【5/28】メモ「聖書時代史 旧約篇」


聖書時代史―旧約篇 (岩波現代文庫)
聖書時代史―旧約篇 (岩波現代文庫)山我 哲雄

岩波書店 2003-02-14
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↑これ読んでメモー。

 
 ***


・「乳と蜜の流れる地」は牧草と果樹が豊富ということ。牛乳と果汁ってことかな? 周りの砂漠地帯に比べれば豊潤という程度で、東アジアに比べれば全然らしい。イスラエルの大きさはダビデ時代でも四国よりちょっと大きい程度。p1

・アブラハムやヤコブが仮にユダヤ民族のあるグループの祖先として実在してたとしても、ユダヤ民族共通の祖先というのはありえない話。「エジプトに下った70人程度の集団が430年間で『壮年男子だけで60万人』の大民族に発展するという発想そのものが現実的ではない」。言われてみればそうだなあ。p16

・「イスラエル12部族には異なる二つの形態がある」「レビを一つの部族とするもの」「レビを部族に入れずヨセフをエフライムとマナセに分けて数えるもの」。あー、ここ、何気に混乱してたんだよな。そういうことか。p21

・レアとラケルの醜いセックス争いは、当時の部族間の力関係にあるかもしれないとのこと。レアとかラケルとかの正妻が生んだ(子が祖先となった)部族はイスラエル民族内で力が強く、側女の子は辺境に住んでた部族。ただ、今の知識では説明できないこともあるらしい。p22

・イスラエルとはえらい仲の悪いイメージがあるアラム人だけど、レアとラケル(イスラエル人の粗ヤコブの妻)はアラム人だし、申命記には「自分たちの先祖はアラム人」と明記されてる。イスラエル人はアラム人なのか? 良く分からん話だな……。何をもって分けてるんだろう。p24

・聖書に書かれてる通りの「出エジプト」は歴史的にはなかっただろうが、イスラエルを形成する諸集団の一部分がエジプトから脱出した体験を持ち、それを他の集団に伝えたということは十分ありうる。p27

・モーセの名はエジプト系で、架空のキャラに名付けるにしてはうまくできすぎているので、実際にモーセという名の人物が脱走集団の指導部にいた可能性はある。(イマイチ意味が分からない。モーセがエジプトの王室に育てられたという伝承と合致してるということ?) p30

・エジプトには二人の逃亡奴隷の調査についての報告書さえ残っているが、出エジプトのような大規模な脱走劇の記録はない。おそらくは大エジプトからすればどうでもいい事件で、数十人規模の脱走だった可能性もある。でも、逃げた奴隷たちは、何か奇跡的なことがあって追跡を振り切ったのだろう。p32

・出エジプトした集団がヤハウェ信仰を持っており、それを他のイスラエル民族(になる前の段階)が受け入れたのではないか、とのこと。なんで、そんなもんを受け入れたかといえば、ヤハウェの神概念が強力な「戦いの神」「救いの神」だったから。p33

・ハビル/アピルなどと呼ばれる(真の意味での)アウトロー集団がおり、こいつらがカナンの地で略奪行為を繰り広げていたらしい。このハピルと「ヘブライ人」との間に何らかの関連性があるかもしれない、とのこと。旧約聖書読んでたら、カナン征服時のイスラエル人はモヒカンザコにしか見えないもんなー。p41

・イスラエル人の多数は、「カナン人だったが都市部が衰退したので僻地で住み始めた人」か、「元々カナンと仲良くて定着した遊牧民」辺り? 他にもエジプトから脱出した人とかが別個にいて、そん中で「オレたちの先祖って出エジプトしたんだよねー」って仲間意識を持ったやつらがイスラエル民族となった? p55

・どうもイメージ的には、山地に住んでいたイスラエル人(の元になった人たち)が平野部の土地を虎視眈々と狙っていて、また、自分たちも外部に狙われたりして周りと戦って、でも、当時のイスラエル人に職業軍人などいなかったから、皆兵ならぬ、住民みなモヒカンザコという、そんな感じだろうか。p56

・まず部族連合(イスラエルの母体)は「エル」を崇拝しており、そこに新しく強力な神ヤハウェがもたらされて、エルとヤハウェが同一視されイスラエルの神となったかもしれない。エルはウガリット神話の最高神か、もしくは当地の「神」を表す普通名詞か。p62

・現実的に王政を導入しようとする人たちと、ヤハウェ宗教的理念からそれに反対する人たちがいて(ヤハウェ信仰は基本的に「反王権的」「平等主義的」らしい)、お互いにサムエルに代弁させようとするから、サムエル記でのサムエルの王政に対する態度が矛盾・分裂している。p74

・なるほど、ダビデはまずユダ国王であって、そっから権力闘争によって部族連合(イスラエル)全体の国王になったわけで、いわば二国の国王を兼務してたのか。なので、ソロモンの死後に分裂することになる、と。p79

・ダビデがエルサレムを首都にしたのは、①南のユダと北の諸部族の中間地点だから②天然の要害③それまでカナン人に征服されてたので、中立的な土地だった④エルサレムにはヤハウェ宗教の伝統がなく、宗教的勢力による王権への干渉がなかった⑤カナン住民も実際問題いたので彼らを対象とするにも好都合。

・④が特に面白いなー。エルサレムなんて、今では宗教都市のイメージしかないのに、ダビデがエルサレムを選んだのは「ヤハウェ信仰の影響が小さくて、やかましい宗教者に横槍を入れさせず、のびのびと王権を行使できるから」だというのは目からウロコだ。 p81

・しかも、その上でダビデはヤハウェ信仰を利用すべく契約の箱をエルサレムに搬入したとのこと。ダビデかソロモンが預言者に「ダビデの王朝はずっと続く」と言わせて、ダビデ王朝支配の正統性を示したり。実際、旧約の中でも「すごくいい王様」扱いされてるんだし、ダビデすげーなー。p83

・イスラエルは滅亡に瀕した部族連合から、ダビデの時には異民族をも支配する"小帝国"に成り上がって、これが当事者たちにとってはスゴイ栄光だったので、ダビデは持ち上げられ第二のダビデ(メシア)が熱望された、とのこと。そんな「輝かしい栄光」も所詮は四国程度の小帝国ってのが悲しいな。 p86

・しかも、周辺諸国の資料にはソロモンが全然出てこない。ユダヤ人はスゲースゲー言ってても、周りからすれば「なんか新興の豪族が出たらしいよ」「へー」程度だった可能性がある。p94

・ソロモンの時代に文化交流が盛んになり、ようやくここで文字の使用が普及したらしい。文字を使い出したのは王国成立前後。モーセ五書はモーセが書いたことになってるけど、ホントはその時点ではまだ文字すらなかったっぽい。p94 p13

・ヤロブアムは聖所に金の子牛を置いて、これが旧約中では「偶像崇拝しやがったクソがー」となってるけど、ソロモンだって神殿にケルビム像を置いてるし、なんか置くのは(背教行為ではなくて)当時ふつうのことだったのかもしれない。金の子牛も「目に見えぬ神を背負って運ぶ聖獣」なんだって。p103

・旧約ではクソミソに言われてるオムリやアハブは有能な王だったみたいで、アハブなんかは反アッシリア同盟の中心人物として頑張ったりしてるんだけど(カルカルの戦い/アッシリアを食い止めた)、具合が悪いせいか旧約中ではスルーされてる。p114

・旧約のどっかで、「あいつら、オレたちが大国にボコボコにされた後にやってきて略奪蹂躙しやがって許せねえ」って書いてあったけど、イスラエルもアラム人に同じことやってんじゃねーか。

・列王記では最悪の王扱いされてるマナセもすごく有能な人で、アッシリアに服従したのも当時の国際情勢的に賢明な判断とのこと(当時のアッシリアはめちゃくちゃ強かった)。最悪と言いながらも実際は50年も平穏に統治しちゃったので、歴代誌ではマナセが途中で改心したことにしている。p154

・マナセの異教要素の導入がアッシリアへの服従と関係してたのと同様に、ヨシヤの異教要素の排除はアッシリアからの独立と関連してるらしい。つまり、単に宗教的に堕落した・純化したという話ではなく、国際政治的な要請によるもの。p158

・ユダ王国がバビロニアに負けたのは、イコール「ヤハウェがマルドゥークに負けた」ことでもあるので、その問題へのアンサーとしてヨシュア記、士師記、サムエル記、列王記が(捕囚から逃げた人たちによって)書かれて、「ヤハウェが弱かったんじゃないよ! オレたちが契約違反したからだよ!」ということになった。p174

・バビロニア最後の王ナボニドスは政治を王子に任せて砂漠を放浪したりしたらしい。変な王様もいるんだなあ。だから、国民に愛想を尽かされてペルシアに無血開城したんだけど。旧約聖書ではヤハウェの差し金で気が狂ったことにされてるけど、いい迷惑だよな(しかもなぜかネブカドネザルが!)。p184

・クーデターやら謀殺やら戦死やら悲惨な目に遭うことの多い王の中で、政務をほっといて放浪したり、宗教に夢中になったりして、王座を失う時も民に呆れられて無血開城と、ある意味平和的に征服されたナボニドスはなんだか呑気で微笑ましいな。

・初めて明確な死者復活の概念が生まれたのはアンティオコス四世のユダヤ教弾圧政策で保守派のやつらが殺された時。p243

・預言書はそれが書かれた時点までの歴史を「あたかも未来を見ぬいていた」かのように書くのだけど、そこから先は本当の未来予言なので外れる。どこを外しているかでその預言書の成立年代の手掛かりとするらしい。ダニエル11-40~45とか。p246

・「サドカイ派は「保守派なので」当時新しい思想であった、天使、死者の復活、最後の審判などを否定した」。すげーな、なんかすげーな。p262

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