トリコ
カラー表紙の綺麗なおすましトリコを見て思ったんですが、トリコって、最初期の無双してた頃の方が面白かったなあ、と。僕の中で一番最高潮に達したのはフグクジラ編でGTロボが現れて、「あの無双トリコが動けない…だと…?」ってなったあのシーンでした。一戦を交えるでもなく余裕を持って立ち去ったGTロボことスタージュン様の得体の知れなさ(当時は宇宙人か地底人だと思ってた)にもグッと心を掴まれました。
で、今になってみると、なんか、あの頃ほど面白くないんですよねえ……。アレなのかな。僕は主人公の無双が見たいのかな? 範馬刃牙の戦いよりも範馬勇次郎の無双が見たいし、ケンイチも師匠たちが活躍してると楽しいし、道士郎が不良をのしていくのも楽しいし、主人公のピンチとか互角の戦いとかって実はあんまり心が踊らんのかな、って思ったり。どうなんすかね。でも、べるぜバブの無双は別に心躍らないんだよな。
500メートルの氷の山は……、逆に「ああ、世界ってデカイな」って思わされました。全然足りる気がしねぇ……。氷の中に食材がぎっちり詰まってるわけでもないし、それに何よりトリコ地球の異様な巨大さと、そこから連想される人口を考えると……焼け石に水の貯蓄量にしか見えない……。5000メートルならまだハッタリとして機能したかもしれないけど、500メートルかぁ……。いやあ、足りないっしょ……。
一龍の逆スパイは栗坊なのかしら。グリンパーチさんは今更ココの毒が効いてきたのかな。それにしても、IGOもだけど美食會の侵食されっぷりもひどいな。ドレス、クロマド、カリウ、ボンレス、ナイスニィと、最高幹部の連中がこぞって引き抜かれてるじゃん。これ、単に副料理長以下は声かけてもらえなかっただけなのでは……。やっぱり舌を伸ばすボスとかホントはみんなイヤだったんだよ。
ソーマ
「なっ、メッザールナで一瞬でパスタをカットしたぁあ!?」
「つーかありゃ食材を微塵切りするための包丁だろ!?」
「パスタをあんな均等に切るなんて……、すげぇ技術だ!」
本来の用途と違う使い方をして、それをスゲエ、スゲエと喝采するのはどうなんですかね……。「なっ、便器で牛肉を叩いている……!?」「ありゃ本来は人間の排泄物を処理するための器具だろ!?」「便器で殴りつけることで肉を柔らかくするなんて、すげえ技術だ!」とか言ってたらおかしいじゃないですか。あと、トマトをカレーに使うのってごく普通だからね。 「はぁ? 何だそれ?」じゃないですよ。そこらのモブじゃねえんだから。地獄の合宿をくぐり抜けた料理名門校の学生たちという立場をですね……。
あと、田所さんスゴイ描写はもうイイんじゃないですかね……。この手の「落として上げる」は合宿編でもう十分描かれたかと。合宿をクリアして選抜に残った時点で「スゴくない」って思う人はもういないと思うのよ。
ただそれでも、これだけネームドキャラが出てくると勝ち抜く8名がまるで予想付かないのはいいですね。こんだけの数のカレー料理を考えるのか。作者も大変だなあ。
ワンピース
デリンジャー女の子だったのか……。
しかし、それにしてもベラミーさんの扱いにはガッカリですよ。最悪手の一つ手前くらいのガッカリっぷりですよ、これ。最悪手は言うまでもなく、ベラミーさんが情に流れて野望を忘れルフィに肩入れする展開。泣きながら「俺には! お前を殺すことなんて……できない!!!」とか言い出したらジャンプ投げ捨てるレベル。それではなかったにせよ、今回のこれはよろしくない。ルフィに思うところありながらも葛藤の末、自らの野望を貫こうとするベラミーさんの姿が僕は見たかったんですよ。それが「悪ィな」の一言で葛藤を解決したばかりか、デリンジャーのアホ丸出しの一言で、その流れさえ無茶苦茶になりそうなこの展開は誰が得するの? ベラミーさんの株も下がったし、デリンジャーもバカすぎて株下がるし、そんなデリンジャーを使ってるドフラさんの株も下がるし、なんなのこれ……。デリンジャーのバカさと、そのバカで話が展開しちゃう流れにはホントにガッカリでした。ドフラさんの仲間に対する態度は大分乱高下してるっぽいけど、統一的な説明が付くようなバックボーンがちゃんと用意されてんのかな。
あと、分かってたことではあるが、ルフィたちはやっぱり作戦通りには動かないよな……。今回、作戦を切り替えてドフラ討伐に動き出したのもそうだし、そもそも工場破壊工作をほっぽってコロシアム出場してる時点でアレだし……。今更だけれど、本当にローは大変な奴らと同盟を組んでしまった。
黒子
黛くんのエゴが明らかになることで、これまで無色透明だったキャラ性が大分変化して、……もうむしろ無冠の三人より大分濃いですね。
でもなー、僕が期待したのはこれじゃないというか。前々から「黒子が敵キャラだったら主人公チームはマジ辛いよな」「だってバスケの試合中に怪奇現象が起こってるわけだろ」「突然ボールの軌道が曲がったり、突然パスがカットされたり……」と思ってたわけで、そういった「普通に試合をしているチームが怪奇現象に翻弄される」バスケが見たいんですよね。黛くんの描写はまだ怪奇現象に至ってない。ここもうちょっと怪奇現象して欲しいんだけどなぁー。
ニセコイ
千棘の漫画読む姿勢なんだこれ? あまりにも異様なのでこんな態勢出来るのかと思ってやってみたらできなくはなかった。……できなくはないが、しねえだろ……。ヨガかよ……。もしかして、世の中のみんなって、自室では意外とこんなポーズで本読んでたりするの……?
今回は告白うんぬんで何やらうんぬんしておりましたが別に思い悩む必要なんてないのにね。どうせ告白してもボールとかキムチとか突発性の気絶とかでおじゃんですよ。
ブリーチ
流石は久保先生! レズリョナという新たな道へと進んだか……! いいぞ、もっとやれ!!
……それにしても、卍解失ってバンビちゃんは何がどう強くなっていたのだろう。おかしいな……。キルゲさまはもっと反則的な強さに感じられたのに……。
斉木楠雄
「笑顔になった覚えはないが」
いやいやいやいや、笑顔でしたよ、スゲーいい笑顔でしたよ斉木くん! すごいな。なんでも見通せる超能力者だけどケーキ食ってる時の自分の顔は見えてねーんだな。すげえ地味だけど面白い一言。
HACHI
それっぽいことをやろうとしているけど、それっぽくなってない……。実に西先生である。「大迷宮と化した中野区を、異形化した怪物たちの目を盗みながらマッピングする」と言えば聞こえはいいのにこれだもんなぁ。なんだろうね、街中で匍匐前進してる間抜けさが問題なのかな。全然目を盗んでる感じがしない。迷宮を渡り歩いてる感じもしない。遭遇戦の危機感もまるでない。状況の面白さと実際の漫画から受ける印象が見事に乖離している。
<セレーネの今の手駒>
ドラキリー:最大戦力だが一戦するとバテてしばらく行動不能。絶好調時でも背後を取られ、殴られると一撃で気絶する。
ハチ:貴重な戦力だが組織と歩調を合わせるつもりはさらさらなく、戦力差を考慮せぬスタンドプレーに気が先走り、目の前の事柄に容易に飛び付きチームを危険に陥れる。
オトネ:MOB敵数体をいなせる程度には強いが探索任務を任せられない程にアホ。
イガ:非戦力? ややマシな部類だが、バディを性差別するなどコミュ面に問題がある。
なんか……、うん……セレーネ、ダメなんじゃないかな……。「それまで働いてもらうまでだ」と言ってイガにハチを付けたけど、逆にイガが危機に陥っただけっていうね……。あと、ハチに戦闘員用の衣服を与えるのはいいけど、それなら先に雪駄を何とかしろよと言いたい。この辺、キャラの造形に拘って、現実的なところを西先生あんまり考えてないんだよな。時代物の漫画とかでも、戦闘シーンに入る前に雪駄を脱げ、と言いたくなる。キルビルはちゃんと脱いでるよ……!
まーでも、バトル漫画で雪駄履きとかホントどうかと思うけど(初期のトリコは獲物よりも圧倒的に強かったからサンダルもアリだった)、例えば同じ歩行困難な靴でもボンテージの姉ちゃんがハイヒール履いて鞭とか振るってたら、「ハイヒールは現実的ではない」とは言えないわけで、西先生の気持ちも分からんでもない。
半見開き昔話
一寸法師よかったね! しかし、一休さんが力ずくで難問を解決するギャグ漫画は昔、週刊少年マガジンに載っていましてのう。「この橋渡るべからず」と「屏風の虎」も被ってた覚えがある。
こち亀
少女漫画の男主人公ってのは、彼氏持ちの女の子と強引にセックスして、彼氏が引き剥がしに来たら彼氏をブン殴って、そんで女の子から「やっぱりあなたの事が好き!」って言われるような、そういうキャラクターのことだろう。
焼野原
面白い……。やっぱり面白いな……。ゴルゴンさんの顔とか首とか絵の方は色々崩れてきてる気がするけど、まあそれは置いといて、ギャグにまだまだキレがある。ポジティヴに考える吉丸くんとか、果物を供え始めたサルとか、尊厳を失った究極魔人とか。でも、一番面白かったのは、濡れて髪型が崩れて、そこでページを跨いでも、特に美形になったりせず単に髪型が崩れただけの塵でした。クッソ、クッソ! やられた、クッソ!!!
クロクロク
終わった……。
所詮、部外者なので内情を知るよしもないのに想像で書きますが、この作品は担当に潰された漫画なんじゃないかなあ。いや、担当というか、ジャンプというか、資本主義にというか。基本的に水準は高かったと思うんですよね。ちゃんと面白かった。ただ、その中でも序盤と、終盤の新人研修編のクオリティだけ格別に低かった。
で、序盤も新人研修編も、たぶん編集部の要請だと思うんですよ。前者はスタートアップの時期なので、「物語上、必要な説明」をすることに迫られたんでしょう。後者は単にテコ入れでしょうね。それで、中村先生は、こういう言い方をすると最終的には中村先生の実力不足ということになるんですが、それに応える力はなかったのではないかもしくは、担当を巧く丸め込んで自分の持ち味を殺さないように保つ力。市役所の身内でのほのぼのコメディをやってる時は本当に面白かったけど、序盤の説教臭えバトルとか、新人研修編のカレー云々何をやってるのかも分からないまるで面白味のない展開とか、本当に残念な代物だった。持ち味はちゃんとあるのに、外部からの要請に応えようとした挙句に、持ち味潰されちゃった感じなんじゃないかなー。で、そういった「要請」からある程度自由になれたと思われる、それ以外のパートはちゃんと高水準で描けている。そんな感じだったのではないか。
ただ、ほのぼのコメディをやっていた時期でも票が取れなかったのは事実だろうし、それはやっぱり冒頭のスタートダッシュでコケたせいなんじゃなかろうか。二話の小津さんの話とか、ホントなんだったんだろうな、あれ。宴で吊られていたから一応中村先生も忘れてはなかったと思うんだけど……。
まあでも、中村先生もちゃんと地力のある人だろうから次はガツンといけるんじゃねーかなー。初連載は慣らし運転っしょ。ガンバッテ、ガンバッテ。
ひめドル
一方……こちらは……。う、ううううう~~~~ん……。
なんだろうな……。「拙い漫画だった」としか言いようがない。「拙い」という感想ばかりが先立ってしまう。まず、キャラが立ってないんだよな。いや、立ってなくはないんだけど、なんというか、こう、要素だけで成り立っているというか。このキャラにこの属性を付与して動かしていますよ、というお約束事だけで血の通った感じがしないというか。どのキャラクターにも感情移入できない。ニセコイですらもう少し感情移入できるというのに。
主人公とヒロインの関係性とかも、イマイチ希薄で……。エジソンさんも言ってたけど、ヘアメイクとアイドルってあんまり繋がらないんだよね。そりゃ確かに不良をアイドルに……、となると、衣装か化粧かヘアメイクかだろうけど、なんか……うーん……。妥当な設定を、妥当に転がしてみました、だけのものしか感じない。パッと閃いちゃって、それでいっか、みたいな感じなんじゃないかなー。そこにもう一つ異質なものを加えて、「無理して考えなければならない」状態を作るべきだったんじゃなかろうか。例えば主人公を仏教科の学生にしてアルと仏道修行をしながらアイドルを目指す話にするとか。そうすりゃ設定が「無理」なんで、無理して考えざるを得ない。作者が無理をしないと読者は驚かないよ。
あと、作者さんはアイドルのヘアメイクにものすごく興味があってこれ描いてるのかな? そうじゃない気がするんだよな。僕なんかはアイドルが髪をわしゃわしゃいじってるのを見て「ナチュラルヘアーの方が絶対可愛いだろうになあ」って思うような人間だから、そもそも前提からして共感できない。作者さんには「アイドルはヘアメイクでこんなにも可愛くなる!」「俺はヘアメイクの可能性を信じている!」という情熱はあるのだろうか。僕に「ナチュラルヘアーより可愛い!」と思わせる力はなかった。ヘアメイクの何が凄いのかは全く伝わってこなかった。
あと、話運びね。何もかもが急で、整合性はギリギリ取れているものの、読んでる方としてはこれも要素と要素が繋がってるだけ。溜めがないというか、読み手の感情を挟む余地が無いというか。話運びもキャラクターもそうだけど、表面上構成されている要素の、その奥とか裏とかがまるで見えてこなかった。なんだろうなー、詰め込みすぎなのかなあ。
そして、女の子が可愛くない。せめて、この点さえ何とかなっていれば、上に書いた様々なアレコレはある程度無視してもいいんだけど。まるで可愛くなかったよなぁ……。一応ヒロイン枠の女子が三人出てきたけど、誰にも何とも思わなかった。アルかわいいな、と1コマたりとも思えなかった。ビジュアルよりも性格だよな。一生懸命頑張ろうとしてるのは分かったけど、逆にそれしか分からなかったというか。可愛らしい要素がなかった。かといって「男らしい」感じでもないんだよな。幼馴染ヒロインの方は、あれはビジュアル的には可愛くなれそうな余地はあったけれど、取ってつけたような性格設定とか、突然に自分語りを始める唐突さとかの方が先立ってしまい……。もうひとりの不良娘は……まあ、出てきただけだし……。
脇キャラも調理科(だっけ?)の男の子とかは猿山くんポジションになれそうなものだけど、何の好感度も獲得できぬまま存在感が薄れていき、ライバルポジの先輩も「実力者タイプの変人」という、これ以上ないポジションながらまるで魅力が出なかった……。最初の怪文書の意味不明さと(筆跡鑑定対策しておきながら記名するとかどういうことなのだ)、主人公をストーカーと言い張る話の通じない雰囲気、そして、実力者ポジにもかかわらずその力量が読者に全く伝わらない点などなど。服作るオカマの人は、あのビジュアルインパクトがありながらも空気という……。もう出会いがどんなシーンだったかも思い出せねえもん。
総評としては拙いとしか言いようが無い。全部巧くできていなかった。まあでも、言い換えれば問題点は拙いということだけなので、ここが特にものすごくダメ! 死ぬほど嫌! 生理的にムリッ!! っていうところもなかった。だから、ウン、巧くなればいいんだよ……。次もやるんだとしたら、それまでにすっごい頑張ればいいんだよ……。すっごい……。
★宣伝:中村先生、次は頑張ってね記念あげ。