島本和彦先生の野球漫画「逆境ナイン」の映画化作品です。
同じく野球漫画原作の映画版「地獄甲子園」と比べると、こちらは原作の「地獄甲子園」が完成されすぎていたために、何をやっても改悪にしかならなかったのに対し、「逆境ナイン」には良い意味で内容に余裕があり、それが映画化に決定的な違いを与えていたと思います。
映画化は単行本6冊の内容を2時間弱に収めなければならないのですが、逆境ナインは省ける箇所が結構多いんですね。もちろん省いた箇所もそれはそれで勿体無いんですが、しかし、省いたり内容を変えたりしても、逆境ナインはそれほど大きく破綻しないのです。この映画では大事なところはしっかり押さえつつ、さらに映画独自の要素を入れてますが、「オイオイ、これを省くなよ」とか、「こんなオリジナル要素入れるためにアレを削るなよ」といった不満点がほとんどありません。周辺部分を切り取って、中心だけ残し、物語をスッキリさせた感すらあります(周辺部分は周辺部分で面白いんだけどね)。原作のダイジェストに終わることなく、しっかり消化して再構築できた成功例と言えるでしょう。
映画のオチに関しては、これは賛否両論あるだろうけど、個人的には良い仕事と思います。わざわざ一回ベタな大団円を入れておきながら、蛇足といわれても仕方ない、酷いオチで締めているのです。最初に入るベタな大団円は本当にベタでくだらないので、あまり映画を見ない人ならこれでも感動できるかもしれないですが、ちょっと映画を見慣れてる人なら、「またこんな終わり方か。クソくだらねえ」と思うところでしょう。しかし、この映画は、一度大団円を迎えておきながら、わざわざそれをブチ壊して終わっています。しかも、その「ブチ壊し」が今作のテーマである「逆境」に立ち戻っているため、テーマの明示にも繋がってるんですね。物語の締めとして安易でなく、かつテーマを明確に示して終わっているのです。これには作り手の魂を感じます。でも、それに気付かなかったら、単に感動ブチ壊しで後味悪いだけのラストなんですけど。
物語構成要素の取捨選択、オリジナル要素の加味、魂のこもったラストと、総じて良作と呼べる映画だと思います。でも、とても素晴らしい映画かというとそれほどでもない。70点くらいの映画かなー。けど、見てもいいと思います。堀北真希がかわいいから。
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ところで余談ですが、島本先生は本当に透明ランナー制があると信じてたみたいです。あれは逆境ナインの一大ギャグだと思ってた。