現代科学とは縁のない暮らしぶりながらも、やたら天文学的知識に秀でているため「実は宇宙人と接触したんじゃないか」と一部の業界で評判のドゴン族が来日です。ぽちょさんに誘われて仮面舞踏に行ってきました。
今回の彼らの舞踏は、何でも死者が出たときに葬送として舞うものらしいです。さて、どんな厳粛な儀式かと思い見てみますと…………めっちゃダンサブルです。太鼓をポコポコ鳴らしながら、ドリフみたいに踊ってます。ひげダンスみたいです。「いえい、いえ~い」って感じでとっても楽しそう。てか、これ踊りながら故人を悼むことできるんですか!?
あと今回の見所の一つが、彼らの宗教観を体現した様々な仮面。事前の解説によると、神が最初に創った動物である猿の仮面もあるそうですよ。お、そんなこと言ってたら早速猿が出てきましたよ、どれどれ…………めっちゃかわいいです。まるでソフトビニール人形みたいな着色済みのおさるが頭の上にちょこんと乗っかって出てきました。猿だと言われなければそう認識できないくらい荒々しく刻まれた木彫りの猿なんてものを想像していたので、すごく肩透かしくらった気分です。いや、ホント、そこらのお土産屋で「見ざる言わざる聞かざる人形」を買ってきて取り付けたんじゃないかというくらいです。ぜんぜんアフリカっぽくありません。
それに衣装もすごく派手。基本はショッキングピンクです。あの、これ、自然の染料とかで出る色なんですか……?いや、まあ踊ってる時は綺麗なんですけどね。あと、衣服とかって端っこがもっとボロボロだったりするのかと思ってたら全然普通ですよ。ちゃきっとしてます。すごく綺麗。新品卸し立てって感じ。これもやっぱイメージ違うなあ。
そして何よりこの人たちすげえ場慣れしてるんですよね。歌を歌う人の前にはマイクがあったんですけど、「マイクなんて使うの初めてだろ。ちゃんと声入れれるのかな」とか思ってたら、めちゃくちゃ慣れた手つきでマイクを掴んで、完璧なマイクパフォーマンスですよ。さらに、その人は観客にクラップハンズを求めたり、客を煽ったり、サムアップして帰っていったり、とてもじゃないけどアフリカ現地住民の伝統芸能なんて信じられない!れっきとしたショービジネスですよ!ちなみに、この人はマリ共和国を代表するポップシンガーでもあったらしく、ちょっと納得。村人たちは確かに外部の人に今まで見せたことはないんですけど、日本に来るまでにちょっとだけ練習してきたみたいです。
というわけで、結論としては「すごくそれっぽくないイベント」でした。「アフリカの奥地まで行かなきゃ見れない仮面舞踏が5000円で見れるなんてお得だぜー」とか思って見に行ったんですが、なんか普通のライブを見ただけの気分です。現地で演じられてるものが見れたとはとても思えない。帰りにぽちょさんとも話してたんですけど、つまり「××族が日本に来る!」とかの場合は、もう日本に来た時点で、本来のそれは見ることは出来ない、と。日本に来るということ自体が伝統芸能を商品化するということであり、そうなれば絶対に異質な物に変化してしまうということです。
また、僕たちの姿勢としても「『プリミティブな物が見たい』と思うその時点で文化に対する誤解が始まっている」との結論に。文化相対主義の問題点にも通じるものですが、つまり「**族の文化は僕たちの文化と比べると科学的には劣っているように見えるかもしれないけど、アレにはアレの合理的側面があるのだよ」みたいな姿勢で他文化を見る時点で、その文化を自分たちの物差しで位置付けしてしまうということでしょうか。うん、これに関しては正直良く分からん。正直手に余る。
まあ要するにですね。ドゴン族の仮面舞踏のホンモノが見たければ、アフリカの奥地まで自分で出向いていって、コッソリ彼らの儀式を盗み見るしかないんですよ。フィールドワーク超大事。今回みたくショービジネス化したものは見る価値が全くないとは言わないけれど、もしあくまでホンモノが見たいなら、手段は結局それしかないかと。5000円は勉強代ってことでオッケーです。繰り返します、結論「フィールドワーク超大事」。