ケルソスへの反論
・「イエスが偽りの証言を得たのに沈黙を守られたことに関しては~『お前は、ユダヤ人たちの王なのか』と言った。するとイエスは、これに答えて、『それはあなたの言っていることである』と仰せになった」 少なくともオリゲネスの頃(250年頃)には、あのイエスのセリフは肯定の意味に取られてない。
・ケルソス「理性を働かせずに神とか信じちゃうやつはダメだろ。悪いやつに騙されちゃうよ。キリスト教徒も騙してるよ」古代人と現代人では「理性」の意味は違うだろうけど、現代人がアヤシイ宗教に対する危機感に似たようなものをケルソスは持ってたっぽい。 http://www8.plala.or.jp/StudiaPatristica/cc1-9.htm
・オリゲネス「みんなが理性を働かせたらキリスト教はもっと広まると思うけどね。でも現実問題として哲学なんてできるのはごく一部の人だけだし、ともかく理性なしでも信仰を持って悪行を止めて救いを得るのと、理性的にかっちり吟味しないと救われないってんじゃ、どっちがいいと思う?」
・オリゲネスやるなあ。正論をバリバリ振りかざすケルソスに対し、オリゲネスが屁理屈をこねて無理矢理に言いくるめる感じかと思ってたけど偏見持っててごめんなさい。ケルソスさんもっと頑張ってください。
・オリゲネス「確かにオレたちは理性を捨てて信仰しろって言ってるけど、哲学者だって似たようなもんさ。認めないだろうけど、あいつらは別に諸派の言い分を批判吟味検討して特定の学派を支持するんじゃなくて、たまたま特定の教師に恵まれたとか、何らかの非理性的な動きに駆られて他派を退けてんだよ」
・オリゲネスSUGEEEEE!!!! なんだこいつ、すげえぞ、こいつ。そりゃこんなのがポンポンいたらキリスト教もパワーアップするわ。http://www8.plala.or.jp/StudiaPatristica/cc1-10.htm
・オリゲネス「ゼウスは親父を殺したり、自分の娘とセックスしたりしてるじゃん。それに比べたら、ウチの神が人に対して行う悪行なんて取るに足らないものだよ」 取るに足らないかどうかは別として一理あるなあw
・ケルソス「モーセの物語を予型論的、比喩的に解釈するのはダメだろ(予型論:旧約は実はイエスを予言してんだよ!的なアレ)」オリゲネス「あんたらの詩作品だって予型論的、象徴的に解釈してるし、それができる人しか相手にしてないじゃん。モーセは普通に読んでもいいし、予型論的にも読めるんだぜ」
・ここはすげえ興味のある問答だったんだけど、この時代的には予型論的解釈は「アリ」みたいだな。残念だ。旧約がイエスを予言してるってのはキリスト教の抱える最大の非理性的ポイントだと思うので、ここはもっと突っ込んで欲しかったんだけど。
・予型論的解釈の何が問題かって、まず第一に旧約の著者たちがウン百年後に現れるイエスとかいうオッサンのことを知ってるはずがないってのと、第二に旧約をイエスの話と受け取ることで元々の旧約の話が換骨奪胎されちゃうところだよな。
・予型論的に旧約を見ちゃうと、あれもこれもイエスの話になっちゃって、元の旧約の文脈の意味合いが失われちゃう。例えるなら、MMRがヨハネ黙示録を好き勝手に解釈して、もうヨハネの思想とはなんの関係もないチェルノブイリや国民総番号制の話をしているようなもん。
・オリゲネスに説得力を感じるのは「とにかくキリスト教が圧倒的に絶対にスゴイんだ真実なんだ」という絶対的な感じではなく、「他の宗教や哲学者もこうなんだから、キリスト教だって同じ立場が認められるはずだし、どっちかというとウチのが上でしょう」というある意味相対的な議論をしてるからだなあ。
・http://www8.plala.or.jp/StudiaPatristica/cc1-24.htm いまいち理解しきれんが興味深い。ケルソスは「万物に位する神をゼウスだのなんだの色々読んでも違いないじゃん」と言ってるらしい。注によると当時のヘレニズムでは「唯一の神を色んな名前で色んな場所で礼拝している」という神論が一般的にあったらしい。
・一方、オリゲネスは「名前は因習的に存在してるんじゃなくて(ソシュール!?)、自然的に存在してるんだ!」と言ってて、ここからはよく理解できないんだけど、名前と魔術が関連して理解されている???
・「呪文の使用についての専門家たちが報告するところによると、同じ呪文を自分の言葉で語る人は、その呪文が約束することを果たすことができる。しかしその呪文を何らかの別の言葉に翻訳すると、おかしなことになり、何の効果も見出すことができないそうであるしてみると、あれこれの事柄に対して何らかの効力を内蔵しているのは、事柄をさす意味ではなく、声の性質であり、その特質である」。これが神をゼウスと呼べない理由なんだけど、それはそれとしていわゆるオカルト的な意味で面白い。
・ケルソス「キリスト教の教えって人間の生活が台無しにされちゃうじゃん」オリゲネス「ちげーよ。教えを受け入れる前より全然よくなってるはずだよ。その中の一部の人はもっと神を誠実に敬いたくて法律で認められてる愛欲にも手を染めないんだよ」。この辺は現代にも通じる問題意識だ。
・ケルソス「例外はあるにしても大体は無教養なやつしか説き伏せれてないじゃん」オリゲネス「無教養な人の方が教養のある人より絶対数が多いんだから当然だろ。み言葉の人類愛は全ての魂に及ぶんだから」。むうう……。ホントやるなあ、オリゲネス……。
・「ユダヤ人が巧妙な口実を繰り出して、「見よ、乙女」という言葉は書かれておらず、「見よ、少女」という言葉がその代わりに書かれていると言うのであれば」 えっ!? この問題ってこんな昔から言及されてたのか……。http://www8.plala.or.jp/StudiaPatristica/cc1-34.htm
・オリゲネス「神は徴を与えるって言ってるんだから、普通に若い女の子から子どもが生まれても別に奇跡じゃないじゃん。あそこはやっぱり処女から生まれるって意味なんだよ」 ここは詭弁臭いなw あそこの要点は「誰から生まれる」かではないし。この問題に関してはケルソス、オリゲネス共にイマイチ。
・ケルソス「なんで神がマリアに欲情してんだよwww」オリゲネス「ケルソスは福音書の記述内容を順番通りに取り上げないからけしからん」 おまえらもっとためになることを議論しろwwwww
・ケルソス「ユダヤ人が言ってたけど、ヨハネから洗礼を受けた際に聖霊が鳩になって下ってきたって、それ、誰が見たんだよww」オリゲネス「エピクロス派がいうならまだ分かるけど、ユダヤ人に言われても。じゃあ、エゼキエルやイザヤだって誰が見たんだよ」※「ユダヤ人が言った」はちょい理解が怪しい
・ケルソス「旧約の預言がイエスのことを言ってるとかwww 他にも当てはまるやついくらでもいんだろJKwww」オリゲネス「うっせーな、具体例挙げてやんよ!」 んー、これはオリゲネスの負けっぽいな。具体例を挙げてもしょうがない。
・ユダヤ人「イザヤ52-53はイエスのことを言ってるわけじゃなくて、民全体を指してるだろJK」オリゲネス「民全体だと考えると、『(彼は)私の民の諸々の不法のゆえに死に導かれた』が民が民のゆえに死に導かれたことになっておかしいじゃねーか」 ユダヤ人はあそこを民全体と考えてたのかー。
・オリゲネスによれば、サマリア人のドシテオスなる人がキリストを名乗った?? 注によればこのドシテオスが魔術師シモンの師匠?? 色々興味深いんだけどググっても全然出てこない。http://bit.ly/qyX9OJ
・ケルソス自身か、それともケルソスの知り合いのユダヤ人か分からないけれど、マタイ福音書に書かれたヘロデ大王の嬰児虐殺の信憑性を疑ってる人はいたらしい。まあでも考えてみりゃ、いくら古代人でもそりゃあ疑う人もいるよな。もう200年も前のことなんだし。
・「(ケルソスは)使徒たちの数さえ知らずに、イエスが、収税人や船乗りといった極悪非道な悪名高い人たちを十人ないしは十一人ほど自分の周りに集めて、彼らとともにあちこちへと逃げ回り、見苦しくも執拗に食物を集めていると言っている」 ちょwww でも僕もペテロたちはチンピラだと思うw
・「共通善を誇りにする人たちは、新しい方法で多くの悪徳から人間たちを回心させたみ言葉に感謝すべきであった。またその真理とまではいわなくとも、人類に対するその善益を証すべきであった」 オリゲネス、かなり妥協してるなー。「真理とまでは言わなくとも」まで言うのか。
・オリゲネスは「ともかくキリスト教に改宗することで生活習慣が改善された点は評価しろ」ってたびたび言うんだけど、新約聖書って、特にイエスって、生活習慣の改善をそんな訴えてたっけな? パウロとかはなんか言ってたけど、あれ、どっちかって言うとユダヤ教の流れじゃない?
・んー、あるだけ読了った。ケルソスもたまーにいいツッコミをするけど、大体は下世話なツッコミなのでオリゲネスに揚げ足取られたりして負けてるなあ。まあこれはオリゲネスの著作だから、ケルソスの扱い易かったところだけオリゲネスが取り上げてんのかもしれないけど。