テニス
・オレやっぱりテニスが好きだ……
この瞬間を思い切り楽しむんだ……
テニスへのひたむきな想いが
奇跡を呼び起こす――!!
たった四行の言葉で書き表せば、あまりにチープなこれまでの経緯。これを読んだだけならば鼻で笑いそうになってしまいます。しかし、この「ひたむきな想い」とは、何も見えず、何も聞こえず、ラケットを持つ感触さえなくなった上での「テニスを楽しむ」という、それほどにひたむきな、度を越してひたむきな想いなのです。あの状況でこんな想いを持つ時点でそれは既に奇跡――! 奇跡が奇跡を呼び起こしたとて、なんの不思議がありましょうか――!
・幸村「天衣無縫の極みか。見極めてやろう」
見極めるもクソもない圧倒的な天衣無縫! ページを開いた瞬間、「あれ? ページ飛ばした!?」と思ったのは僕だけではないはず。神の視点を持つ読者ですら認識できぬ球の軌跡を、幸村少年が認識しうるはずもありませんね。
・審判「いや、見えなかったもので……」
これまで、どれほどの超人テニスを目の当たりにしながらも動じず冷静にコールし続けた審判。「審判は元プロに違いない」などと言われてきた審判までも遂にここで脱落――!
一応、モニターで確認すれば映像には映っていることから、天衣無縫の能力は「因果律決定能力」かとも思ったのですが(ポイントの決まった事実が先に決定され、その歴史は後から作られる)、その直後に「少し遅めにいくよ」と言ってることから、それも違うのかも……? 因果律決定なら速いも遅いも関係ないし。しかし、遅くした次球も審判には認識できず、結局モニター班を頼ってコールしていることから、打球のスピードとは関係なく人間には認識できない球であることは考えられます。
・嬉しそうな桃城先輩
圧倒する越前を見て、とっても嬉しそうな桃城先輩。しかし、本当に喜んでいて良いのでしょうか。確かに、この試合は勝利し、青学は全国制覇を果たすかもしれません。ですが、目の前で理解の及ばぬ試合が繰り広げられているのも事実なのです。桃城先輩はこの先どんなに努力研鑽を積み重ねても決して越前少年には勝てず、常に青学No.2、全国No.2なのです。手塚ですら努力をすればまだ勝てると思われる余地があるのに対し、天衣無縫は努力すら無駄と思わせる圧倒的テニス。これから幸村が何らかの秘密を暴かねば、もはやテニス未来の可能性は永遠に失われかねない。天衣無縫とはそれほどのテニスです。いちテニスプレイヤーとして、桃城先輩は素直にこれを喜んでいて良いのでしょうか。これについては後述――!
・幸村「集中力を高めろ、冷静になれ精市――。絶対に返せないボールなんて無いんだ!!」
負けてます! 心が負けてます、幸村精市――!! 「絶対に返せないボールなんて無いんだ!!」。そう誓った直後にもかかわらず、ボールを見失った彼の取った行動は、「背後を振り返ること」でした。ボールが見えないということは、「まだボールは届いていない」「ボールは既に後ろに飛んでいる」の二種類の可能性があるのに、幸村は背後を振り返ることにより、前者の可能性を即座に棄却してしまったのです! 幸村の心が、折れている――!!
・越前「楽しんでる?」
凶悪ッ! あまりにも凶悪――ッ! これほどのテニスを食らわしておきながら、これを「楽しめ」とは何たる無体!
最近の流れをスト2で例えるならば、プレイヤーAはリュウを操作している時に、突然目が見えなくなり、音も聞こえなくなり、レバーを握ってる感触さえなくなったけど、それでも、「オレ、スト2が大好きだよ! スト2って最高に楽しいよ!」と思ったわけです。すると、今度はプレイヤーBがゲームを始めた瞬間、いきなり「リュウ、Win」となって、「ハァ? なんでオレの負け?」と思っていたら、プレイヤーAが「な、スト2って楽しいよな?」と言ってくる。そういう状態なのです。これは裏技にしたってあまりに無体! それなのにプレイヤーAは、プレイヤーBがこれからも毎日ゲーセンに通って、100円を投じて、スト2を楽しんでプレイし続けることを望んでいるのです。スタートボタンを押した瞬間ゲームオーバーになるゲームに対し、「楽しいよね?」と同意を求めてきやがるのです!
しかし、ここで一つの根源的な疑問が発生します。プレイヤーAはそんなスト2が果たして楽しいのでしょうか――!? ええ、楽しいのです! 彼は五感を失ったってスト2を楽しめるんだから! スタートボタンを押すと同時に勝利するスト2だって楽しいに決まってるんです!
さあ、ここからです! 天衣無縫の謎に迫りますよ! ヒントは白石の「ぶっちゃけ完璧なテニスほどつまらないものはない」にあったのです。そう、完璧なテニスはつまらない。テニスの王子様に能力バトルという側面がある以上、この漫画の醍醐味は相性バトルであり、とんち合戦である訳ですが、そんなこの漫画の定義全てを破壊し、かつ、あらゆる能力バトル漫画に例を見ない、圧倒的、かつ、最強の能力、つまり、『天衣無縫の極み』とは――、
『完全完璧なテニス、弱点は特になし』
どうだァ――ッッッ!!!!!! あまりに無体! あまりに非常識! つまらない! 漫画として致命的につまらない! こんな能力が出てきちゃあ、これ以上テニス漫画は発展しえない! テニスに未来はない! しかし、テニスは最終回だァ――!!!!!!
天衣無縫の扉を開く唯一の鍵は、そう、「テニスを楽しむこと」。もう、こんなもの、テニスでもなんでもない! どう考えたってリョーマもつまらない! こんなテニスはつまらない! でも越前リョーマは楽しいんです! 五感を失い永遠の虚空の中でさえテニスを楽しめた越前リョーマに楽しめないテニスはないのです! 白石の限界は「完璧なテニス」を「つまらない」と感じたこと。「完璧なテニス」を「楽しむ」こと、それこそが『天衣無縫』の極意なのです――!
ここまで来れば、急に出てきた浦山しい太の存在意義も分かりますよね。彼は天衣無縫に目覚めた越前リョーマを見て、来週、こう叫ぶのです。
「羨ましくない! あんなテニス――、全ッ然! ちッとも! 1ミリたりとも羨ましくないでヤンス――!!!!!!」
これが人としての浦山しい太の限界。テニスの王子様、越前リョーマとの「格の違い」なのです。
バレンタイン・キッス | |
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