【4/19】テニスの王子様は果たしてギャグ漫画なのか?


 先日、ラジオをご一緒したリンドウさんが、まとめ的なエントリーをアップしていました。さて、そこで本日お話したいのは、「テニスは果たしてギャグ漫画なのか?」ということです。

 リンドウさんも『「テニスの王子様はギャグ漫画です」といちいち括弧書きするような風潮を遺憾に思う』と言ってますし、No.5も事あるごとに「かがみさんは、早くmixiの『ギャグ漫画テニスの王子様』から退会すべきだ」と言ってくるんですが、個人的な見解を言わせて貰えば、テニスはギャグ漫画と考えて良いかと思います。もっと正確に言えば、「ギャグ漫画と捉えることも間違いではない」と思います。

 で、こういうことを言うと、No.5は「じゃあ、かがみさんはシグルイもギャグ漫画というんですか!?」と怒るんですが、僕はシグルイをギャグ漫画と思わないけど、でもそう感じる人がいても間違いではないと思うのです。ここから先は、テニスがギャグかどうかと言うよりは、むしろ僕たちがギャグ漫画をどう定義しているかという話になります。

 僕のスタンスでは、そもそも作品の価値というものは、作り手ではなく受け取り手によって発生します。ピカソの絵は世界中の誰も評価しなければ落書きです。しかし、評価したから芸術なのです。その作品自体に良し悪しという価値は内在しません。同じように、テニスもテニス自体に「スポーツ漫画」や「ギャグ漫画」というカテゴライズは存在しないと考えます。

 では、テニスを受け取る僕たちのスタンスはどうなのでしょうか? みなさんのことは知りませんが、僕は毎週「笑える」ことを期待してテニスを読んでいます。「笑える」ことを期待してテニスを読むスタンスが間違いだとは言わせません。僕がどういうスタンスでテニスを読もうとそれは僕の勝手だからです。そして、「笑う」ことを期待して、そういうスタンスで読む漫画は「ギャグ漫画」に分類されると僕は考えるのです。

 僕がなぜシグルイをギャグ漫画と考えず、テニスはギャグ漫画と考えるのかというと、シグルイは笑うことを期待して読んでいないからです。期待はしなくても結局読めば笑うんですけど。二輪とか、鯉を食べてる虎眼先生とか、丸太にぶら下がってる牛股師範とか、シグルイも笑いどころの宝庫です。笑いどころの宝庫ですけど、でもシグルイを読むときには、「よし、笑わせてもらうぞ」という心境では読まないのです。しかし、テニスは「今週も笑えるかなーワクワク」という心境で読みます。そういった「心持ち」の違いで、僕はギャグ漫画か否かを考えています。

 少し話が逸れますが、なぜ僕たちがテニスやシグルイを見て笑うのかは良く分かっていません。No.5は「圧倒的な恐怖により笑うしかないから」と分析していますが、あれは恐怖の感情なのでしょうか? そのような気もするし、違う気もします。ただ、テニスやシグルイなどの「笑う状況」を取り上げてみると、「僕たちの論理的思考、つまり想像できる範囲を超えた、大掛かり(オーバー)な状況が展開されたとき」に、どうも僕たちは笑うようです。この時の感情は、確かに恐怖と言えるかもしれません。しかし、シンクロの笑いは恐怖な気もしますが、二輪の笑いは恐怖なのでしょうか。微妙なところです。

 ところで、Wikiによれば初期の漫画はユーモアやナンセンスなど、笑いの要素を含んでいることが当たり前だったらしいです。いわば、漫画=ギャグ漫画といった認識だったのではないでしょうか。そこから、ギャグを抜いてシリアスな話に限定したのが劇画だそうです。ですが、劇画が笑えないかというと全くそんな訳はなく、「野望の王国」なんて笑いっぱなしですよね。小池一夫先生の作品も笑えます。劇画を読んでて笑う時も、やはり「想像を超えるオーバーな展開」が起こったときですから、テニスやシグルイの笑いは、劇画のそれに近いのではないでしょうか。ギャグを抜いたはずの劇画が笑えて、テニスやシグルイの笑いがそれに近いということは、つまり、テニスやシグルイは従来僕たちが考えてきた「ギャグ」の範疇には収まらない、新たな「笑い」を含んだ作品だということです。

 ちゆちゃんも、「以前のちゆニュースで、「テニスの王子様」をギャグ漫画と括りましたが、より厳密に言えば、ギャグ漫画のような楽しみ方もできるCOOL漫画という新ジャンルなのだと思います」と書いてますが、これはおそらくそういうことではないでしょうか。リンドウさんやNo.5が、テニスをギャグ漫画と括ることに抵抗があるのは、おそらくここに違和感を感じているからでしょう。テニスは確かに従来のギャグ漫画とは違うのです。

 そこで、また僕の主張に戻るのですが、確かにテニスは従来の意味でのギャグ漫画ではないけれど、だからといって、ネオギャグ漫画とか新しくカテゴリーを作る必要はなく、これはむしろギャグ漫画が示す範囲を拡大させて考えた方が良いのではないかと思うのです。先述の通り、「笑いたいと思って読む漫画がギャグ漫画」というギャグ漫画解釈です。もちろん笑うことを期待して読んだ漫画に、感動的な泣けるエピソードがあれば泣けばいいのです。笑うことを期待して読んだからといって、笑い以外の感情をシャットアウトする必要はありません。テニスをギャグ漫画と捉え、笑うことを期待して読んだ結果、笑い以外の感情が起こって構わないのです。テニスをバトル漫画として楽しんでも良いのです。ギャグ漫画とカテゴライズすることは、テニスの価値を狭めることと同義ではありません。カテゴリーなど所詮その程度のものであり、大切なのは僕たちが何を感じるかなのです。

 ただ、リンドウさんやNo.5の懸念も良く分かるところで、本来スポーツ漫画と認識されていたテニスを「ギャグ漫画」とカテゴライズすることには、「天然でアホなことを描いてる許斐先生を笑う」というネガティブなイメージが付きまといます。そこで実際より低くテニスを見られてしまうのではないかと危惧する向きはあるでしょう。こればかりは断言できますが、許斐剛は既に笑われる作家ではありません、笑わせる作家です。未だ天然な部分もありますが(主に絵のヘタクソさ)、その「笑い」の多くは計算して行われています。許斐先生の天然だけを楽しもうとする人は、許斐先生の才能やセンスを楽しむ機会を逸しかねない訳で、その先入観は止めた方がいいし、いい加減自力で気付いてもいいと思いますね。

 というわけで、個人的にはテニスをギャグ漫画にカテゴライズしても構わないと考えています。しかし、ここまで書いておいてなんですが、本来カテゴライズなどということには大した意味はないんですよね。実際に僕やリンドウさんやNo.5などは、「テニスは**漫画だから」という話などしたことがなく、カテゴリーなどテニス未読者にテニスを説明するための方便でしかないのです。「ギャグ漫画」と言わないなら、「テニスをしているとにかくすごい漫画」としか言えないわけで、それなら「ギャグ漫画が一番近いかなあ」という程度です。実際のところゲートウェイはどうであれ、後は読んだ人の判断に任せるしかないとも思うのです。


結論:テニスの王子様の笑いは従来定義されているギャグではない。その意味ではギャグ漫画と考えることは不適切だが、「笑うために読む漫画」を「ギャグ漫画」と定義し直すならば、読み手によってはギャグ漫画の範疇となる。「カテゴライズしない」か、「副作用はあるがカテゴライズする」かの二択であり、「ギャグ漫画」を広義の意味で捉え直した上でカテゴライズするのが現実的ではないだろうか。でも、別にカテゴライズしなくたって、少なくとも僕らは困らないよね。


後記:今日のエントリーは我ながらあまりよろしくないですね。せっかく書いたのでアップしますけど。「そもそも作品をカテゴライズする必要があるのか、そのメリットとデメリットは?」という、テニスとは関係のない次元に、今回の問題があると思いました。
 
 


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