【2/5】まとめ「脳はいかにして<神>を見るか」


 お仕事メモ。


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・方向定位連合野は普段とは違った方法で機能しているが、間違いは犯していない(という可能性)(※絶対的合一などの神秘的体験は神経細胞の誤りによる幻覚ではなく、これはこれで「正常な」働きであるということ/しかし、何が「正常か」という問題は残るような気がする)

・アップルパイを食べるということは、あなたの複数の感覚器官にアップルパイの情報が入り、それが脳の特定領域で処理されて知覚が成立するということ。「視覚中枢は金色がかった茶色をしたパイの像を、嗅覚中枢は食欲をそそるリンゴとシナモンの香りを、触覚中枢はパイの表面のサクサクした歯ごたえと中身のトロリとした舌触りとの複雑なハーモニーを、味覚領域は甘くて濃厚な味をそれぞれ知覚し、これが統合されたときに、「アップルパイを食べる」というあなたの敬虔が生じてくる」。パイを食べるという経験は「あなたの心の中にある」。だからといって「パイが現実に存在しないわけではない」。同様に神が現れたとしても「神経活動が作り出したリアリティーの解釈」以外のかたちで神を経験することはできない。とはいえ、アップルパイと同様、神が目の前にいない(脳内だけの処理)とは限らない。

・「脳と心は、生存確率を高めるために進化してきた」という仮説に立つと、神話の成立を推測できる。レイヨウは物音がしてもそこにチーターの姿が見当たらないとその場を動かず草を食べ続ける。「チーターがいるかもしれない」と考える程、脳が複雑にできていないからである。しかし、人間は抽象的な危険(「チーターがいるかもしれない」)について思いを巡らすことができてしまうため、物理的世界への理解が深まるにつれ、世界は「どんどん危険になっていく」。科学、文化、宗教、法律などは脳が訴える耐え難い不安を軽減するために生まれてきた。不確実性が不安を誘発する。不安は解決されなければならない。答えが簡単に出なくても心は何らかの答えを出さないわけにはいかない。実存的な不安に対する答えを見つけられなかった心は、代わりに物語を創作して提案し、それが宗教的な神話になる。

・神話の確信プロセス。遺体を燃やす側で族長は論理的な左脳により幾つかの説明を提案する。一方、右脳は全体的・直感的・非言語的なアプローチから同じ問題を考えている。族長は遺体を燃やす煙が天へと昇るのを見て、「天に昇っていく」というイメージを得る。この右脳のイメージが左脳で提案された概念とぴったり結びついた時に、脳全体が神経学的に共鳴し、肯定的な神経刺激が大脳辺縁系を駆け抜け、視床下部の快楽中枢を刺激する。刺激はさらに抑制系を活性化させ、族長の心には静けさと平安が広がる。それまで彼を不安にさせていた興奮反応は完全に静まっていないので、抑制系と興奮系の両方が同時に活性化している状態にあり、歓喜と恐怖、恍惚と畏怖が入り交じった気分を感じている。この直感は族長にとって鮮烈でリアルであり、自分が最高の真実を発見し、死のくびきから解放されたと信じている。(※これを簡略化して言うなら「信仰には論理的理解と感情的理解が必要」といった程度にまとめられるかと思う。ここで言われている仮説をどの程度信用して良いのかは分からないが、宗教学者は「聖なるもの」の中に恍惚と畏怖が入り交じったもの、すなわちヌミノーぜを認めている)

・単なる思いつきが神話へと変貌するには直感的な経験が必要。

・個人の神話が共同体の神話になるというのは、個人の脳内で起こった神経学的共鳴が、個人が語り継ぐことにより他者にも共鳴を起こすことで広がる。言い換えれば、他者は自分自身の脳で真実の共鳴を経験しない限り、その神話を受け入れることはない。ほんの少しでも共鳴を経験すれば、神話の信頼性は飛躍的に増大する。(※宗教者はしばしば「そのとおりだと思った」と突然信仰を持つことがあるが、あれが神経学的共鳴……と書くのは怪しいので、「論理と直感が直結したもの」だとすれば、宗教者のそういった体験に至る過程も言語化できるかもしれない。逆に言うなら、誰かに信仰を与えたいとき(ピンと来させたいとき)は論理的理解と感情的理解の両方を与えなければならない/「おもしろ宗教仮説」的には「他者の神経学的共鳴」が「おもしろい」に値するのだろうか)

・宗教の熱狂的儀式により興奮系が活性化する。それが一定のレベルを超えると、脳の安定を維持する海馬が問題視しはじめ、情報の流れを抑制してブレーキをかけ落ち着かせようとする。この時に情報の流れがせき止められることで、情報がわずかしか、あるいはまったく入ってこない状態(求心路遮断)になると影響をうけるのが「自己と非自己を区別する手がかりを提供し、空間の中で自己を位置づけている方向定位連合野」で、方向定位連合野がこの状態で機能すると、自己の境界を決めることは非常に困難となり、巨大なリアリティーとの一体感が経験されるのかもしれない。

・詠唱や観想の祈りのような穏やかな儀式の場合は抑制系が活性化される。抑制軽が高くなっても脳全体に海馬がブレーキをかけて、やはり方向定位連合野は求心路遮断状態となる。

・合一体験は方向定位連合野への情報の流れが遮断される程度によって決まる。絵画に見入る時、音楽に聴き入る時などは低レベルの合一体験をしているし、集中力が高まるともう少しレベルの高い合一体験をしている。宗教儀式がもたらす合一体験はこれらと同じものであり、信者の間に広がる穏やかな一体感はレベルの低い合一体験で、トランスやエクスタシーや異常なビジョンなどはレベルの高い合一体験。一番高いのが古今東西の神秘家たちが報告する長時間の神秘的合一である。

・「感覚入力を完全に奪われた両半球の方向定位連合野は、それぞれが担っている機能に応じて劇的な影響を受けるはずだ。まず、われわれが物理的空間として経験する神経学的な基礎を構築し、自己を位置づけるための空間的背景を創造している右脳の方向定位連合野は、感覚入力なしに機能することを強いられると、絶対的な無限という主観的な感覚を生成し、心はこれを、無限に広がる空間と永遠に続く時間、あるいは、時間も空間もない空虚として解釈するだろう。他方、主観的な自己の感覚の生成に関わっている左脳の方向定位連合野は、身体の境界を見つけられなくなってしまうだろう。その結果、心が知覚する自己は際限がなくなる。それどころか、自己の感覚というもの自体がなくなってしまうのだ」

・神秘体験は神秘家にとって、誰もがリアルと認める日常的な知覚と同様にリアルである。

・求心路遮断は心から意識を奪うのではなく、普段の主観的な自己の感覚から意識を解放し、自己を閉じ込めておいた空間的な世界の感覚からそれを解放するのである。(※本書ではこの状態をポジティブに捉えているが、個人的にはこの状態自体はネガティブなものでもポジティブなものでもないと思う。「うわごと」でもなければ「真の解放」でもなく、現象は現象に過ぎず、それをどう扱うかは文脈次第ではなかろうか)

・「体験のリアルさ」に関する哲学者の主観的アプローチは「現実は、そうでないものに比べてよりリアルに感じられる」というもの。われわれの多くは普段の心が見せるものよりリアルな状態を経験したことがないので、主観的に意識する物質世界を超えたリアリティーがあるのではないかと考える理由がない。けれども神秘的合一を体験した人々は絶対的一者のリアリティーはより鮮烈でリアルであるという。

・キリスト教の神秘家も神は言葉で説明できる存在として理解しようとしない。エックハルトいわく「完全な、罪なき者になりたいと願うなら、神に付いてあれこれ語ってはならない。神について何かを理解したいとも思ってはならない。なぜなら神は、あらゆる理解を超越しておられるからだ。ある師は『わたしが理解できるような神に出会ったとしたら、わたしはそれを神とは認めないだろう』と言っている。あなたが神について何かを理解したとき、彼はそこにはおられない。あなたが神について何かを理解したとき、あなたはその分だけ愚かになっている」(※これはキリスト教、イスラム教などが、いわば「全体性」である神を何らか人格的なものと見ようとするが、対して両教の神秘家たちは「全体性」の方を捉えていた、ということだろう/三位一体の正統解釈がやたら難解で意味不明なのも「神は理解できないもの」というニュアンスがあるのかもしれない)

・人格神は理解し難いものを理解しようとする象徴的な試みの産物である。絶対的一者の状態を経験した人々は、知り得る神がより工事のスピリチュアルなリアリティーのごく一部にすぎないことを悟っている。部屋に差し込んできた一筋の光から、太陽の光輝を知ることと同じである。

・科学は神話であり、すべての神話的な信条の体系と同様に、ある根本的な仮定の上に立っている。それが「リアルなものはすべて、科学的観測によって証明できる。ゆえに、科学的に証明できないものはリアルではない」という仮定。(※教祖マニュアルにおいて私が指摘できなかった「科学」における「前提」がこれかもしれない)

 ***

・主な宗教を信仰している男女は、そうでない男女に比べて脳卒中や心臓病の確率が低く、免疫系の機能が良好で、血圧が低い。「信仰を持たないことが死亡率に及ぼす影響は、四十年間にわたって一日にタバコを一箱ずつ吸い続けることに匹敵する」。これの理由は明らかでないが、宗教が健康的な生活を奨励すること、コミュニティがあること、また讃美歌や瞑想などの宗教行為が抑制系を活性化させ、免疫系の機能を高めたりストレスホルモンを低下させるのかもしれない。(※どのような理由であれ、信仰が健康に寄与するのはどうも確からしいし、それはスピリチュアルな理由ばかりでなく、十分に合理的と言える理由によるところも少なからずある)

脳はいかにして“神”を見るか―宗教体験のブレイン・サイエンス
脳はいかにして“神”を見るか―宗教体験のブレイン・サイエンスAndrew Newberg

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