【6/18】宗教学メモ(7)


《タイラーのアニミズム論以降》

スコットランドの民俗学者A.Lang(アンドリュー・ラング)が、「フィールドワークしたらこんなのあったよ!」と報告。

・2、3の未開民族にて、普遍的性格の神々、創造主を発見
・それらは祭儀的崇拝の対象ではない
・その住まいは天(至高神)

→つまり、宗教進化論とは逆。いきなり一神教な未開民族の発見。(そういえば聖書でも神と共にあった楽園からの追放、そしてノアの洪水と、キリスト教的にも人類は退化してる。なので……)


Wilhelm Schmidt(ヴィルヘルム・シュミット)
『神観念の起源』(1912-46)12巻

→ドイツのカトリック神父、民俗学者、宗教学者、言語学者、ウィーン大学、フライブルク大学教授

・ラングの報告を受けて進化論的立場に反対し、「退化」を説く(※宗教進化論は明らかにダーウィンの進化論に影響を受けているが、カトリックの立場的には受け入れがたかった。それよりは聖書に沿って「退化」の文脈で語れないだろうか、と考えた)

・アニミズム→多神教→一神教と考えられてきたものを、一神教からの退化、堕落の形態と考えた
・これは啓蒙主義的、進化論的歴史観に対するカトリック歴史観からの強力なアンチテーゼといえる

《シュミットの提唱しか文化史観》
民俗学的に再構成された人類初期の文化史

[未開の採集狩猟民の原文化の段階]

   ↓展開

[第一次文化の段階]
トーテミズム的高級狩猟文化

   ↓

母権的栽培民文化

   ↓

父権的牧畜民文化

   ↓

[古代文明の誕生]


《トーテミズム》totemism

A・R・ラドクリフ=ブラウンの定義:
「社会が種々の集団に分かれていて、そのある集団とある特定の種(普通は動物や植物の種だが、人工的なものや動物の部分の場合もある)との間に特殊な関係があるとき、これをトーテミズムという」
※種(totem)とはアメリカ・インディアンのオブジア族のototeman(彼は私の一族のものだ)に由来

・至高神の観念が顕著なのは原文化牧畜民文化

※代表する民族:ピグミー、ブッシュマン、トナカイ、コリヤーク、アイヌ

これらの民族では、至高神の信仰が唯一、かつ、固有の宗教形態であり、人類最古の宗教形態であることを膨大な資料によって主張する。
→『原始一神観』の学説:人類最古の宗教形態はアニミズムじゃなくて至高神信仰だよ

・原文化諸民族では比較的純粋な至高神の信仰が存在
→全知全能、道徳性、慈悲、永遠性を備えている
・従属神もいることはいるけど副次的(多神教とはいえない)
・使者崇拝、アニミズム、呪術もわずかにしか認められない
※現代においても、プリミティブな民族に確かに至高神信仰が見られることもある。


《至高神》(Supreme Being)
[M.Eliade『聖なるものと俗なるもの』による]

・天にいる最高神、すなわち至高神(最も高き神)
・本質的に空の神話的な人格化
・空はこれを仰ぐだけで既に宗教的体験を呼び起こすもの
→天は無限なもの、超越的なものとして、つまり、『絶対他者』として開示される
・人間の手の届かない領域、星の輝く高みに到達するのは、特定の上昇儀礼によってその資格を得た者のみ
・天は高く、限りなく、永遠に、強力であるような絶対的なあり方で現存する
→未開民族は自分達の至高神を「高所」「蒼穹」「気象現象」を表す名称で名付ける

例)
・マオリ族の至高神「イホ」(高い、上に、の意)
・アクポソ黒人の至高神「ウウォルフ」(「上方にあるもの」「上界」)
・アイヌ人の至高神「カムイ」(「天」)
・中国人の「天」は同時に「天神」
・神を表すシュメール人の語「ディンギル」は本来「明るい」「輝く」という天の現象に関係するもの。

・これらは自然崇拝とは一線を画するものである(自然信仰ではない)
         ↓
・宇宙の創造者としての天の神は天をも創りだしたのであるため、「創造者」「全能者」「主」「頭」「父」などと呼ばれ、一個の人格者であって天の現象ではない。(※天を神格化したのではなく、天をも造った神とされる)
・しかし、これらの神は天に住み、稲妻、嵐、流星のような気象現象の中で姿を現す


《天に住む至高神の共通性格》

・信仰崇拝から次第に離れる傾向がある(祈ったり、捧げものをしたりしなくなる)
・人間から遠ざかり、天に帰って行く
      ↓
無為の神(Deus otiosus)……何もしない神

・この種の神は宇宙や生命や人間を創造し終わって、一種の倦怠を感じている(「あー、だりー」って感じ)
・天に引退し、地上に息子や造物主(デミウルゴス)を自分の業(わざ)を完成させるために残す。(※なんだかゲームを途中で投げ出すゆとりみたいだ)
・この神の地位は次第に神話的祖先、母なる神、あるいは実りの神などに取って代わられるようになる(現実的に働いてる神に移っていく)→忘れ去られていく
・天の住まいする至高神が、その本来の地位を保っているのは遊牧民の間だけである
・例えばアンダマン諸島の至高神ブルガは、世界と最初の人間を創造した後、引退したとされる。
・今はほとんど崇拝されていない。献供もなければ感謝の祈りもない。
・ただ、わずかプルガの戒めの記憶が生きている2、3の宗教的慣習だけが残されている(記憶だけが生きている)
・たとえば狩人が猟に恵まれて村に帰る時、「聖なる沈黙を守るべし」といった決まりが伝わるに過ぎない
・大多数のアフリカ民族においても同様(「彼はあまりにも遠く隔たっていて、あるいはあまりにも善良なので、わざわざ崇拝する必要がない」)

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