【5/23】2007年25号のジャンプ感想(2)


 ジャンプ感想2つめ。1つめはこちらから↓

【5/22】2007年25号のジャンプ感想(1)
 
 
サムライうさぎ

この作品が、「見栄や対面にこだわる武士階級の破壊」というテーマを掲げている以上、伍助の行動は主人公として正しいものですが、しかし、松山さんの「オレが間違ってンの?」という問いに当時の感覚で答えるとしたら、答えはNOとなります。

武士はいわゆる貴族階級なわけですね。
貴族という甘美な響きからは武士は程遠い存在ですが、それでも消費者階級(生産者である農民の作ったものを消費して生活している層)という点を見れば、彼らは貴族階級なわけです。
で、貴族階級というのは、いわば生まれながらの特権を持っているわけですが、彼らがその特権をどうやって保持していたかといえば、それは「庶民とは違う生活をする」ことによって保たれていたわけです。

シグルイの虎眼先生もお月見してましたよね。
どう見てもお月見楽しめない虎眼先生(盃食ってたし)がお月見をしていたのは、お月見が「武士の習わし」だったためです。
お月見は風流な行事ですが、しかし、武士は別にお月見したくてやってたわけではなく(楽しみがなかったとは言わないけど)、お月見は武士の義務のようなものだったのです。
「オレたちは月が綺麗だからご馳走揃と団子を揃えて酒飲むぞ。どうだ、お前たちとは違うだろう」
という庶民に向けたアピールなのです。
武士はそういう有形無形の「貴族階級であるアピール」を通して、自分たちの特権を保持してきたわけです。

それを考えると、志乃が下女をほっといてゴハンを作るのは、彼らが武士であるという根底を揺るがす『破壊的な行為』といえます。
「オレたちはメシを下女に作らすぞ。どうだ、お前たちとは違うだろう」
というアピールができなくなってしまうのです。
特権階級の武士からすると、それはちょっと困ったことですよね。

そして、旗本の松山さんと貧乏御家人の伍助では、その立場が違います。
現代人は自分一人で頑張って、出世して、給料を上げてくわけですが、江戸時代は、個人ではなく『家』の時代でした。
曾おじいちゃんがちょっと給料上げて、おじいちゃんがちょっと給料上げて、お父ちゃんがちょっと給料上げて、それで僕もちょっと給料上げて無事に息子に引き継ぐぞ、という時代です。
松山さん家は先祖代々そうやって少しずつサラリーを上げて今の高禄の地位にいるわけで、いわば、「先祖代々がんばってきた勝ち組サムライ」なわけです。
それが、自分の代で台無しになっちゃうんじゃないかと思えば、志乃の革新的かつ破壊的な行為に過剰反応するのも分からなくもありません。
伍助は「たいして給料もらえないし、武士じゃなくなってもイイや」なわけで、松山さんとは大分立場が違うのです。

とはいえ、松山さんの方に理があるかといえばそういうわけでもなく、武士はお月見などの「体面を取り繕うための行事」で散財著しく貧窮化していましたから(「武士は食わねど高楊枝」)、やはり、いつかは改革が必要なのです。


 ***

というわけで、まあ何が言いたいかというと、この話は単に見栄っぱりで分からずやの元旦那に純真な志乃がイジメられてるとかそんな話ではなく、当時の封建制度に対する破壊行為であるということです。
この作品の「見栄や対面にこだわる武士階級の破壊」というテーマは、そこまでいっちゃうんですね。
単に「武士ももっと物分り良くなろう」程度ではなく、「ファッキン封建社会」「四民平等マンセー」という話なわけです。


P2

テニスの王子様に対する批判として、「練習シーンがほとんど描かれず、気付いたら強くなる」「努力が描かれず天才しか出ない」というものがありますが、しかし、練習をしている漫画も、それはそれで「ビックリ練習大会」みたいなことになってますよね。
どれだけ変態的な練習ができるかを競ってるようで、『旋風の橘』は言うまでもなく、『アイシールド』でさえデスマーチという、ちょっとそれはどうなんだという練習をやってました。(背中に丸太を打ちつけるアストロ球団の練習は野球の練習と呼ぶことすらおこがましい)

一方、練習がおかしなものではなく説得力のあるものといえば、ハンターハンターのGI修行編が挙げられますが、あれはあれで地味でつまんないです。修行シーンは難しいですね。
「メチャクチャ強い人と毎日スパーしてるから、普通の強者が比較的弱く感じられる」という、史上最強の弟子方式の修行が一番無難な気がします。

で、今回のP2ですが、水中卓球は、ちょっと色モノすぎるビックリ練習な感は否めません。
卓球台が濡れるたびに拭かなきゃいけないとか、ピンポンを毎回拭かなきゃいけないとか、ずっとプールの中に入ってたら肌がふやけそうとか色々思っちゃうのです。
しかし、「負担の最小化」「水の抵抗」だけで終わらず、「動きの最適化」まで展開したところは良かったと思います。
やる気のない漫画家なら、「水の抵抗」という誰でも考えつくところで思考停止しちゃうので、その点でP2は頑張ってるなと。
でも、その一方で、やっぱりそんなムリして変な修行させなくてもなー、とも思うのです。ビックリ練習大会。


ムヒョ

・ペイジ「MLS内だが安全なハズだ!!」

これは、

「いま標的とされているMLSの中だが、それでもその場所は安全なハズだ」

なのか、

「いつも悪霊フリーパスのMLSの中だが、それでもその場所は安全なハズだ」

のどちらなのでしょうか。
僕のような読者は、一読しただけだと後者だと思い込んでしまう。

・ヨイチ「本当に執行人にならなきゃ、母ちゃん助けられなかったのかよ」
もはやエンチューが禁魔法律家になった経緯がうろおぼえで、とにかく逆恨みでしかないことだけは覚えてるんですけど、母親の死と執行人になれなかったことの因果関係がまるで思い出せません。
思い出せないってことは、おそらく因果関係なかったんだろうけど。

で、ネットで少し調べてみたところ、エンチューは貧乏だから母親の病気が治せず、お金を稼ぐために執行人を目指していた、ということであってますかね?
だとしたら、執行人になったところでカレーも食えないほどに貧しいんだから、そりゃもう裁判官とか云々じゃなくて、普通に勉強して国家公務員目指せって気がします。
執行人でも裁判官でも母ちゃん助けられないから、普通に就職しろ、と。

・ギンジ「オレ、なんとなく分かってきたっス。ヨイチさんが何にこだわってるのか……!!」
初めの頃は、「あんたらの勝手な争いに巻き込むな、迷惑だ」と言ってたギンジさんですが、最近ではすっかり丸め込まれてしまい、「あんたらの勝手な争い」にすっかり同情的になってしまいました。
でもキミ、さっきの作戦では部外者なのに一番危険な役をやらされてたんだよ。

「オレ、なんとなく分かってきたっス。ヨイチさんが何にこだわってるのか……!! ホントくだらないことにこだわるのは止めてほしいです。マジ、ムカつきます

↑これなら理解できます。


・「敵をだますにはまず味方から」
そうですね、確かにそういう言葉はありますね。
この場合、何の役に立ったのかまったく分からないけれど。
今回、味方しか騙してないよね。


エムゼロ

九澄の奥の手であるエムゼロを、ここ一番ではなく、心理的牽制に用いた描写が良かったです。
エムゼロという九澄にとって「最大の武器」を、まるで数多ある武器の一つかのように見せることで、「実質的な能力以上の武器」にしているのです。
要するに、「使い方がすごく巧い」ってことですね。
その後の葉っぱの煙幕は、ネタとしても実現性の面でもイマイチですが(走りながら服脱いで葉っぱ集めるとか難しすぎる)、その点を差し引いても今回の展開は良かったと思います。

ところで、初期のこの漫画は「魔法使いはメモリが許す範囲で何種類かの魔法が使える」という設定でしたが、少なくとも今の大会になってからは、みんな1つか2つの魔法しか使っておらず、それらを役立たせるためには、例外なく知恵を要求される状況となっています。
つまり、限定能力バトル。

となれば、エムゼロしか使えない九澄の立場も、別に他の人と比べて特別に悪いわけではなく、むしろ、最強の防御魔法(エムゼロ)に圧倒的な身体能力が加わった九澄は、攻守のバランスが取れた普通に最強キャラかもしれません。
限定能力バトルにしたことで他キャラとの戦力バランスは取れたけれど、当初の狙いからは外れてきてる気がします。


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