【6/28】「ダライラマの仏教入門」


 ダライラマ猊下が僕たちのために、分かりやすく仏教を教えてくれるとっても親切な本。

 …………だとは思うんだけど、実際、分かりやすく話そうとしてくれてはいるんだろうけど、それでもレベルが高い。キルケゴールみたいな読者のことをなんも考えてない難しさではないけれど、やっぱり理解にはある程度のエネルギーが必要とされます。

 本書の構成としては、「どうして苦が生じるのか」「悟りへのプロセス(1)」「悟りへのプロセス(2)」という形になっており、前半の二つは何とか付いていけますが、最後の「プロセス2」では密教のヨーガがポンポン出てきて全然理解できませんでした。ざんねん。

 以下、前半2つを中心にレジュメ形式でまとめておきます。


 ***


縁起とは?:「あらゆる事物は実体性を持たない」(=空)を論証する主要な根拠

事物とは?:「存在するもの」。これは「常住のもの(観念的存在/因果関係にないもの)」と「無常なもの(非観念的存在/因果関係にあるもの)」に別れる。

※無常ではあるが、ただし、全ての物事は「存在している」(ニヒリズムではない)。が、それら全ては実体としては「存在していない」(=空)。「私」は確かにあるが、それは無常な心や体の集まりの中から何かを「私」として設定しているという話(「何か」は例えば唯識派では阿頼耶識)。「私」という核(アートマン)はない。


《縁起の3つのレベル》

1、ある特定の原因がある特定の結果を生じる。因果関係。(十二支縁起)
2、あらゆる事物はそれを構成する部分に依存する。あらゆる事物はその部分に依存して、「仮に設定」(仮説)されたものである。(最小構成要素を取り出しても、それが大きさを持つ以上、それには部分がある)
3、あらゆる事物は、ある基体の上に言語や概念によって仮説されたもの(道に落ちている縄を蛇と見間違えた時、縄が基体で蛇が仮説されたもの)

※なお、「空間」は仏教においては「物体が存在しない状態」として定義されるため、常住なものである。しかし、空間は「東の空間」「西の空間」などと部分空間に分解できるため、空間も部分を持っている(らしいが、良く分からない)。


《十二支縁起》

無明→行→識→名色→六処→触→受→愛→取→有→生→老死

・無明(無知)によって行(行為)が生じ、行(行為)によって識(意識)が生じ……という、因果関係になっている。
・つまり、老死(老衰と死)という苦の結果は元を辿れば、無明(無知)である。
・ここでいう無知とは、「あらゆる事物は実体性を持たない」ことを知らないということ。


《習気(じっけ)》

・無知が行為を始める
・行為が終わる時には潜在力(習気)が意識に植え付けられる。
・行為は目の前にすぐの結果を生み、さらに、いずれ未来(来世かもしれない)における楽しい経験や苦しい経験をもたらす潜在力を作り出す(たとえば、怒りは粗暴な言葉や態度を生み、ただちに不愉快な雰囲気を作り出す。そして、この行為の潜在力は未来における何らかの結果も生み出す)
・設定された「私」は常に存在し続ける。そのため、「私」の蓄積した潜在力も保持し続ける(死んだ後に天界や地獄に転生するのは、「私」が常に存在し続けて、蓄積してきた潜在力の報いを受けるため)(※ここの理屈はどうも良く分からない。「さっきの私」と「今の私」は違った者である(無常だから)が、「さっきの私」が「やったこと」は、「今の私」も「やったこと」だと考えている。そのため、「さっきの私」と「今の私」はどちらも「やったこと(行為)」を保持し続けている。「さっきの私」と「今の私」がどちらも行為を保持し続けるように、「今の私」と「死んだ後の私」も同じく行為を保持し続けるという意味だろうか??)


《仏陀の境地への三段階》

1、他のものを傷つけないようにしよう(煩悩に基づく悪い行いをやめよう)
2、煩悩に対抗手段を講じよう(煩悩を鎮めよう)
3、これまでに蓄積してきた「潜在力」を消そう

・2までいけたら「阿羅漢の境地」。小乗仏教ならゴール。とりあえず輪廻から解脱はできる。


《1の修行法》

・慈悲、あるいは優しさなどの持つ利益や利点を考察し、怒りや執着などのマイナスの感情の持つ不利益や欠点を考察する。


《2の修行法》

・煩悩は無知に由来する
・無知と「空」の理解は両立しえない
・「空」を理解すれば煩悩はなくなる
・「空」を理解するというのは、論理によって理解するレベルから、概念を介さない直接知覚による直感のレベルにまで高めなければならない
・そのためには瞑想しよう(※この瞑想をどうやると「空」を直感的に理解できるのかは良く分からない)


《3の修行法》

・利他の心を持つ。すると、潜在力が消えるらしい(※そのメカニズムは良く分からん)
・好きな人、嫌いな人、どちらでもない人をイメージして、3人が過去、未来において親友であることをイメージしたり、怒りを表して何か良いことがあるかどうかを考えたりする。この平等の感情を広げていき、全ての命あるものまで拡大する。


《おまけ:六道輪廻図》

http://ikokunotabi.web.infoseek.co.jp/radakh/rinnne.htm

・外周が十二支縁起
・その内側の5つに分かれたセクションが六道(天界と阿修羅界は一緒になってる)
・中心の円が三毒(「豚/愚かさ」「ヘビ/怒り」「雄鳥/欲望」)
・右上の月は解脱の象徴
・円を掴む怪物は無常の象徴
・三毒により行為(※「良い行為」「良くない行為」)が生まれ、その行為が輪廻における苦を有む(※三毒が良い行為を生むというのは良く分からん)
・苦の原因(業と煩悩)が輪廻の中の生を生み出していく(十二支縁起)
・つまり、三毒、六道、十二支縁起は関係があるということ

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