これ読んだ。
本書で分かりやすく書かれていることを敢えて難しく書き直して著者の主張をまとめるならば、自分と人との関係を「自分と人」という関係ではなく、「自分と神」「人と神」という神の観点から相対化し、その上で「自分と人」との間に関係性を構築しよう、という感じでしょうか。つまり、著者は現代の努力至上主義の傾向に「無理が生じている」と考え、そこに宗教の必要性を見ているといえます。
たとえば漫画などで、「オレの運命はオレ自身で切り拓く! 決められた運命なんてまっぴらだ!」みたいなセリフがありますし、僕らはそれに共感しますけど、でも、普通に考えて自分の努力だけで何でも解決できるわけではありません。どんなにがんばっても無理な時は無理です。しかし、「自分と人」という人間同士の関係であれば、つまり、「世界には人間しかいないんだから、がんばればなんとかなる」という価値観では、「なんとかならなかった人」は「がんばってない人」になってしまいます。がんばったのにがんばってない人扱いされるのは、これはあまりに悲しい。
ですが、そこに神を挟めば、「がんばってもなんとかならなかったのは神の意志だろう」ということで、現実をよりポジティブに受け止めることができます。なので、著者の主張としては、「『がんばればなんとでもなる』という現代の価値観が現実的ではないとするならば、宗教的な感覚を伴う価値観の方がより現実的だ」と、そう言いたいのだというくらいに僕は理解しておきます。「神を組み込んだ方が現実的だから宗教は必要」というのは、なるほど、理解しやすい論点です。
どうもこの本は全体に説教臭くて、素直に首肯できない場面も多く、途中まではあんまり良い評価はしてなかったんですが、うん、まあ、最後の「なぜ宗教が必要か」という点は確かに悪くない。最後まで読めば、なるほど途中で首肯できなかった部分も理解できるなあ、といった感じです。
Q:なぜ人間に宗教が必要なのか?
A:宗教があるから人間は動物ではなく人間なのです。宗教がない人間は動物です。例えばエコノミック・アニマル。
の流れから、エコノミック・アニマルで話を進めていくのはレトリックのペテンだと思うけど(動物とエコノミック・アニマルはやっぱり違うよー)、学ぶところもちゃんとあった本だと思います。
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以前、当掲示板でも話題になっていた、「なぜ(本来教義的にはするはずのない)坊さんが葬式をするのか?」ですが、この点について、本書に(なかなか説得力のありそうな)説明が書かれていたのでまとめておきます。
1、クリスチャンは死ぬ際に秘蹟を受けることで天国にいけるらしい
2、しかし、江戸幕府としてはキリシタン式の葬式をされては困る
3、幕府「おい、坊主ども。おまえらで葬式やれよ」
4、坊主「ちょwww オレら葬式とかやったことねーっすよ」
5、幕府「でも、お前らも仲間の坊主が死んだら仲間内で弔うだろ? あれでいいからやれよ」
6、坊主「はぁ……、まあやれといわれればやりますけど(´・ω・`)」
7、坊主「しかし、パンピーの葬式なんてどうやればいいんだ???」
8、坊主「ピコーン! 逆に考えるんだ。パンピーを坊主にすればいいんだ!」
9、というわけで、死者を僧侶にして(戒名/剃髪)から葬式をしてる
10、お経は死者が坊さんになれるようにトレーニング
なぜ人間には宗教が必要なのか―今、日本人に一番役に立つ宗教教科書 | |
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