これを読んでのメモ（正確には読んだのはこれの旧版）。
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P208 エウセビオスによると、ユダヤ戦争の開始直前にエルサレム教会は異邦人の地へ移住したらしい。真偽のほどはともかく、これ以降、エルサレム教会は表舞台から姿を消す。
P220 アンティオキアのイグナティオス（アンティオキア教会の監督）はトラヤヌス治下の迫害において、衆人環視の下で野獣に噛み殺されるという刑に処された。（五賢帝時代でもキリスト教徒が見世物にされて殺されてたという具体例）
P221 ちなみにこいつは「監督なしで何かを行おうとする者は悪魔に仕える者である」とか言っており、異端対策ではあろうけど、なんだかパウロのようなアレな感じを受ける。単純にイヤなやつだったのではなかろうか。
P221 小プリニウスがトラヤヌス帝に宛てた手紙によると、為政者側としてはキリスト教徒について噂される幼児殺しや近親相姦は事実無根であり、単に彼らは極端に迷信的であると認識しているらしく、その問題点も自らの共同体に頑固一徹に固執し、帝国の伝統的祭儀を無視しているから、としている。よって、キリスト教徒を辞めない者は処刑するけど、棄教して皇帝の像や神々の像を礼拝する者は釈放する、としていたらしい。トラヤヌス帝はこれらの小プリニウスの処置に「キリスト教徒の件はケースバイケースでいいんだけど、とりあえずお前のやり方はいいと思うよ」的な判断。
P226 第二次ユダヤ戦争でエルサレムは異教の神殿の街に変えられてしまい、ユダヤ人の立ち入りは禁じられたが、年に一度だけ、旧神殿の壁にすがって祈ることが許された。これが「嘆きの壁」の由来。
P226 アクィラ訳聖書が生まれたのは、七十人訳がこれまでのユダヤ教学者の解釈伝統を反映していないとされたため、および、キリスト教徒が七十人訳を利用してユダヤ教の反駁用に利用しているため、対抗するギリシア語版が必要になったから。（キリスト教徒が好き勝手に七十人訳を利用するので、より忠実な翻訳を作った、という話がどっかにあったような……）
P229 ユダヤ戦争の後に姿を消したエルサレム教会であるが、その後もあちこちで地味に活動しており、彼らはエビオン人と称し、ナジル人とも称された。「エビオン人福音書」「ナジル人福音書」「ヘブル人福音書」などは彼らの作。律法主義的、禁欲主義敵であり、養子論的キリスト論を持つ。大教会がペトロをシンボルとする一方、彼らは主の兄弟ヤコブを持ち上げた。この流れは3～4世紀に消滅。
P235 マルクス・アウレリウスの治世は戦争、疫病、飢餓でてんてこまいだったので、民衆はそれだけ伝統的な宗教に依存し、足並みを揃えないキリスト教徒に対しては「おまえらのせいなんじゃねーの」的な態度を取った。マルクス・アウレリウスの迫害令などはこの辺の影響か？ ケルソスなんかはこの路線でキリスト教徒を非難している。
P237 正典選別の基準は「使徒的権威」（なので、内容のないアレやコレやが正典になってる）。本書はこの正典選別の動機を「グノーシス文書への対策」と理解。
P237 大教会側がピラミッド構造の組織を構築しているのに対して、グノーシス側は「霊の人」と一般信徒との、カリスマ的集会形態であった。となると、後者は前者に対して批判的にならざるをえない。（もともとイエスと弟子の関係は後者だったろうにね）
