<タイラーの要旨の復習>
『宗教に関する最小限の定義――霊的存在に関する教義を、ここではアニミズムという』(第10章 アニミズムと霊魂観念)
『宗教とは霊的存在を信ずるという最小限度の定義でよい』(同上)
※つまり、宗教の必要条件の定義。アニミズムを最小限の宗教行為とした
↑以上を押えた上でのタイラー批判
・霊魂に関する理論(=霊的存在に関する教義)は宗教の影響を受けることもあれば宗教に作用することもあるが、それ自体では宗教に導くものではない。
・さもなければ夢の中での友人との関係までが宗教になってしまう
※『霊魂の存在』を最小限の宗教とするならば、夢の中での『霊魂の行動』(夢は霊魂が身体を抜け出て別の世界で行動していると原始人は考えたであろうとするタイラーの仮説による)も宗教の世界と考えなきゃならないじゃん、くらいの意味。
・原始人は哲学者ではない
――彼らにあって理論的関心が優勢になることは決してない
⇒原始人の生活で説明原理が優先されるのか?(彼らの生活での一番の関心事は「理論的説明」なのか?)
・空腹だったり、精神的、美的、ないしは宗教的に激しく動かされている時は哲学的思考などできない。
※これには「宗教は非理性的感情に根ざしているのだ」という非合理主義主義者の前提がある。
・我々は困難に打ちのめされた、聖なるものに触れて祈ったりするとき、虚脱状態になったり、ひれ伏したりはしても、議論はしない。
⇒しかし、ヨブ記でヨブは議論してるし、アブラハムも神と交渉して値切ったりしてる(ソドムとゴモラのくだり)。まあ、とにかくこれも、「宗教は感情に根ざす」という前提があってのもの。
・アニミズムの説明は原始人の『論理』の中にではなく、『必要』の中に求めるべきである。
[必要] ハイデガーは人間を世界内存在と捉えたが、それによると人は世界の中に投げ出されている。原始人は周りの世界がもっと過酷だったはずだ。我々の内的な世界と外的な世界とが関わり合いがもてるように、受け止める『必要性』があった。※ハイデガーを知らんから正直良く分からんが、「原始人は切羽詰ってアニミズムを生み出した」くらいに理解しとけばいいのだろうか。
《アニミズムへの評価》
・ただし、アニミズムという用語を、(タイラーの言う『霊魂とは人格化された原因である(人格原因説)』というものから)『人格的に考えられた霊魂による生気の付与』と定義しなおすなら、宗教現象の報告として優れたものである。※アニミズムの成立過程や原始人の思考過程は外して評価している
↓
・宗教史上の特徴的現象(これまでこういった宗教現象の報告はなかった)
・純宗教的にも非常に重要な現象
・固有の名称を要求できる ※「アニミズム」という固有の言葉を当ててもいいよね、くらいの意味か
次はまた別の視点からのタイラー批判……
《スイスの心理学者ジャン・ピアジェの批判》※ピアジェは児童心理学者
タイラーは「アニミストと子供を類比」したが(以下参照)、それに対して批判する。
「子供が理解し始める第一のものは人であり、特に彼ら自身である。すべてのことについての最初の説明は人を本位とする説明であり、イス、杖、木馬が人格意志によって動くこと、あたかも子守、子供、猫と同じである。~~未開人の心は子供時代を示している」(『原始文化』byタイラー第7章)
※小さな子供は自分を基本として考えるから、ぬいぐるみなども「人」として扱い、名前を付けたり、話しかけたりする(物にも人格意志があって動くのだと子供は考える)。だから未開人(原始人、現代の未開人)は子供が振舞うように振舞ってんじゃね、ということ。
これに対し、児童心理学者のピアジェは「いや、そんな簡単にアニミストと子供を類比されちゃ困るよ(´・ω・`)」と批判を展開する。※両者の類比への批判であって、「アニミズム」自体への批判ではない。
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