【11/4】第一次ダンゲロス・ハルマゲドンSS


 生徒会視点のSSです。番長視点はゆめのさんのレポをどうぞー。

 ***

「会長、オレたちホントに行かなくていいんですかね?」

 戦闘により崩れかかった生徒会室の片隅で、服部は生徒会長フジカタへと語りかけた。仲間の幾人かは既に前線へ出ているが、彼はフジカタ、ナミダ、乱回胴と共に生徒会室に残っている。ああ見えて意外と生真面目な服部は、先ほどからその事が気にかかって仕方なかった。しかし、フジカタは鷹揚な態度で部下の質問に答える。

「心配ない、服部君。所詮、相手は残り五人。対する我々は八人。それに、じき土田君と日向君も戻ってくる。そうなれば五対十だ。我々の戦闘能力はいまや番長グループにも引けをとらん。いかにやつらが魔人といえど、この人数差では為す術もあるまい」

 生徒会は一般生徒により組織された自治組織である。彼らの目的は番長グループから学園の安全と秩序を取り戻すこと。今回の生徒会と番長グループの抗争では、強靭な肉体と特殊能力を持つ番長グループの魔人たちに一般生徒は終始圧倒され、生徒会は多数の死傷者を出した。だが、戦局の終盤、生徒会に差し入れられた科学教師オオツキの特殊武器が戦況を一変した。魔人と同等の能力を持つ特殊武器を手に入れたことで生徒会は盛り返し、いまや、番長グループの魔人を残り五名というところまで追い詰めていた。

「今頃、範馬君が購買室に陣を構えている頃だ。範馬君が中盤にいれば、番長グループのやつらは一歩たりとも動くことはできん。範馬君の射程距離内に踏み入れば魔人といえど一太刀で斬り捨てられるからな。やつらが動かなければそれはそれで結構。かがみ君のガスがいぶりだすだけだ」

「そうですね……。あの二人に任せておけば、万に一つのしくじりも……」

 生徒会の戦術は即死武器を持つ範馬マキを中央に配置し、敵の動きを牽制。その隙に神経ガスを持つかがみを敵陣深く突入させることにあった。しかし――、

「…………!」

 どさりと音を立て、フジカタの目の前で、不意に乱が倒れた。床に転がった彼は顔面を真っ青に染め、陸に打ち上げられた魚のようにカプカプと口を開閉しながらながら、喉元を押え苦しんでいる。

「――っ!?」

 慌てて乱に駆け寄ろうとしたフジカタだが、強烈な眩暈と疼痛彼を襲った。そして、横では服部ががくりと膝をつく。これは――、

「チッ……。毒……か。不可視性の毒……。おそらく、番長グループの、攻撃……」

「か、会長……。どうすれば……」

「――待て、慌てるな、服部君。範馬君がいる限り、やつらは番長小屋からは出られん。魔人の力というのはそれほど便利なものではない。これほどの広範囲攻撃が何時までも続くはずがない。少しだけ耐えろ。すぐに終わる。……これは、追い詰められた魔人どもの、最後の悪あがきにすぎん……」

 フジカタの言葉を信じ、必死に毒に耐える生徒会役員たち。しかし、毒は弱まるどころか勢いを増すばかりで、ついには、横で泡を吹きながら、ピクピクと痙攣し続けていた乱回胴が、その動きを永遠に止めた。

「バカ……な。なぜ、攻撃が止まらん……! 範馬君は、何をしているのだ!」

 と、その時。前線からの報告を受けたナミダが、やはり苦悶に顔をしかめながら現われた。

「会長、範馬先輩が……、護衛の立川ともども、……戦死です。かがみ先輩も……」

 フジカタは信じられぬといった顔で、

「バカな……。あの三人がそうも易々と――!? それほどの魔人がまだ番長グループに残っていたのか!」

「報告によると、白金光留が動いたようです。三人を討ったのも、おそらくは……」

「――白金!」

 白金光留。
 発火能力を持つ魔人で、この学園を統べる女番長である。

「……白夜だ」

「はっ?」

「白夜の『ポータルデバイス』を使う。この毒が回りきらぬうちに、やつらを殺さねばこちらが全滅だ」

「し、しかし……、白夜は元魔人ですよ!」

「バカが、もはやそんなことを言っている場合ではない!」

 白夜の『ポータルデバイス』は異なるニ地点の空間を接続する。生徒会室の片隅には白夜があらかじめ残しておいたポータルデバイスの片方がある。この機器から発せられる光の中に飛び込めば、白夜が敵陣で設置したもう一方のポータルデバイスへと瞬時に移動することができる。元魔人である白夜を信用するのは生徒会には賭けであったが……

「こうなっては、最早白夜を信じるしかない! 服部君、君はここに残れ。土田君が戻ってきたら我々を追うよう伝えてくれ!」

 フジカタはそう言い残し、ポータルデバイスの光の中へと消えていった。敵陣深くに突入し、この毒素を撒き散らす元凶たる魔人を討てば、まだ生徒会は魔人たちと五分に戦えるはずであった。

 しかし――

「バ、バカな……。どこだ、ここは――?」

 フジカタは我が目を疑った。敵陣深くには違いない。しかし、どこにも敵の姿が見えぬ。白夜には、必ず敵の近くへとデバイスを設置するよう命じておいたはずだ。今回の場合であれば、白夜はこの毒素を撒き散らす魔人の近くへとデバイスを設置したはずだが……、その相手がどこにも見当たらない――!

「くう……ッ」

 空気中を汚染する毒はその濃度を増していき、フジカタの意識が遠くなる。もはや立ってはいられない。生徒会長フジカタはゆっくりと膝をつき、それからどさりと前のめりに倒れた。霞みゆく視界の中で、彼は目にした。狐面を被った、白夜の姿を。

 ――鮎坂白夜、貴様、やはり裏切ったのか……

 フジカタは目を閉じた。そして、フジカタの命が絶えた後、ポータルデバイスを通り、一人の男が現われる。遅れてきた男、生徒会役員、ロケット土田である。彼は足下に倒れているフジカタを見て、また白夜の狐面に目をつけると、

「――白夜。お前、操作されているな?」

 と、言った。事実、白夜は番長グループの魔人により操作されていた。彼の付けている狐面がその証である。

 土田は遠くに目を向ける。毒で視界も朧であったフジカタは気付かなかったが、土田の目にははっきりと映っていた。全身から発する毒素を空中に散布し続ける禍々しき大木の姿を。そして、その根元で水を与え続ける少女の姿を。

「――あれか、この毒の元凶は。しかし、この距離ではオレの体が持たぬ」

 遅れてきた分、毒の摂取量が少ないとはいえ、ロケット土田の体もやはり大木の発する毒に蝕まれている。最早長くはない。

「白夜――。敵に操作されていたとはいえ、お前の責任は重大だ。服部はオレにフジカタの言葉を伝えた直後に死んだ。ナミダも死んだ。共に帰ってきた日向も死んだ。フジカタも、ほれ、この通りだ」

 土田が足下に転がるフジカタを見る。白夜は答えない。

「このままお前を捨て置いては地獄で仲間に言い訳が立たぬ。また、敵に操作されたまま生き続けるのも不憫よ。オレの最期の力で、お前に引導を渡してやる」

 そう言って、彼は『亜空断裂式万能包丁・わかば小町』を引き抜く。

「何か言い残すことはあるか、白夜?」

 白夜は答えない。

「そうか……。オレはあるぞ! ちくしょおおおおおおお!」

 範馬マキ、戦死。
 立川トシオ、戦死。
 乱回胴、戦死。
 ナミダ、戦死。
 かがみ、戦死。
 フジカタ、戦死。
 服部怨、戦死 
 日向空、戦死。
 ロケット土田、戦死。
 鮎坂白夜、消息不明。
 生徒会、全滅。

 第一次ダンゲロス・ハルマゲドン、終了――。

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