ピアジェの説く小児的アニミズムとは……
・子供とアニミストとの類比は正しいとは言えない
・子供が人形を生きているように扱うのは、怒り、楽しさなどのきもちの動きが原因（子供の「楽しい」と思う気持ちの動きがそういう行動を取らせている）
・自然科学の因果律ではなく、道徳的因果律（※つまり、子供は自然科学的にあれこれ考えて人形に魂を見出し話しかけてるんじゃないよ、くらいの意味か）
被験者（実験対象）のちびっこの発言例
『石は水に沈むのに、船が水の上を進むのは船の方が頭がいいから。石は自分がしなくてはいけないことをやらない』（石のしなくてはならないこと、ってのはよく分からんが、まあ子供が言うことだからよく分からなくていいのかな？？）
『太陽は光を出すから生きている』
『「ロウソクは生きていないのか？」と効くと、「ロウソクは光を出す時は生きているが、光を出さない時は生きていない」と答える』
『木は実がなる時だけ生きている』
※「石は水に沈むのに、どうして船は沈まないんだろうねー？」とちびっこに聞くと、子供は「こうだから、こうである」と、因果律的な考え方をするが、それは上記のように道徳的因果律に基づいている。
↓
『物』はその物にとってふさわしいことをする限り、ただの『物』ではない、という、いわば道徳的な因果律である。（道徳的因果律というのが良く分からないが、このページによると、どうもピアジェは因果律を17種類に分類したようで、そのうちの１つ（このページで言うと６？）にあたるものと思われる）
・これを小児的アニミズムというならば、これはタイラーの主張したように霊魂観念の誕生を意味するのではない。
・むしろ子供の場合、霊魂という意識の欠如の結果である。
・子供が物に生命を与えているのは、自分自身の内部を中心にして見ているからではない。
・自我意識が強く成長すると、アニミズムは消えてしまう。（しかし、確かに人の目に見える形では消えるけれど、家に帰った時、ぬいぐるみに「ただいま」と言ったり、花に水やりする時に声をかけたりするのはアニミズム的行為である。全くなくなる訳ではない）※思うに、『水からの伝言』は普段は胸をはって行うことのできないアニミズム的行為（水に話しかける）に対する免罪符として人気を博したのではないだろうか。
・ピアジェ『子供の感覚運動的自己中心性（※人のオモチャを勝手に取ったり）が自我と外界との間の未分化から生ずるのと同様、（小児的）アニミズムも内部の主観的な世界と物理的な世界との混同、ないし、不分離を表しているのであって、内部の心理的実在が優位となるからではない」
→つまり、遊びの楽しさが優位となって、自分と物との区別がついてないということ。
※以下、掲示板に寄せられた意見
>> いちおう発達心理学をかじったのでコメントします。
>> （でも実はピアジェはあまりよくわかんないですが）
>>
>> ピアジェは子どもの発達を、「自己を中心としたシェマ（スキーマ）の拡大」という観点から捉えました。
>> ※シェマというのは、「ボクここまでは“感覚的に”わかるよ！」という範囲…でいいのかな…
>>
>> 最初（乳児期）は、このシェマの範囲は自己の身体内に限定され、めちゃくちゃ狭いのですが（自分が腹減ったとか、ウンコついてなんか気持ち悪いとかはわかる）、
>> 外界を触って（感覚）、動き回り（運動）、すでに分かっている身体のシェマに取り込み、シェマの修正をすることで、シェマを拡大します。
>> *シェマが拡大されないうちは、自分のほかにもヒトがいて、「自分とは違う」気持ちをもっているとか、
>> ローソクや船のようなものが「自分とは違う」非生物である、ということがわからない（ので生きてると思ってしまう）状態です。
>>
>> つまり、自他の物の区別がつかないのは、「おれたのしい！だからお前のものはおれのもの！」という感情の暴発ではなく、
>> まだ自分以外の存在が自己内に取り込まれていないため、とピアジェは説明していたと思います。多分…（掲示板より）
[ファン・デル・レーウによるタイラーのアニミズム批判]
・ピアジェの批判を踏まえて、子供と未開人との類比をアニミズムにおいてなすのであれば、素朴な哲学としてではなく、生命の表現としてのアニミズム解釈でなければならない。
・人間の周囲にある対象を生命視するのは、推論の結果ではなく感情的衝動である。
cf.ヨーロッパのアニミズム的民間伝承（タイラー第７章）
・家の主人、主婦が死ぬと、そのことをハチに告げるという習慣（イギリス）
※ハチはイギリスでは身近な生物
・家の主人の訃報を、ハチの巣、飼育の動物、穀物の俵、家中の全てのものに告げるという風習（ドイツ）
→「これらが今もヨーロッパに残っている」と著作に紹介されているのだから、タイラーもアニミズムが「劣った考え」「乗り越えられるべき思想」とばかりは考えていなかったと思われる。
cf.いろんなアニミズム
身体魂：人間の身体全体を表象する霊魂
気管魂：身体の一部、例えば心臓に宿る霊魂（「オレの左手よ、耐えてくれ」など）
血液魂：血液に宿る霊魂
気息魂：呼吸に宿る霊魂（古代ギリシャでは死ぬ前に最後に吐き出した息を近親者が吸い取ったらしい）
分泌魂：汗、唾液、排泄物に宿る霊魂（「良い汗をかこう」）
陰影魂：人間、動物の陰に宿る霊魂（影踏み、影ぼうし、三尺下がって師の影を踏まず）
映像魂：肖像や水鏡に宿る霊魂（写真を撮ると魂を吸い取られる）
遊離魂：身体から抜け出して歩き回る霊魂
という感じで、アニミズムは今も結構ある。アニミズムはけなし言葉的に使われてるけど、それもどうなの？っていう話。
[現代におけるアニミズム再考]
・岩田慶治『コスモスの思想』
→アニミズムを仏教の中で見直そう
・『アニミズムとは一般には、山河大地、草木虫魚の万象の中に霊的存在、ないし、霊的な力の交流を認めようとする最も低級な宗教とされるが、はたしてそうであろうか』
・『アニミズムを世間一般に理解されているように「霊的存在spiritual being」に対する信念ないし、信仰として捉えただけえは不十分である』
・『つまり、アニミズムのカミは、一般にイメージされているようなケシツブのような微粒子であって、それが自然の生き物、無生物のどこかに潜んでいる、そう考えるべきではない』
→ここでいきなり、アニミズムのカミを「ケシツブ」とか言い出すのは意味が分からないが、どうもウパニシャッドのアートマンの絡みらしい。フルーツをどんどん細かくしていって粉になるまで細分化しても、そこから木が生えてくるよね、というアレ。ウパニシャッドでいう『どこまでも変わらぬ私』（アートマン）が霊魂だとすると私を統治するアートマンはどこにあるのか？ 身体は勝手に病気になる。だから身体にアートマンはない。心も悪いことをすると自動的に悔やんだりする。だから心にもアートマンはない。つまり、どこにもアートマンはない。無我である（我＝アートマン）。ということに釈迦が気付いて、ウパニシャッドのアートマン批判から生まれたのが仏教。
・そうではなくて、「もの」が、「生き物」が、その姿のままで、その生きた姿の全体が、すなわちカミである。（中に入っているアートマンだけがカミというわけではない）
・そうなってくると、多様な「もの」、様々な「生き物」と、カミの関係は、同じ一つのカミ（梵＝ブラフマン）の多様な表現と見ることができる。（これが梵我一如かなあ？）
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