結論から言うとイマイチですね。何が悪いってタイトルが悪かったんじゃないかなぁ。アニメシリーズの鉄人28号はケレン味溢れるGロボやGガンと違って、今川監督作品とは思えないほど淡々とした作りなのですが（面白いけどね）、テレビシリーズを元にして作られたこの映画もやっぱり同じ方向性なのです。
で、問題は副題の「白昼の残月」です。「白昼の残月」なんて銘打たれたら、僕たちはどうしてもGロボの方向性を期待しちゃうじゃないですか。「鉄人28号と白昼の残月が超人的変態対決！？」みたいなのを期待しちゃうじゃないですか。ないんですよ、それがー。
白昼の残月はGロボに出てきた学帽の変態ではないし、あんなカッコイイ走り方しないし、超人でもなんでもないんです。いや、そんなタイトルだけで勝手に期待した僕が悪いことは分かってますよ。でも、やっぱり期待するじゃないですか。十傑集の白昼の残月の中身がアレだと考えると、まあ、それはそれで色々想像できて楽しいですけど、でもせめて見た目だけでも似せて欲しかったなぁ。超人じゃなくてもいいから、最後にあの格好だけでも見せてくれれば、それだけで会場は沸きあがっただろうに、とてももったいないです。せっかくクロスオーバー匂わせてるんだから、そのくらいあざとくファンサービスして欲しかった。
白昼の残月への憧憬はさて置き、ストーリーも乗り切れない感じです。全編に渡って「良く分からない」「把握しづらい」という感が拭えません。いまどういう状況なのか、どのような危機に面しているのか、誰が誰に対しどういう感情を持っているのか、などなどとにかく掴みづらいのです。話自体はたぶん良い話なんだろうけど、しかし、伝わらないと意味がない。
冒頭では、登場人物の紹介をスッ飛ばし、正太郎の兄登場をナレーションで終了させるという物凄いはしょりっぷりを見せます。「見に来た人は当然みんな分かってるよね？」という前提で大事な部分をこれだけはしょったのだから、さぞ本編は濃密なんだろうなと思わせて、案外そうでもない点も残念。尺を稼ぐため、説明ナシでバッサリ切っちゃうのも悪くないと思うんですよ。でも、その割には内容が薄かったような。宴会シーンに時間を使いすぎだと思う。それと、ワンピースばりの不死身っぷりも残念なところ。こいつら撃たれても全然死なないよ。
あと、今川版テレビシリーズと密接すぎて、テレビシリーズ見てないと厳しいです。僕は見てたけど良く覚えてないからやっぱり厳しい。ビッグファイア博士やベラネード財団なんて何の説明も入らないから、見てない人には本当に分からないし、見てても情報少なすぎてなかなか思い出せません。本気で楽しみたいならテレビシリーズ復習必須の内容です。テレビシリーズを見た後に、最後のお楽しみとして映画を見るのがたぶん正解かと。
鉄人は"例によって"たいして活躍しないのですが、それはしょうがない、鉄人だもの。怪ロボットとの戦闘はカッコ良かったですが、それは重要なシーンに絡みません。戦闘はあくまで過程の一つです。ラストに鉄人が強敵を打ち倒して、「ヤッター、カタルシスがバリバリだぜー」みたいな展開にはならないのです。映画というのは「いつも最後に強敵に打ち勝たなきゃいけない」というわけではないですけど、ライバル不在、強敵不在というのは映画として明確なハンデですね。今回はそのハンデを全然乗り越えれてなかったと思う。
まあそんな感じで手放しでは誉めれない内容だったんですが、それにしても返す返す残念なのは残月！ いろいろ置いといて、彼があのコスチュームを最後に披露するだけでまったく印象違ったのに！ 何の意味もなく大鉄人の中にあのコスチュームがあって、何の意味もなく着てくれるだけで僕は泣いただろうに。その点は本当に残念です。
