【5/12】気合でまとめる唯識


横山紘一『やさしい唯識』
岡野守也『唯識のすすめ』
松久保秀胤『唯識初歩』
廣澤隆之『唯識三十頌を読む』

 この四冊から唯識の認識メカニズムをまとめてみる。まとめてみせる。

 
<まとめるべきこと>

1、意識、末那識、阿羅耶識の定義
2、外界の物(があるかどうか知らないが)を認識器官が捉えた後、それが認識されるまでの流れ。


1、意識、末那識、阿羅耶識の定義

by『やさしい唯識』

<意識>
・五感と共に働いて感覚を明瞭にする。
・五識の後に言葉を用いて概念的に把握する。
・後天的な自我意識(自分はこういうものだ)。

<末那識>
・深層に働く自我執着心、阿羅耶識を対象として我と執する。
・表層の心(意識か?)が常にエゴで汚れている原因。
・先天的な自我意識(赤ちゃんがお乳を飲むような/本能的かもしれないが自我の萌芽がある)(※これは阿羅耶識を対象としている)
・自分を設定し、設定した自分を他人と比べて慢心したり、自分に愛着を感じる(我チ、我見、我慢、我愛が常に末那識で共に働いているため)。これは具体的には表層意識で生じるが、それは深層の末那識がこうだから。(※末那識は阿羅耶識を対象として、それを自分であると錯覚する)

<阿羅耶識>
・一切を生み出す可能力を有した根本の心。(外界のモノ全て、五感や意識も含む)
・一切の存在を生じる力(種子)を有する
・種子は名言種子(モノに言葉を当てることか?)と業種子(未来生に影響するもの。名言種子と違うものではない)。
・過去の業の結果を貯蔵する。
・現在と未来との全ての存在を生じる。
・肉体を作り出し、それを生理的に維持する。
・自然を作り出し、それを認識し続けている。
・輪廻の主体。

by『唯識のすすめ』

<意識>
・外界のものがあると認識する。(※同じところを廣澤先生は「感覚・知覚対象を捉える働き」としており、「外界のものが『ある』」というニュアンスは特に見られない)
・善と煩悩、そのどちらでもないものが意識の作用として起こり、その結果として、苦しみ、楽しみ、そのどちらでもないの三つを感受する。

<末那識>
・私の好き嫌い、私の利害など、無意識に私にこだわってしまう心。
・絶えず心の深いところで自我や物が実体的に存在すると思い量る識。
・自分というものがある、と思ってこだわる心。
・自分というものがあると思い、外側に実体的なものがあると思う。(※後半は意識の説明と被っているが、どうも仕様のようだ)
・阿羅耶識から生まれたものでありながら、阿羅耶識を見る。
・命の流れの世界(阿羅耶識)を見たときに「私の命」と見る。
・「良い人」とか「イヤなやつ」といった反応が(私の基準に照らして/意識では差別してはいけないと思ってもそれでも)心の底から湧いてくる。そこに働いているもの。
・末那識は有覆無記。「いい末那識」を持った人もいる。自分にこだわりがあるままで、いいことをやることもある。(※末那識は諸悪の元凶的なニュアンスで捉えがちだが、それは仏教的な悟りを目指す場合での元凶であって、世俗的な善悪とは関係ないと言える)

<阿羅耶識>
・命にこだわる心。命を維持し、こだわる力。(※身体の維持というだけでなく、熱いものに手を触れた時にパッと手を離すようなことも阿羅耶識と考えている。横山先生、廣澤先生は後者の機能は末那識と考えている)
・迷いと悟りの源泉。
・命の流れ。息を吐いたり吸ったりなどの生命活動の総体。
・分別的に捉えた存在の影響力を蓄えるところ。
・禅定による無分別の体験は阿羅耶識に記憶される。

by『唯識三十頌を読む』

<意識>
・「私は~である」と言語化して自己を考える。

<末那識>
・物が飛んできたときに無意識によけてしまう。この時に自己保存しようとするのが末那識。(このような心のあり方を生み出す働きが阿羅耶識)
・阿羅耶識を自己と捉える思惟。
・阿羅耶識の「世界を認識する主体」だけを対象とする(※よく分からない)
・末那識は阿羅耶識を自己と捉えてしまう。
・末那識は四煩悩と共に働く。
・言語化された思考ではなく、アメーバーが自己保存する際にも働くもの。
・瞑想の境地では末那識は抑えられるが、瞑想をやめると復活する。

<阿羅耶識>
・身体活動、言語活動、精神活動をすると気づかないうちに心が変化しており、行為、活動の微妙な影響力が蓄積されるところが阿羅耶識。
・阿羅耶識に貯められた影響力は何かのきっかけで日常生活に行為となって現れる。
・行為となって現れると、それがまた阿羅耶識に影響する(阿羅耶識縁起)
・一切法が日常世界に出現する可能性を秘めた種子として蓄えられている。
・肉体と心を統御する。
・阿羅耶識には認識したものを言語化し、分別する機能(種子)がある。(※横山先生はこれを意識の機能としていないか?)
・主観、客観の認識構造を保持する。

by『唯識初歩』

<意識>
・自己執着心を自分に気づかせる。(※意味が分からない)

<末那識>
・自己執着心。自己を主張する。
・情報を価値付け、自分の個性を育てるもの。
・「関係ない」と思った情報をシャットアウトする(結果、阿羅耶識に入ってもすぐに忘れる)
・優劣や損得などの差別、識別する心は末那識と阿羅耶識。

<阿羅耶識>
・先天的な煩悩と後天的な煩悩が入ってる。(※横山先生は先天的な煩悩は末那識としている)
・末那識からの情報を自己の計らいなく溜め込む。
・過去世から我執を含んだ種子を持っている。
・生存欲は阿羅耶識の中にある随眠(ただし、その本能を起こさせる機縁を作るのは末那識の自我意識)


2、外界の物(があるかどうか知らないが)を認識器官が捉えた後、それが認識されるまでの流れ。

by『やさしい唯識』

・ある人に出会う→その人の映像が心に生じる(眼識)→映像に「憎い」という思いが加わる(意識/「憎い」と思う煩悩は意識と共に働く心作用)→憎いと思うのは自分にこだわる心があるから(自分を設定しているのが末那識)→言葉でもって「~さんは憎い人だ」と決めつける(意識)→眼識・意識・末那識・煩悩全てを生じるのが(阿羅耶識)(※この説明では阿羅耶識の機能がよく分からない)

by『唯識のすすめ』

・末那識が阿羅耶識の流れを見て「私の命」と考え、それにこだわる→そのこだわりの心で意識が働く→意識の心が働いた結果のこだわりの種子が阿羅耶識に貯められる(※阿羅耶識のこだわりの種子を末那識が捉える箇所がイメージできない)

by『唯識三十頌を読む』

・ありのままの世界が阿羅耶識の影響で「私が見る世界」に変わる。末那識が自己を構想し、意識が「世界を見ている私」と「私に見られている世界」との主客の関係を形成する。

by『唯識初歩』

・前五識で外界を知覚→意識で情報をまとめる→末那識を経由して末那識に染められる→阿羅耶識に貯められる。また、阿羅耶識から情報が発信され→末那識を通って→意識に登る。
・意識、末那識で認識は歪められる。
・外界のものを五識が確認→意識がまとめる→末那識と阿羅耶識が自分で選んで取り入れる(※直前で言ってるのと違う気がするんだが……)
・外界のものを五識が確認→意識がまとめる→意識が「あれはなんだろう?」と思う→末那識と阿羅耶識の種子から情報が来て両者を擦り合わせる(※何故ここで末那識を通るんだ)→「あれは**だ」と意識で判断する→「**はイヤだ」と末那識が自分の判断を加える→阿羅耶識に送られ熏習される。

付記:唯識の位置付け

by『やさしい唯識』

・唯識思想はヨーガを実践し、自己の心のありようを深層から浄化することによって、迷いから悟りに至るための方法と階梯とを詳細に説いたもの。

by『唯識のすすめ』

・大乗仏教の深層心理学
・外界の事物は自分と関係なくあるものと思っているが、そうではなく、自分と外界の事物は心において繋がっている(縁起)ことを自覚するためにまずは心に集中する唯心論的方法論。(※とてもいい解釈だと思う)
・ただ「空」だとは言わず、実感としては自分やモノがあることは認めた上で、それが本当はどういうものかを懇切丁寧に説明している。
・悟りを一応理論で説明して納得させ、「体験させなければ」という気持ちにさせるもの。

by『唯識三十頌を読む』

・アビダルマの分析方法を導入して般若経を解釈したもの。

by『唯識初歩』

・瑜伽行の実践の中から生まれたもの。心のなかに渦巻く意識の流れ、人間存在のありようを極限まで見つめた結果、得られたもの。

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