単なる博愛主義だと押し付けがましいし、かといって、理詰めで必要な行為をしただけでは主人公の魅力に欠ける。なので「基本は博愛主義だが、結果論としては必要な行為であった」という落としどころは非常に巧い。ちょっと葦原先生からは学ぶべきことがたくさんあるなあ。

【メモ】

1、主人公と敵対する勢力であっても事件の全容を知るわけではなく、現場では焦りや混乱も当然ありうる。勘違いなどもする。それらがリアリティに繋がる。

2、登場人物の勘違いなどで物語(謎の解明)が進展しない場合は、派手なアクションや急展開などでフォローし、読者に停滞感を感じさせない。(※これは週刊漫画限定のテクで小説などでは必要ないかも)

3、主人公の性格を一般的な善人にする場合は、たとえ主人公自身の行動はその性格によるものだとしても、結果論としては、客観的に見てもその行動が必要であったことにする。これにより主人公の善人性を押し付けがましくなくフォローできる。

 うん、普通に勉強になるな……。

 しかし、今週、唯一残念だったのは、最後に悪党たちを官憲に引き渡した描写もなく、その辺りがなあなあで終わってしまったこと。彼らの目的や背後にある組織などは、当然、司法が追及して欲しいんですが、そこらへんが描かれないとリアリティに欠けちゃうな。「警察から連絡があったけど、まだ何も聞き出せてないみたいよ」的な一言だけでいいので次週に期待したいところ。


保健室の死神

 あー、分かった。連載二回目にしてやっと分かったわ。これ、ブラックジャックだ。医学の知識がなくても描けるブラックジャックだよ。

「何らかの異常が起こる」⇒「病気のせいであると特定する」⇒「病気を治す」

 というブラックジャックの基本フォーマットを踏襲してるんだ。「保健室」は最後の病治しフェイズがすごくつまらないんだけど、「病気のせいであると特定する」ところまではブラックジャックと同じニュアンスで楽しめるので、そこまでの過程に注目すればいいんじゃないかな? ただ、ブラックジャックが医学の知識で病治しフェイズを魅せているのに対し、「保健室」の病治しフェイズはファンタジーバトルで、しかも、そのファンタジーバトルが特に目新しくもなんともないので、その点はやっぱり弱いかなぁ。


鍵人

「いっちょこっから城ごとぶった斬ってやろーぜ?」

 田中先生の真摯な態度が幸いし、かつ、田中先生の理性が災いした1コマ。

 確かに主人公の性能を考えれば、これが最善手とは言わないまでも(デジャニラに当たるかどうかも分からないし、そもそもデジャニラがいるかどうかも分からない)主人公にはこれができるんだからやろうとするのが当たり前だし、実際にやらせようとした辺り、田中先生は本当に真面目だと思います。ここまでは「自分の設定にウソを吐いていない」。緑間くんの3Pシュートが100%入るようなものです。えらい。

 しかし、残念ながら田中先生は気が狂っていなかった。「皇帝が巻き添えになるかもしれないからその戦術はダメ」という、まったく理性的なアンサーを用意して、その選択肢を潰してしまったのです。いや、これも含めて田中先生の真面目さと言ってしまって良いのでしょう。「最強の戦術を提示しつつも、物語展開の都合上、合理的な理由によりそれを却下する」というのはとても真面目なやり取りです。けれど、それは真面目だけれど、あまりに優等生すぎた。そして、残念ながら優等生はつまらないんだ。強力な兵器にはそれに見合ったムチャが欲しいんだ。断空という大規模破壊能力を持ちながら、まったく理性的な回答でその選択肢を失った今週の鍵人は非常に残念だったと思います。


 ***

 ちなみに、僕なら断空は狙撃に使うかなー。……といっても、キレイにデジャニラさんに当てる必要はなくて、「左の塔の最上階がヤツの私室」なら話は簡単なんですよね。深夜など、デジャニラさんが自室で就寝していることさえ確認すれば、

 こんな感じで切れ目を入れれば、後は自重で部屋ごと塔の先っちょが落ちていくので、デジャニラさんが超人でない限り暗殺成功だと思います。周辺住民に迷惑を掛けずに、ってのは難しそうだけどね。まあ、そう考えれば、相手に隙を窺うヒマを与えず、直ちに捕縛に走ったデジャニラさんは最善手を打ったと言えるのだろうか。


ナルト

 ものすごくつまらなかった先週とは打って変わって、今週は良くも悪くも岸本先生らしくてグッドでした。サスケが「千鳥」とか言って、忍術らしい忍術を使っている一方で、雷影さまは「重流暴(エルボウ)」とか言って「おめー、なにをさも忍術かのように言ってんだよ!」って辺りとかすごい面白かったです。雷我爆弾の三点視点も見れば見るほど面白い……!

>>  このコマから得られる感慨は、まさに「岸本斉史」としか表現しようのないもので、「ラリアットを喰らって吹っ飛ぶ忍者」という、字面だけ見るとバカとしか思えない光景を3点視点でこれでもかと見せ付けるその様は、奇異で滑稽でドリフ的でありながらも、明らかに岸本斉史は大まじめであり、大真剣であることがひしひしと伝わってくるのです。そして、やはりこれは総体としては、「岸本斉史である」としか言うことができないのです。

 これは、以前サスケがキラービーさまのラリアットを喰らった時の僕の感想なんだけど、今週も同じ流れだよね。神話の時代から運命に復讐を刻まれたクール忍者のサスケがライガーボムを喰らってるシーンを三点視点で描写するという、なんともいえぬこのセンス。まさに岸本斉史としか言いようがない。


・マダラ「長門はたまたま人に感化されやすい子だったがな」

 これ、「長門はバカの子だったからな」と言ってるようにしか思えないよ! しかし、マダラさんは「人をコントロールするには心の闇を利用するテクニックが必要だ」とか言ってるけど、人を操るのに心の闇だとかテクニックだとか言ってる時点でナルトの敵じゃねーなと思いました。ナルトの人心操作能力(ナルト菌)は深層心理だとか技術だとか、そういうチャチなものとは一切関係ないよ。もっと絶対的で暴力的な、有無を言わさぬ力だと思うんだ。


・雷影「雷影をなめるな!!!」

 これは予想外の展開……! 岸本先生やるね! 雷影さまかっこいいよ! 

 ……というか、弟の仇というのはあれど、全忍び里共通の脅威であるサスケに単身立ち向かい、我が身も省みずに猛攻を仕掛けるなんて、雷影様こそ真に連合軍の総指揮官に相応しいのではなかろうか。兵の出し惜しみとかいうレベルじゃねーぞ。トップが我先んじて体を張ってる。なんて立派な人なんだ。少なくとも「腰が痛いから初期位置から動かない」土影さまよりは明らかに立派だ。


トリコ

 トリコはバトルとかしてるよりも、世界設定を延々と語ってくれたり、メシを食ってる方が面白い気がするのは僕だけだろうか。今週すごく面白かったもん。この面白さはゾンゲさま再登場だけによるものではなかろうて。

 しかし、先週の補足であれだけみんなで持ち上げた小松が、いまだ中堅クラスってのは残念だなあ。「読者は知らないだろうが、実は料理界では小松は準トリコ級の有名人なのであった」っていう感じで脳内補完してたのにね。確かに今週の描写を見るに(技量は分からないけれど)経済的、設備的にはまだまだって感じだもんなあ。


スケット

 センターカラーの使い方は非常に効果的だと思いますし、モノクロから少しずつ色付けされていく演出とか大変巧みだったと思うのですが、このお話で感動するには僕の心は少し擦れ過ぎているようです。


ぬらりひょん

「誰が狙われるかまで分かってるのに、どうして陰陽師たちは一人ずつ戦ってるの? ばかなの??」

 これに対するアンサーが提示されましたね。答えは「陰陽師側も一枚岩ではなかったから」。まぁ、リクオのところも一枚岩ではなかったのだし、これも自然なことなのかもしれません。……ということは、ホントに仲が良いのは羽衣狐さまのところだけか。ま、そりゃそうだよな。セーラー服の女子高生のためなら団結できても、「京を守るため」なんて抽象的な目的や、「男子中学生を守るため」なんて理由じゃ団結しきれないよな。

 ところで、ハンター協会といい魔法律協会といい、「本当はすごい奴らの集まりとされている集団」に全力を出させないためには内輪モメは便利な要素かもしれませんね。魔法律協会が本当にすごい奴らかどうかは甚だ疑問でしたけど!


 ***

 最後の陰陽師x3の展開はかなりよろしかったのですが、しかし、返す返すも惜しいのはやはり先週の灰吾さん。今週の展開もね、良いんですよ。すごく良い。主人公側ではない実力者たちが団結して敵に立ち向かうとか、すごく良いと思うんです。でも、彼らは「やれそうな子たち」なんだよねー。やれそうな子たちがそれなりにやれるのは当たり前なので、むしろ、灰吾さんのようなしょぼくれたおっさんが活躍してこそ意外性ってなもんなんですが、ああ、灰吾さん、もったいなかったなー。


こち亀

 レバー操作ミスというヒューマンエラー一つでこれほどの大惨事になるのでは、これは両さんというよりも中川の会社の管理責任のような気がします。両さんが何もせずとも、いずれ発生した惨事ですよ、これは。


バクマン

 あー。やはり終わったか。

 まあ、ジャンプ作家追体験漫画としては、打ち切りもいずれ描くつもりだったに違いないのでタイミングとしてはここらかなーとは思ってましたが。

 しかし、打ち切り路線に入ってからの展開は、「努力してもダメ」っていうニュアンスが強かったですね。もて王や勇者学も中盤以降、面白くなっていってるはずなのに打ち切られたし、なんというか、作者の努力とか工夫よりも、「流れ」のようなものが重要な感じなんでしょうか。人気低迷の流れになったらどれだけ努力しても回復しない、みたいな。実際、序盤の方で見切りをつけて読まなくなる読者も多いでしょうしね。サイレンとかたぶんいつもギリギリで生き残ってるんだろうけど、あれはどうやってるんだろうなあ。

 一方、どうにも感情移入できず、どうにも納得できないのはサイシューの大学進学。何を言ってるの、この子たちは……?? 彼らは高校生にしてジャンプに連載という尋常ではない偉業を達成した非凡な人間たちなのに、どうして社会的ステータスに関してはそこらの凡百と同じ発想しかできないのだろう。何か学びたいことがあるでもなく、今から付け焼刃の受験勉強で受かる程度のところに行くわけで、彼らが大学に行く意味は「いま何をなさってるんですか?」と聞かれた時に、「大学生です」という"言い訳"の意味しかないわけです。「プロの漫画家だから、次の作品に向けて準備中です」でいいじゃない。どうしても社会的ステータスが欲しけりゃ「フリーター」ってのもあるのにね。なんでサイシューはここら辺こんなに惰弱なんだろうか。

 それにさー、もしTRAPがもう1クール続いて、それから打ち切りになってたら受験に間に合わないから大学にも行けなかったわけですよ? 少なくとも一年は。彼らは「たまたまいま終わったから大学に行く」だけなんですよね。漫画に関してはあれだけ真剣なのに、どうして漫画以外のことはこんなに行き当たりばったりなんだろう。彼らのこの特異な思考様式はどうにも理解できないや。恋愛も人生観も作品の作り方も、とにかくサイシューには共感できないなあ。福田さん蒼樹さんとかは大丈夫なのに、主人公が一番共感しづらい。


あねどきっ

「前回のあらすじ:胸を揉んだら、三人暮らしになりました」

 本編はともかく、あらすじは面白いぞ……。


サイレン

 ……帰んのかよ!

 先週のパラレルワールド説明はなんだったんだ……。「ドルキさんを倒したことに意味はないと思っていたが、そんなこともなかったと思ったら、やっぱり意味はなかったぜ!」ですか……。まあ、ドルキさんを倒したって言っても、そもそも倒したのはカイルだったわけですしね。未来世界は最初からエルモアウッドたちの戦いでした、ってことでいいのだろうか。でも、これって、「よし、オレたちは帰るから、後はお前たちで頑張れな!」ってことだよなあ。んー。なんか納得いかないものが残る……。


ブリーチ

 今週のブリーチはOSR抜きに読むことはできまいて。


 もはやノーダメージが基本となった虚閃。その虚閃をメインウェポンとするスタークさんは常に苦戦を強いられてきました。彼もこれはマズいと思ったのでしょう。なぜ、自分は虚閃などをメインウェポンにしてしまったのだろう、と後悔することしきりのはずです。

 そこで彼が取った手段とは、「これはただの虚閃ではなく、オレの魂なのですよ」と説明することによる虚閃の強化でした。魂と言われればなんだかすごい気がするし、なんだかすごい気がすればOSRが上がって威力も上がるというわけです。ですが、実際のところ、虚が共食いをした結果として今のスタークさんになってるわけですから(虚が共食いをすると大虚になるらしい)、そう考えると、あの狼の弾頭も虚をブン投げているようなもので何がすごいのか良く分かりませんが、とにかく魂を込めてると言われればすごい気がするので仕方ありません。逆境ナインでも、ピッチャーが魂を込めた「男球」は打てませんでしたしね!

 しかし、哀しいかな、それでも所詮虚閃は虚閃。「ただの虚閃ならあんたらみたいに強い連中に致命傷を与える力は無えさ」などと言っていますが、今回の魂虚閃もどう見ても致命傷を与えていません。なんだかスタークさんが可哀想になってきました。バラガンさまは即死攻撃だったのに、なんなんでしょうか、この格差は。

 思ってたよりも遥かに魂虚閃が弱かったスタークさんは、さらにOSRを稼ぐ必要性を感じたのでしょう。「逃げりゃ見逃すぜ」と、OSR原則に則り相手を見逃そうとしましたが、こんな古典的な手が通用する相手ではありません。そこで、「仕方無え、止めって言葉は好きじゃねえが……止めといくぜ」と彼が宣言した、その瞬間! 敵に止めを刺そうとしたその一瞬のOSR低下を見逃さず、ローズの不意打ちが背後からスタークを襲ったのです! 僅かな隙を見逃さぬ見事な攻撃タイミングです!

 ですが、ローズもこの不意打ちにより、OSRは激しく低下しているはずです。胸を貫かれたスタークもおそらく致命傷には至っていないことでしょう。次週は幼女の心配や応援によりスタークがOSRを稼いで、更なる反撃に出るのでしょうか!?


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