※GyaOで放映中。3月31日まで。オススメ。
クローネンバーグ作品。デヴィッド・クローネンバーグという名前を聞いて、僕が思い浮かべるイメージ、つまり、意味不明でグチャグチャでグロテスク。そんなイメージそのまんまな作品でした。裸のランチみたい。
以下、ネタバレ注意。
本作が評価できるのは、ゲームハードが生モノであるという、現代のゲームの常識からすると3段階くらい飛躍した世界が描かれていて視聴者を思いっきり置いてけぼりにしつつも、最終的にはTRPGの進化段階みたいな1.5段階くらいの地点に立ち戻るところ。これにより、ワケの分からん世界を思いっきり作り上げながらも、最終的には半ば強引に視聴者を想像の範囲内に引きずり下ろされるので、リアリティがギリギリ損なわれないところかな。リアリティが本質かどうかは問題だけど。
ゲーム内の物事に関しては言及しようと思えばいくらでも言及できます。たとえば、ゲーム内で犬が銃を加えて運ぶシーンは、これが現実における主人公たちの「それからの行動」を示唆してるものでしょう。主人公たちの脳内の予定がこのTRPGに反映されたというところかな。明らかにアナルプレイとしか思えないゲームポッド取り付けが、この主人公・ヒロインの間の(実際の)性関係を象徴していると読み取ることもできます。さらに、ゲーム中で本当はアンチゲームのはずのヒロインが「ゲームだから気に食わないやつは殺してもいい」と発言するあたり、現実世界におけるラストの殺人とシンクロして、気の利いた皮肉となってます。「現実でもお前は気に食わないやつを(ゲーム開発者を)殺しているだろう」と。一見するとアンチゲームな映画だけど、そこを踏まえるとクローネンバーグはアンチゲームではないと読み取れるかも。メッセージとしては「キチガイはキチガイ」くらいかな。
とにかく、ラスト5分を迎えるまでは腹が立つほど置いてけぼりで、クローネンバーグの映像センスに酔う(悪酔いも可)しかないのだけど、ラストに至って遡って全ての映像に意味づけがもたらされるという、非常に作りこまれた作品で、「本気で見るなら」良い映画と言えるのではないでしょうか。何度も楽しめそう。ポイントは「プレイヤー(主にヒロインか?)の思惟の集合がゲーム内ゲームである」こと。
逆に軽く楽しみたい人は、映像センスに何か感じるところがないと本当に見所のない映画かも。かなりグチャグチャしてるので、人によってはごはんを食べながら見るのはきついかもしれません。
最後に。ヒロインがジェニファー・ジェイソン・リー。高校生の頃に「ルームメイト」見て、「なんてキレイな人なんだ」と感動した女優さん。今回見てて「誰か分からないけど、キレイな女優だなあ」と思ってたんですが、まさかリーだったとは。自分の好みが変わってないことを確認しました。ちなみに、この時のリーは37歳。20代中盤にしか見えなかったよ。若いなあ。