見に行ってきたよ。客がおじいちゃんばっかりだったぜ!
***
まず、前半。山岳ベース事件、あさま山荘事件に至るまでの歴史的流れがダイジェストで描かれますが、これがキツイ。いかんせん登場人物はみんなあの独特の口調で喋りますし(アジテーション口調とでも言うべきか?)、パンピーには知りえない固有名詞もバンバン出てくるので、話の筋を追うだけでも大変です。というか、追えない。ある程度、知識のある僕でも追えないので、全く知らない人は絶対追えないと思います。
中盤は山岳ベース事件。ここで永田洋子キター! やっぱり永田はメインヒロインですね。永田が出てくると映像の緊張感がグッと増す気がします。森恒夫ではこの点がイマイチ弱い。どうも僕の中での森は永田の傀儡といったイメージがあるのです。この映画では序盤から遠山美枝子をヒロイン格に置いてて、遠山に感情移入できるよう作ってあるんですが、そんなことより永田の永田節にグッときます。「あんた、なに化粧してんのよ」とか、「あんた、なに男作ってんのよ」など、女としての嫉妬心丸出しとしか思えない彼女の言動は、ある種、悪の魅力を備えています。自分はコロコロ男を乗り換えてるのにね。
後半、メインかもしれないあさま山荘事件。でも正直、山岳ベース事件の方がインパクトでかいし、ヒロイン格の遠山は死んでるし、悪の華である永田も退場してるので、残ったメンバーには地味な印象が拭えません。実際に敵とドンパチやってるのはあさま山荘事件だけなんですが、山岳ベース事件の心の闇には到底敵わない感じ。崇高な目的が訳の分からん狂気に駆られて卑小な殺人に堕してしまう辺りが連合赤軍の醜くも美しい点だと思うのですが、あさま山荘事件はそれでも対外的な闘争なので、破滅的ではありながらもまだ現実的なんですよね。ていうか、山岳ベース事件が異常すぎるんだよな。
***
一緒に見に行った後輩は、「連合赤軍がバカに描かれすぎてる。バカがバカなことをやってバカでしたってだけなら今までの映画と変わらないので、いま敢えて連合赤軍を撮るなら、もっと新しい視点を入れるべきだ」と言ってました。まあ、確かにそれは思いますね。あれじゃ連合赤軍はバカにしか見えないもん。彼らは実際バカだったんだろうけど、バカにはバカなりの理論やら、そこに至るまでの過程があった訳で、そういうところが映画を見てもまるで理解できなかったのは確かに残念。彼らはバカだけど頭良いですからね。少なくとも過程の段階では頭良いはずなんです。日本が太平洋戦争をせざるをえなかったのも総じて見ればバカかもしれないけど、過程をつまんでいけば然程異常なことではないはず。たぶんそういうのが連合赤軍にもあると思うんだ。
とはいえ、僕としては190分間の長丁場を退屈せずに最後まで見れた点、低予算映画ながらもそれほどのショボさを感じさせなかった点を評価したいです。新しく得られるものはないかもしれないけど、当時の情感を映像で得る手段としてはアリじゃないかな? ただ、低予算のショボさは感じなかったけど、1970年代チックなノスタルジーも感じられなかった点は残念。舞台は「現代」としか思えなかった。さすがにそこまでカネは回らなかったかー。
キャストは、坂井真紀が20歳の女子大生を演じるのはいくらなんでも無理だと思った。うん、いま思い返してもやっぱり無理だよー。
若松孝二 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 | |
「実録・連合赤軍」編集委員会+掛川正幸 おすすめ平均 本書が映画のパンフレットです 外向きの暴威が目的遂行のために内部に向かったプロセス 映画を読み取るための格好のメルクマールと呼べる1冊。 Amazonで詳しく見る by G-Tools |