【7/29】2014年35号のジャンプ感想(読切『ネジヤマさん。』掲載号)


ハンター

 相変わらず冨樫先生ってば仕事が丁寧……。前回までで僕達が感じていた「ダウンジングチェーン、便利すぎね?」に対して見事なアンサーが示されました。

 ダウンジングチェーンって、意識下のレベルで感じるほんの僅かな違和感とかが、鎖に吊るされることによって大きく反応する、というだけの能力なんですね。これ、強化系能力なんじゃないの。ともあれ、先週まで感じていた「真偽を絶対的に見分ける能力だと強すぎるのでは……」感が払拭されました。実際の効果としては大分近いレベルにあるんだけど、「感じた微細な違和感を振り子の形で大きく示す」と説明されれば全然チートな感じがしない。むしろ慎ましい能力にさえ感じられます。「ダウンジンチェーン強すぎる気がする問題」を1ページ割いて解決する辺りが実に丁寧で、しかもちゃんと面白い。

 王子側も思った以上に複雑な関係性が示されましたね……。今まではバカ殿様とバカ王子の珍道中くらいのイメージしかなかったのに、バカ王子どもはどいつも凶悪みたいだし、ホイコーロー王も息子のほとんどが死ぬこと前提の旅だと認識しているとか大分イカレてる(あの名前にあのルックスだからバカ殿様としか思わなかった)。ツェリードニヒ王子もただの快楽殺人鬼かと思ったら意外と頭が切れるっぽい。頭の切れる快楽殺人鬼の最高権力者とか最悪だよな。そして、こんなのが相手ではクラピカの目的の方もすんなりとは行きそうにない気配。

 タイソンさんは可愛い兵を擁しているようなので15人の美少女部隊が現れるのだろうか。王子ということは男だろうから美少年部隊ということはないと思うが、本人がゲイならありえるな。ただでさえ危険な暗黒大陸行きの旅に連れて行かれた上に、不可避的に王子同士の殺し合いサバイバルに参加させられることになった美少女部隊とか大変ですよ……。しかも女と見ればいたぶって殺したがる頭の切れる変態王子まで同船してるんだぜ、最悪だろ……。

 十二支んの中にもさらに派閥があるのは流石に複雑すぎてややゲンナリ感が……。まあ、そう大した派閥関係ではないのでいいんですけど。これで派閥ごとの思惑とか狙いとかあったら胃もたれしちゃうけど、そこまでではないしね。

 ミザイから見たジンの「浮動のバカ」(不動ではない)、パリストンの「極左愛国(理解不能)」という評価もちょっと面白かったです。未だに掴みづらいパリストンさんの性格だけど、こうして概念化されるとやや分かりやすく……なったか? あれを極左と言っていいのかどうか分からないけど。

「会長選に負けたパリストンがあっさり出て行ったのは内部にまだ仲間がいるから」

 あれ? これはポカミス……?? パリストンは会長戦勝ったよね。

 サイユウさんは「ビヨンドの監視はオレ一人で十分」と言ってたことから掲示板でもビヨンド側を疑われてましたが、今週ラストであっさり示されましたね……。もっと引っ張るのかと思ってた。しかし、ミザイさんの「裏切りだとか疑ってるとかそんな話じゃない」も本音だとは思うので、サイユウさんがビヨンド側と知れても、普通にビヨンド側に移るだけなんじゃねーかな。当たり前のように暗黒大陸で再会しそうな気がする。サイユウさんがビヨンドに付いているのか、パリストンに付いているのかでも大分変わってくるけれど。前者ならともかく後者ならキナくせーなー。


相撲

 主人公の勝負は勝ちが決まってるからつまらない、脇役同士の戦いの方が面白い、とはよく言われますが、主人公が勝利してこれだけ気持ちいいのはすごいんじゃないかなー。負けた沙田くんも一切格が下がっておらずイケメンのままだ。


ナルト

 カグヤが超重力でぷるぷるしてるところに苦笑が漏れましたよ。岸本先生、そこはご都合主義でもいいのよ! ラスボスの格を保つこと優先しようよ! 全力を出して超重力空間を召喚したら自分がぷるぷるしちゃうとか何このラスボス。しかもご丁寧にページを跨がせちゃって……、もう。次のページに眼を移したらぷるぷるしてるんだもん、もう!

 カカシ先生とオビトのうんぬんは、カカシ先生があれだけ葛藤して奮起した末の結論が「肉盾にならなれる」というのがしょっぱすぎるし、前提からしてしょっぱいので、5ページもかけてシニカルなユーモアを交えつつの友情描写とかもだるすぎる……。というかそもそも、カカシ先生とオビトはぴょんぴょん動けてるんだから、ナルトとサスケも頑張って横っ飛びしろよと言いたい。

 あと、求道玉って何だかよく分からんから、着脱可能ですよ、着せ替えトラップでしたよ、と言われても「はあそうですか」としか……。


ワンピース

 二年の修行を経た後なのにいまいち凄さが実感できない麦わら一味と、明らかに肩書にそぐわぬ実力デフレを受けているコロシアム参加者たちの中で、一人「かくあるべし」な実力を発揮したゾロパートは読んでて気持ち良かったです。「そんなんでよく"麦わら"の首を取ろうと思ったな」のセリフはすごくカッコイイ。……のだけど、今のルフィだと下手したらファンク兄弟で首が取れちゃうからな。


ヨアケモノ

 二話でやや微妙になってきた……。地力の弱さが見えてきたと言いますか。「薪を千本切れば~」というのが、「主人公は木を千本切りました。どうです、すごいでしょう?」がやりたいがために無理矢理くっつけた前フリにしか見えないんですよね。「薪を千本切る」のが「強くなる」に直結する気がしないし、効果的な修行とも思えないんですよ。例えば木刀と同じ重さの斧とかをポンと渡して、これで千本薪を切ってこい、ならまだ分かる。そういう関連性なく、急に薪を千本切れと言っても、このファクターが浮いちゃうんですよね。

 あと沖田の表情が、これはこういう狙いなんだろうけど、能面的なのっぺり顔で感情移入しにくいです。山崎のへのへのもへじ仮面も単純にカッコ悪い……。

 で、こっから先はこの漫画の問題というよりも読む側、つまり僕の問題かもしれないんですが、とにかくリアリティのなさが許容できない。「まんが時代劇」なんだからそこを気にしちゃいけない気もするんですが、気になるんだから仕方ないんや。

 まずもって、クソ重たい木刀で寸止めでもない試合をさせる時点で理解できない。るろうに剣心と同じく刃さえ付いていなければ高重量のもので思い切り殴打しても軽傷で済むと考えているんでしょうか。試験を受けに来た人間の半数が死に、半数は伊達にして帰されてるとかならまだいいんですが、いやそれにしても入隊試験受けに来た奴らにそんなことさせんなよな、とも思う。虎眼流だってそんなことしないよ。

 それに隊長から一本取れた奴だけ合格って、どんだけ即戦力求めてるんだって気がします。先の「これで殴られたら死ぬか大怪我するよ」問題と合わせて、たとえ沖田から一本取る新人が現れたとしてもその時は現役のエースがぶっ倒れるわけでしょう。つーか、獣刃を使っているであろう沖田に勝てる新人ってどんだけハードル高いんだよ。

 あと、これは第一話の序盤の描写の問題なんですけど、主人公って野盗?野武士?を12人とか斬ってるんだよね。これは作者的には「そのくらい主人公は強い」ってことでインパクトを出そうとしたんでしょうが、この時の戦いがこっちの頭にはこびりついてるんですよ。12人相手にして無傷で勝てるとかリアルで考えれば大剣豪レベルで、こっち側としては主人公は「日本最強クラスの少年」なわけです。で、その彼が入隊できない、それどころか練習用の木刀が重いとか言い出した時点でなんやねんって感じ。

「主人公はクソ強い」「そんな主人公でも入れないくらい新選組はクソクソクソ強い」っていう設定なら別にそれでもいいんですけど(実際の新選組は一人一人はそれほど強かったわけではない)、それならそれで作中でも「新選組はクソクソクソ強い」を基準にしないといけない。つまり、新選組の面々は自分たちがクソクソクソ強いことを自覚して、クソクソクソ弱い新人どもの中から上澄みのクソ強い程度のやつら(主人公レベル)を採用して鍛えていかなきゃいけないわけです。だって日本最強クラスの主人公が今現在入隊できないんだもん。他に入隊できるやつなんていないよ。これが「まんが新選組」で、鍛え抜かれた超人12人だけの部隊だとかそういう設定ならまだイイんですが、そうでもないんっしょ。数の力も活かすつもりの組織なんっしょ。


ソーマ

 ソーマくんの「善悪に対して無感覚な感じ」は好印象だったので、タクミくんのだけでなく100本全部賭けろ、と言い出したのにはやや違和感が。まあ、それはいいとしても、今の状況だと美作くんが食戟したくて仕方ないモードなので主導権はソーマくんにあるんだよね。「100本寄越しな」「そんなの割に合わないぜ」「そう? じゃあ食戟やーめた」「エー(´・ω・`)」の流れでもソーマくんの凄さは演出できたような。ソーマくんには甘さよりもそういうしたたかさの方を描いて欲しかった。

 あと、相撲もだけど、「負けたら***やめる」ってのはあんまり好きじゃないなー。相撲の沙田くんの反応が正解だと思うけど、「えっ、負けたらやめるとか言われたらやり辛いんですけど……」ってなるじゃない。「カードゲームで負けたら自殺する」の海馬さんかよ。美作くんが叡山先輩から何を含まれているのか分からないけど、そんなこと言われても別に嬉しくねえんじゃね?


ネジヤマさん

 またか! また「序盤に出てきた良い人っぽい人が悪人パターン」か! いやまあ、そこから捻ってきてくれたのは良かったんですけどね。というか、このパターンを逆手に取ろうというしたたかさすら感じたんですけどね。

 しかしまー、こういうドラマ性というかアクション要素、必要なんですかね? みかんを届けに来てくれた浪川さんは普通に好感度高かったし、ヒロインも暴力的で常時イライラしている割には好感が持てて、キャラ造形には全体的に成功していただけに、もっと終始ハートフルな雰囲気でまとめても良かったんじゃないかなーと。テンプレをなぞった上でそこから一歩踏み出した石川先生の精神性は評価できるけれど、そもそもそのテンプレを利用する必要すらなかったのでは?と思ってしまう。いいじゃん、アクションとか意外な急展開とか何もなくても。ちゃんと面白い漫画が出来たと思うよ。

 でもまあ、高評価です。この手のテンプレに沿いながらも、一工夫することで他と一馬身差を付けられることを示してくれたわけで。しかし、繰り返しになるけれど、それだけの力があるならそもそもテンプレを用いた作品作りをする必要すらなかったんじゃないかなー。一石を投じたいという気持ちによるものなら、これも正面から受け止めたいと思いますが。

 ところで担当は井坂さんか……。コンドルと同じ人ですね。あちらは新人を最低限のレベルにまで導けておらず、こちらは新人をテンプレの一歩先まで連れて行っている。どういう評価をすべきなのかな。井坂さんがどうこうではなく、両先生の純然たる技量の差なのだろうか。


ヒーローアカデミア

 むう、やはり裏ルール合格か。まあでも、「命を賭してきれい事実践するお仕事だ!」に説得力があったのでオーケーオーケー。

 ところでお茶子さんのゲロが描かれてましたけど、ゲロヒロインって神楽に続きジャンプ二人目ではなかろうか。……じゃなくて、えっと、試験の後に肉体治癒してくれる妙齢ヒロイン(妙齢の使い方間違ってるけど)がいてくれるにしても、恐怖心でゲロ吐いちゃう受験生が出るとか、心の傷の方は癒えないんじゃねーかなーと思ったり。


トリコ

 ……あっ、てっきり「馬王の威圧感が見せた幻覚であった」くらいやるかと思ってたので、先週の大ダメージ描写、きちんと処理してて好印象……。


ハイキュー

「寄越せ」の東峰さんがエースしててカッコ良かったです! この人もメンタル面スゲエ成長したよね。


ワールドトリガー

 オサムくんの実力を誇張することなく、敵の量産兵を凌ぐことすらできない相応の結果を描きながら、それでいて緊張感があり出来ることを必死に頑張っていて読んでいて主人公を素直に応援できる良い一話でした。


ブリーチ

 なんてこった。ブリーチが普通に面白いぞ。変態キャラを動かして、リョナして、おもしろ台詞を工夫させたらやっぱり久保先生は能力高いんだよな。ブリーチでギャグ描いてる時は大抵面白いしね。なんだかんだ言って絵だけで魅せてファンも獲得しているわけだし、久保先生のポテンシャルの高さは本物なんだよなー。んー。


三ツ首コンドル

 今話題沸騰の前衛芸術漫画の第三回です。サルサさんが出てこなかったのにビックリした……。でも、今回はちょっと薄味なので普通に感想。

「王族の支配する街に一人でなんていられるか!!」

 と言っている、そのスグ隣のコマで手を繋いで歩いている親子連れなどの呑気な街の風景が描かれたせいで、王族の支配が全然恐ろしいものに見えないという。徴税や暗殺者の処刑も、そりゃ当然やるだろう……という感じで、「蛮行」だの「青い血」だの王族は酷いレッテルを貼られてるなと思いました。この漫画は国民が全体的にアナキストなのかな。やっぱりサルサさんも「税金を取り立てて治安を維持する」警察的ポジションで派遣されたんだけど、村民がこぞってアナキストだったので憎まれたのだろうか。しかしまあ、ローマ統治時代のユダヤ民族なんかもこんな感じだったし、「現代人の視点から見たら支配者はそんな悪いことしてないんだけど、当事者たちは支配を受けているというだけで反感を持っていた」というのはリアルな描き方かもしれない。結構頑張ってる支配者に対しても、民は気に食わないことがあると義憤に駆られて暗殺とか企むからな。

 パンドラの匣による潜入作戦は、入手済みのマジックアイテムを有効利用しつつミッションに寄与させるという、「アイテム紹介」手順としては良いものだったと思います。……が、これ、パレード中にマシマロが匣を持って行ったらそれだけで怪しまれそうだし、以前みたく匣に入ったまま匣が自律移動したら誰が見ても怪しすぎる。ここの住民は税金を宝箱に入れて宝箱ごと収めるシステムだったりしたのだろうか……。


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