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図解雑学シリーズの一冊。教科書的なこのシリーズにしては珍しく、著者が情緒豊かに語っているので読み物としても面白いです。この著者は絶対戦争大好きでノリノリでこれを書いてるよなー。
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本書は、「なんで開戦しちゃったの?」という冒頭入り口から始まり、運にも助けられた序盤の連戦連勝、しかして、無計画っぷりが発揮された中期以降の展開、後半の泥沼化、止めを刺された終盤という太平洋戦争の流れが一通り解説されています。
で、これを見て思ったのが、確かに序盤は日本が勝てているということ。「最初の一年くらいは暴れてみせますよ。二年目からは分からんけど(´・ω・`)」と言った山本五十六長官の言の通り、細かなミスはありつつも序盤は面白いくらい勝ててるんですよね。中盤からは序盤のアドバンテージが活かせなくなったり(せっかく油田を確保したのに日本に運べないとか)、手に入れた広範な占領地の確保が国力を超えていたりするんですが、とにかく序盤は勝ってたんです。「序盤で頑張ってさっさと講和に持ち込もう」という計画であれば、太平洋戦争開戦も、まあ結果論から言うほど愚かな選択ではなかったのかな、と。ただ問題は、講和に持ち込む具体的な手順をさっぱり考えてなかったことですが。
そして、次に思ったのが、日本もアメリカも戦術レベルではとにかく想定外の出来事が多い。「アメリカが情報戦で相手を上回る(完璧に日本を待ち伏せするぞ!)」→「艦船が遅れたので延期する(あれれ、日本が来ないよ。一事退却するか)」→「日本がやってくる(ウギャア、完全に虚を突かれた!)」みたいに、日本側の作戦が巧く運ばなかったから相手の虚が突けたとかそんなのばっかりです。
あと、ヒューマンエラーもとにかく多いです。墜落する味方戦闘機を見て、「空母撃沈!」と報告したり(このせいで相手方の戦力を誤認して大敗北)、戦術的には成功してたのに飛行部隊が視界不良ではぐれて作戦失敗したり、重要な報告を聞き間違えて相手を逃したり、そんなのばっかりです。ミスはもちろん日本にも多いけど、アメリカにも多い。本書には載ってないけれど、個人的に最大のヒューマンエラーだと思うのがキスカ島の同士討ちで、日本軍は既に撤退済みのキスカ島へ大挙して乗り込んだアメリカ軍兵士が、「日本軍が待ち構えている」という緊張感から同士討ちを起こしてしまい、島に日本兵は一人もいないのに死者100名を出しちゃったという事件です。
戦争というと、戦闘のプロの軍人たちが互いに知恵を絞って戦略を練り上げ、知力の結集たる兵器と戦術を持って戦うような気がしますが、実際はこんな感じで、一生懸命考えても色んなことで台無しになったり、良く分からんことで兵力損耗したりしてるわけです。なので、戦略的にはともかく、戦術的には少々戦力で劣っていてもたまーに勝てちゃう。「勝負は時の運」なところが確かにあるわけです。しかし、「たまに勝てる」からこそ、運良く勝てた時に日本は「危なかったところ」に対して無反省となり、また、「今度も運良く勝てるかも」なんて思って無謀な作戦を立てちゃうわけですね。
ちなみに、本書を読んでいると何度も「もし、ここでこうしていれば大戦果を上げることができたが、**中将はそうしなかった。残念だ」的なのが出てきます。たとえば真珠湾攻撃でも第二次攻撃を行っていれば米太平洋艦隊はさらに再建が遅れたはずでした。ですが、そういったことも戦略的にイーブンであった頃の話で、戦略的に日本の敗北が決定した戦争終期にあっては、「もし、ここでこうしていれば大戦果を上げることができたのに……」「だが、大戦果を上げたとしても、敗北が一ヶ月先送りになっただけだろう」となってしまうわけです。つまり、戦術的には「見事な判断をすれば勝てる可能性はある」。けれど、戦術的に少々勝利したところで「やはり戦略的には覆らない」のです。
まとめると、「戦争はとにかく巧く行かない。一生懸命考えても何だかんだで台無しになる」「運が良かったり、ヒューマンエラーが起こったり、判断ミスをしたりして、大勝利したり、大勝利を逃したり、敗北したりする」「しかし、そんな局所的な勝利や敗北は、全体的な局面には大して影響しない」ということです。やっぱり大事なのは戦略なんだなあと思いました。
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