読んだー。ちょっとネタバレあり。
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いきなり名探偵「九十九十九」が現れ(「九十九十九」は清涼院流水のJDCシリーズのキャラクター)、さらにはジョージ・ジョースター自身も名探偵であり、他にも様々な名探偵が現れ、通常のミステリーの名探偵では解けないようなオカルト的メタ的な謎を解き明かす前半部は、まったくもって清涼院流水であって、「舞城先生、ジョジョのノベライズなのに何で清涼院やってんだろう??」と思いながら読んでいくんですが、あらふしぎ、これちゃんとジョジョになってるじゃないですかー。密室卿ならぬ密室先生まで出しちゃってホントに清涼院テイスト溢れてるんだけど(密室卿はJDCシリーズ一作目の「コズミック」の犯人)、それでもちゃんとジョジョの雰囲気の中に収めてきてる。この辺まではさすがだなーやるなーおもしれーなーと思いながら読んでたんですよ。
で、中盤以降。いや、これは実際、ジョジョですわ。ジョジョだ。良くも悪くもジョジョ。うん、本当に読後感も雰囲気もちゃんとジョジョなんだけど、「良くも悪くも」と言ったとおり、4部以降の、あのえらく複雑化した難解極まるボス戦まで含めて「ジョジョやってる」んだよな~。一言で言えば、本作の後半戦も非常に難解。SBRの大統領戦を読んでる時の、あの「何を言ってるのか分からない」感。あれがズーっと続く感じ。あのゲッソリ感、とんでもない疲労感も含めて、この作品は紛れもなく「ジョジョやってる」。なのでまあ、ジョジョの雰囲気、読み味は確かに出てるんだけれど、面白いかどうかと言われると……。
しかし、こってり難解な分、世界観は重厚長大。ネタバレになっちゃうけど、本作では6部ボスのプッチ神父による「更新される宇宙」と、7部ボスのバレンタイン大統領の「平行世界」が同時に進行しています。図っぽくしてみるとこんな感じ。
オリジナル世界 | 平行世界A | 平行世界B ・・・
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第一巡宇宙 | 第一巡宇宙 | 第一巡宇宙
第二巡宇宙 | 第二巡宇宙 | 第二巡宇宙
第三巡宇宙 | 第三巡宇宙 | 第三巡宇宙
第四巡宇宙 | 第四巡宇宙 | 第四巡宇宙
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世界観がこんな感じであることに名探偵ジョージ・ジョースターが辿り着き、これを前提として様々な謎を解き、強敵を打ち倒していくわけです。ただまあJDCシリーズと同じで、「謎の解明」が読者にとってカタルシスのあるものかどうかは微妙なところ。そこにカタルシスを与える気がないといいますか。
「スタンド能力により引き起こされた事件を名探偵が解決する」という構図や、「ディオvsカーズ」「プッチvsバレンタイン」など歴代ボス同士のバトルなど、「読者の見たかったシチュエーション」にもしっかり応えられているとは思います。思うんだけど…………ううん、どうなんだろうな、コレ。ストーンオーシャンやSBRのボスバトルで「さっぱりわけわかめ\(^o^)/」になっちゃった僕には辛い感じの作品でした。本作の前半部分は、4~7部の「ボス戦以外」のような、ある程度サッパリとした疾走感のある楽しみやすい話で、そっちの方は問題なく面白かったんですけどね。「ボス戦になってわけわかめになる」ところまで含めて「しっかりジョジョやっている」という評価もできるんだけれど、うううん、個人的には「面白かった」とは断言できないな。ジョジョのノベライズとしてはよくできている。できているのだけれど。