【8/6】2007年36&37合併号のジャンプ感想(1)



テニスの王子様

 赤也少年が林田くんに見えたのは僕だけではないはず……!


・なんなんだキサマは




 イヤイヤイヤイヤ…………!

 ここの描写はスゴイですね! やー、そりゃーそうですよ、小学生がいきなり光出したら、「なんなんだキサマは!?」ですよ。まったくその通りですよ!


 いや、そういうことじゃないんでしょうけどね。

 そういうことじゃないんだけど、ここの許斐先生は巧すぎるのです。ありていに言ってしまえばダブルミーニングなのでしょうか。ここでヤング真田が言ってることは、「準優勝するくらいTUEEEEオレよりTUEEEEキサマはなんなんだ」なんですけど、「小学生の手塚が無我っている」という異常事態のせいで、「ちくしょう、なんなんだキサマは!? 明らかに人外だぞ」とも読めてしまうのです。

 手塚が無言・無表情で黙々とオーラだけ発してるのがまた恐ろしいですね。皇帝が手塚部長に抱いていたのは、ライバル心ではなくトラウマだったのではないかと思えてくるほどです。


・真田「向こうに入らんか――っ!!」

 そして、今週の問題のシーンです。結局のところ、皇帝は精神論で手塚に勝利したのですが、「想いの力で勝利する」という悪手を用いたにも関わらず、この満足感はなんなのでしょうか。

 そこのところを分析してみると、つまるところ、「想いの力で勝利することが面白かったから」なのだと思います。悪手だろうが、論理的に問題があろうが、面白ければ文句を言う気にならないという、ひどくシンプルな理屈なのです。

 では、この見開きは何がそこまで面白かったのでしょうか? 今回の「向こうに入らんか――っ!!」に至るまでの真田皇帝の描写を振り返ってみましょう。まず第一に「中学三年生のくせに異常に偉そう」という真田のキャラクター(主に口ぶり)がありますよね。これは真田のもっとも基礎的で中核的なキャラ付けです。そして、今回の試合の終盤において、彼の異常な尊大さは「バカもん、動かんかーっ、この脚が!!」と、意のままにならぬ己の肉体へと向けられます。ここで真田は、「こんなに偉そうなのに、自分の肉体一つ思うままにできない」という、いわば「皇帝の落日」とも言うべき、悲壮感を漂わせはじめるのです。

 コートを這いずる真田には、既に皇帝としての威厳はありません。日頃尊大な彼が、急激にその権威を失墜させているのです。真田がただのイヤな人なら、僕たちは「ざまあみろ」と言って終わりですが、真田は決してそんなキャラではありません(彼は別に悪人というわけではないですよね)。僕たちはそんな弱りきった彼に、皇帝としての威厳を失った真田に、一抹の寂しさを覚えていたのではないでしょうか。

 そんな失われた真田の威厳が一気に回復したのが、問題の「向こうに入らんか――っ!!」なのです。これまで他人や、己の肉体に向けられていた彼の「尊大さ」は、ここに来てボールという無生物すら対象に含んだのです。ボールに対してさえ尊大に振る舞う彼の姿に、僕たちは失われかけていた「皇帝の尊厳」を再発見します。僕は「向こうに入らんか――っ!!」を見て、呼吸が出来ないほどに笑ったのですが、ここで巻き起こる「笑い」の感情は、皇帝が己の尊厳を取り戻した、そのカタルシスに因るものも大きかったと思うのです。(もちろん、「無生物に対し尊大に振る舞う」というピントのずれた「皇帝ぶり」も、あの見開きに激しいインパクトを加えたことは言うまでもありませんが)

 つまり、許斐先生は、真田が「皇帝である」という設定をフルに活用して、今回のラストを組み上げたといえるでしょう。皇帝が威厳を失い、地に這いつくばりながらも、最後にはその尊厳を取り戻す。そのカタルシスをもって、「想いの気持ちで勝つ」という非論理を力ずくで肯定してしまったのです。


 ***

 と、まあ、長いことダラダラと書きましたが、あの見開きには要するにスカッとしたんですよ。 「皇帝カッコイイ!」と迂闊にも思っちゃったんです。「どっちのコートに入ろうかな~?」などと優柔不断に決めかねてる軟弱者のボールごときは、皇帝の恫喝に屈して当然なんですよ! 

 しかし、テニス世界において「何一つ実現不可能なことはない」と思われていた万能技術「回転」が精神力に破れたというのは、これはテニス界における一つの革命なのかもしれませんね。逆境ナイン風に言うならば、「ついに、テニスも技術体力の時代から、魂の時代へ入るのか!?」ということです。これがドンドン進んでいったら、「貴様、まだ回転などという時代遅れの技術にこだわっているのか?」「飯匙倩など、ホレ、この通り、精神力次第でいくらでも撃てるわ!」みたいなことになるんじゃないかなー。


ワンピース

 素晴らしい! 

 今週のウソップバトルは10年間のワンピースの歴史の中でも、もっとも完成度が高い一戦であったとさえ思います。このクオリティなら、そりゃあワンピースはジャンプの看板漫画ですよ! 

 今回、素晴らしかったのが、ウソップの脆弱な腕力をカバーするアイテム(インパクト・ダイアル)を読者の納得のいく形で、極めて適切に用いてくれたことです。そしてそれ以上に、そのアイテムさえダシに使って、ウソップ固有のスキルである「ウソ」を十全に戦術に用いたことです。インパクト・ダイアルをうまく使うことは確かに素晴らしいけれど、それはウソップじゃなくてもナミでもチョッパーでも出来ることです。でも、インパクト・ダイアルを使って"ウソをつく"のは、ウソップただ一人の特権なのです。

 今回のウソップバトルは、ウソップの一手一手が全て次の一手へと繋がっており、彼の行動全てに必然性を感じさせる辺りも高評価です。敵の最大攻撃をインパクト・ダイアルで防御し、その力を利用してカバ紳士を撃破。これでペローナさまに「ウソップは実は力持ち?」との疑念を抱かせた上で、彼が「10トンハンマーを扱える東の海一番の怪力」であることを信じさせているわけです。その間にゴキブリ星を挟んだのは、(分かりやすいギャグ要素を入れて、ちびっこ読者に配慮したというのもあるのでしょうが)次の「ハンマーのウソ」に備えて、ペローナさまの正常な判断力を奪うという意味もあったのでしょう。

 今回のウソップには無駄がなく、完全にペローナさまを封殺していたと思います。僕は初めてウソップのことを「強い」と認識しましたよ。たとえ彼が非力とはいえ、持ちうる能力を十全に使って敵幹部を一人無力化したんだから、ウソップは戦闘要員として十分な戦力を備えた、立派な「強者」だと思います。

 これまでは(ルフィがどれだけウソップを買ってたか知らんけど)僕はウソップなんて別にいらねーじゃんとか思ってたんですよね。たとえ、Mr.4を倒したとはいえ、「Mr.4なんてゾロがいれば一瞬で勝てるんじゃね? やっぱウソップいらね」くらいに思ってたんですよ。でも、今回で認識を改めました。彼の存在には必然性がある! ゾロやサンジには代えられない戦力なのです! その認識を改めさせてくれた点でも、今回のバトルは本当に良かったと思うのです。やっぱりバトル描写も大切だなー。

 そして、ペローナさまとの決着は、「人死にを出さない」「相手の精神を折ることで勝ちとする」という尾田先生のポリシーが、もっとも美しい形で現れた結末だったと思います。尾田先生のポリシーは漫画を描く上でものすごい足枷となっていて、現にワンピースはかなりそれに足を引っ張られてる訳ですが、それが、今回このような形で昇華されるのであれば、これは本当に素晴らしいことだと思います。尾田先生はなんてやればできる子なんだ!

 ウソップvsペローナ戦はちびっこたちには少々複雑すぎる展開と思ったのか、今週の後半にはゾロの戦いも描かれており、バランスを取るためか、こちらはシンプルかつカッコイイ直球アクションとなっています。ちくしょう! 尾田先生、そんなトコまで配慮してんのかよ! カッコイイぜ、尾田先生! 惚れるぜ!! 今回のワンピースはケチの付け所がなかったです。素晴らしい。


 ***
 
 余談ですが、個人的には、ゴキがオモチャで本当に良かったです。今週のウソップはカッコ良かったけれど、しかし、船内でゴキを一生懸命かき集めて、いつもゴキを持ち歩いてるウソップとは、僕は友達になれそうもないのです。


ナルト

・香燐「重吾と水月が寝入ったら、寝込みのサスケを襲ってやるぜ!

 この娘はサスケにとどめを刺すつもりなんでしょうか(´・ω・`) 例えば、40度くらいの高熱にうなされて寝込んでいるときに、グラマーなお姉ちゃんが裸で布団に入ってきても、「いいから、帰ってくれ」って思いますよね。いくらサスケがやりたい盛りの若者とはいえ、怪我や病気で辛い時に色仕掛けされて元気に対応できるほど、思春期パワーは強くないのですよ(※)。香燐さんも、せめてサスケが元気な時に襲ってあげて下さいね。

※……横島忠夫を除く。


・サスケ「木ノ葉は放っておけ」

「暁にしろ、木ノ葉にしろ、イタチの情報を持っているかもしれないから、待ち伏せしておけばいいんじゃないの?」と提案する香燐に対し、「いや、たぶん追っ手は木ノ葉だから放っておこう」と答えるサスケ。


 あの、それ、理屈が通ってないんですけど……(´^ω^`)


 これは、たぶんアレですね。イタチの情報うんぬんはさて置き、サスケはナルトに会いたくないんだと思います。水月が「だとすると、待ち伏せしても時間の無駄になるね」と納得したようなことを言っているのは、たぶんサスケが以前に「実はオレ、木ノ葉のやつから、悪質なストーカー被害を受けてるんだ……」と彼に相談していたからでしょう。それで水月も事情を汲み取って、サスケが木ノ葉と接触しないよう話をあわせてくれたのです。

 では、なぜ香燐だけが、こんな空気の読めないことを言い出したのかといえば、彼女にはサスケも相談していなかったからだと思われます。なぜ、香燐だけがサスケの相談を受けていないのかといえば、彼女自身も悪質なストーカーに他ならないからです。


To LOVEる

・着衣消滅ガス

 なんなんだ、この漫画は……。

 特に何もしなくても、「大宇宙の意志」により全裸になるララに対し、わざわざ「着衣消滅ガス」などという全裸アイテムを取り出したルン。To LOVEるは、スケートで転ぶだけで女の子が全裸になる世界だから、「着衣消滅ガス」など使えば何の問題もなく当たり前に全裸になりそうなものですが、何故か今回に限り、ララは全裸の魔の手から逃れることができたのでした。

 つまり、To LOVEる世界では人間の悪意によって女の子を全裸にすることはできないけれど、「大宇宙の意志」はいくらでも女の子を全裸にすることができるということです。古手川さんの登場により、「エロを抑え付けようとすればエロい目に遭う」というTo LOVEる世界の法則が発見されたわけですが、「エロを促進しようとしてもエロいことにはならない」という法則も、また明らかになったわけです。(※)

 ですから、To LOVEる世界の一般的住人たちは、特にエロを抑えるでもなく炊き付けるでもなく、ごくごく普通に平凡に真面目に生きていれば、周りの女の子が何もせずとも勝手に全裸になるということではないでしょうか。大宇宙はそのような世界を望んでいるのです。なんて天邪鬼な世界なんだ。

※ラコスポのことは都合よく無視しました。


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