お寺の経済学 (ちくま文庫) | |
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ある意味、分り易い仏教入門書。
お寺の経営事情とか将来像とかを経済学的に考えてる本ですが、本書はある意味、仏教入門書としての価値が高いと思います。基本的には門外漢である経済学の先生が無論門外漢である読者に向けて、「自分も分り易く」「相手にも分かる範囲で」仏教を解説しているためです。お寺の経営事情などを説明するにも、その前に最小限の仏教教義を伝える必要があるわけですが、その解説が秀逸。実に分り易い。仏教自体は非常に形而上学的な雲を掴むような話なわけですが、それを経済学の視点から見ることで、つまり、僕たちにも身近な「カネ」に関する話とすることで、仏教が一般人にもイメージし易いものとなっているわけです。
分り易いといえば、たとえば第一章に出てくるこの公式など。
「満足=充足/欲求」
人が満足を得るためには二つの方法があります。分子(充足)を増やす方法と、分母(欲求)を減らす方法です。欲求する以上にモノが得られれば当然満足ですが、一方、別の方法としては、欲求自体を減らせば得られるモノが少なくても満足できるとも言えるわけです。「足ることを知る」というやつですね。仏教は後者の方法を使った「人が満足するためのアイデア集(教え)」と言えるわけです。本書はこのレベルから分り易く仏教を解説してくれます。
本書の長所は経済学の視点を使うことで分り易く仏教を解説しているところ。一方、短所は経済学の視点から見た仏教しか分からないところですが、まあ、普通の人は特に気にする必要もないと思うので、「親しみやすい仏教入門書」としてオススメです。仏教哲学は読む気しなくても仏教とカネの話なら読めると思うんだ。
<以下、自分用メモ>
・江戸時代は個人墓だった。先祖代々の墓が造られるようになったのは明治以降。(仏教に先祖崇拝のニュアンスが加わってきたのは、「お墓」という面ではかなり最近っぽい)
・最澄の天台宗は学者養成校。学者を養成したのでそこからいろんな才能が生まれた。法然や親鸞や日蓮や道元など。一方、空海は自分で方法論を完璧に理論化しちゃったので、後続ががんばるべきところがなくなっちゃった。なので、天台宗に比べ真言宗からは傑出したメジャーな僧侶が出ていない。
・追善供養(法事)は儒教の先祖崇拝を取り入れたもの。檀家制度によって安定収入を得られるようになった寺院が収入獲得機会を増やすために江戸時代になって始まったもの。(※これはどれだけ学問的裏付けがあるのか確認したい。法事が現在のような形になったタイミングはおそらく江戸時代だろうが、動機が収入獲得機会の増大かどうかは怪しい気がする。もちろん一因ではあるだろうが)
・仏壇はお寺の本堂のミニチュア。
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