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これは、劇場版テニスの王子様の一幕、リョーマvsリョーガの激戦です。さて、ここで質問です。この劇中で最大の硬度を持つ物質はなんでしょうか? そうです、テニスボールですね。火中に投じられ、津波に打たれ、成層圏まで打ち上げられても、なお形を保つ脅威の物質。それが作中最硬テニスボールです。
繰り返します。テニスボールは「テニスの王子様」において最硬の物質です。明らかに想定外の使われ方をしようが、人も吹っ飛ぶ波動球を打たれようが、決して壊れません。ガットはたびたび破れたけれど、テニスボールが壊れたことは一度もないのです。テニスボールは最硬なのです。
そんなテニスボールが、今週割れました。地味な描写だったかもしれません。拍子抜けと思ったかもしれません。でも、よく考えればそんなことはないのです。今まで何があろうと、何をしようと壊れなかったテニスボール。それが真っ二つになったのです。百八式波動球を超える最大威力の打撃と、無我の深奥「天衣無縫の極み」、この二つが揃って、ついに、誰もなしえなかった「ボール破壊」が実現したのです。地味な描写と思われた今週の「ボール真っ二つ」ですが、しかして、その実態は紛れもない「最大威力描写」だったのです!
と、ここまではお気付きの方も多いでしょう。では、ここからさらに一歩、先へと論を進めます。はたして、なぜテニスボールはこれほど硬かったのでしょうか?
今まで、どんなムチャをされても決して割れなかったテニスボール。それを見てきた僕たちは「テニスボールは割れないのだ」と思い込んできました。「みんなのテニス次週予想」にも、「テニスボールが割れる」という予想がなかったことからも明白です。テニスボールが割れないことは僕たちの予想の前提条件であり、テニスボールが割れることは想定の範囲外、考えられない出来事だったわけです。僕たちは今回も「テニスボールが割れることはない」と思い込んでいたのです。逆説的な言い方になりますが、僕たちの「テニスボールは割れない」という思い込み、つまり、僕たちの心が、テニスボールという物質を最硬たらしめていたのです。
しかし、テニスボールは割れました。割れるはずのないテニスボールが割れました。「割れるはずがない」と思い込んでいた、僕たちのテニスボールが割れたのです。許斐先生はテニスボールを割りました。しかし、許斐先生は、ただテニスボールを割っただけではありません。許斐先生が割ったのは、テニスボールという名の僕たちの心なのです。