仏教儀礼に内在する王権のイメージ(4)
日本の例 ― 天台座主天海によって図られた江戸・徳川政権の護り
《徳川家康》
・晩年、天台座主の天海より、山王一実神道の教授を受け、灌頂を授かる。
《家康の遺言》
・「遺体は駿河の国の久能山に葬り、葬儀は江戸の増上寺(※家康は浄土宗)で行い、位牌は三河の国の大樹寺に納め、一周忌が過ぎてから、下野の日光山に小堂を建てて勧請せよ。関東八州の鎮守とならん」
・久能山は西国大名を威嚇するため
・日光は王城の真北であり、王城を守護するポイント
以上の家康の遺言をもとに、江戸と徳川政権の護りを仏教界においてプロデュースしたのが時の天台座主天海。
《天海による徳川政権護りのポイント》
a,山王一実神道に則って、徳川家康を「薬師仏を本質とする東照大権現という噛み」として、江戸の真北の日光山東照宮に祭り、輪王寺に管轄させ、関東の護りとする。
b,江戸の鬼門を寛永寺(上野)、裏鬼門を大円寺(目黒)で封じる。五色不動もおそらくは天台の法。
c,これらすべてを輪王寺宮という皇族の僧侶(法親王)に掌らせる。初代輪王寺宮の守澄法親王は、後水尾天皇の第三皇子。
※皇族が江戸を護っており、ある意味、公武合体ともいえる(実際は幕府に人質に取られたようなもの?)。輪王寺宮は普段は寛永寺に住んでいたので寛永寺は江戸の象徴的な場所であったらしい。
輪王寺宮は
・東叡山 寛永寺
・日光山 輪王寺
・比叡山 延暦寺
この三つを束ねる天台座主
《天台宗菊輪宝の意味》
菊の御紋(皇室)+輪宝(仏教)=菊輪宝(仏教に基づく王権を皇室が護る)
《山王一実神道》
・日本の神は全て山王三聖が仮の姿で現れたものである
・山王三聖の本質は、釈迦物、薬師仏、阿弥陀仏である
・三聖は最終的には釈迦物に帰一する
・"山王"という言葉はスメール山のイメージと三つの世界(天、地、地下)を結ぶというイメージを持つ言葉
《山王三聖》
(1)大宮権現(別名:大比叡神/日吉山王)
奈良時代は三輪山に、平安時代は比叡山の神の姿になって日本に現われる。
(2)二宮権現(別名:小比叡神/地主権現)
比叡山に元からいた先住神、スサノオの孫
(3)三宮権現(別名:聖真子/八幡大菩薩)
応神天皇の時代に日本に天下った神
《山王三聖の"本当の"姿(本地仏)》
(1)釈迦仏(中央の仏)
(2)薬師仏(東の仏)
(3)阿弥陀仏(西の仏)
(a)それまでの山王一実神道
・天照大神=大日仏(太陽の属性)
・山王権現=釈迦仏
「大日仏=釈迦仏」なので、「天照大神=山王権現」
(b)天海の山王一実神道
・薬師仏⇒東照大権現⇒徳川家康
・薬師仏=胎臓界の大日仏=天照大神
つまり家康は、薬師であり、大日であり、釈迦であり、天照であり、山王権現であるという厨キャラに
《平安京と江戸の護りを同時に行う》
・比叡山、延暦寺を東叡山、寛永寺にコピーし、琵琶湖を不忍池にコピーした(だから、不忍池は琵琶湖気分で眺めるといいらしい)
・天海の意図するところは、千年の都、平安京のパワーを江戸に移植し、天皇家(輪王寺宮)に将軍家の安寧を祈らせること。
江戸の都市計画―建築家集団と宗教デザイン (講談社選書メチエ (66)) | |
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