「ペルソナ3」は主人公が打算まみれの高校生活を送るRPGです。
『主人公、仲間に出し抜かれる』
「正直、やってられないスよ。いやね、うちのリーダーのことなんスけどー。あいつ、先輩からリーダーに選ばれてチョーシのってんスよねえ。オレたちがタルタロスで稼いだカネって、あいつが一括管理してんスよ。『お前らの装備はオレが見繕ってやる』とかいって。で、確かにタルタロス行く時は新しい武器とかくれるんスけどね。それはいいんスけど、あいつ、実はそのカネでラーメン食ったり、女へのプレゼントとか買ってるんスよ。武器防具は作戦前日に余ったカネで買ってるだけなんス。しかも、そのことに文句言ったら『オレには魅力が必要なんだ』『オレに彼女ができることが、ひいてはお前らのタメになるんだ』とかワケわかんねえこと言い出すし。でも、あんまり文句言ってると、タルタロス連れて行ってくれなくなるしなぁ…。え? なんで、そんなにタルタロスに行きたいかって? それなんスよ、実は……」
「僕は先輩にはほとほと愛想がつきましたよ。最初は小学生の僕も戦力として数えてくれる、頼りになるお兄さんだと思ってたんですけど、ホントはとんでもない人なんです。あの人、最初は刀とか弓とか使ってたんですけど、試しに槍を使ってみたいっていうから僕のを貸してあげたんです。そしたら、槍が気に入っちゃったみたいで、返してくれなくなって……。信じられます? 高校生が小学生のものをとったんですよ? 月が変わってやっと僕の槍を返してくれたと思ったら、自分はすっごい強そうな槍を新調してるし…。しかも、『キミの槍では今日のタルタロスは厳しいから居残りね』とか言って連れてってくれないんです。『お前の槍を貸せ!』って言いたいですよ。大体、あんな人がお金の管理をしてるのが間違いなんです。あーぁ、タルタロス行きたいのになぁ…。え? なんで、そんなにタルタロスに行きたいかって? 実は……」
「リーダーにはみんなすっかり幻滅してますよね……。確かに私はバックアップ担当で前線で体を張ってるわけじゃないです。でも、それでも私も仲間の一人には違いないじゃないですか。それなのにリーダーは私には何一つ装備を買ってきてくれないんです。以前、美鶴さんはバックアップ中にシャドウに襲われましたし、私も最低限の装備は必要だと思うんですよね。でも、何度言っても聞いてくれないんです。だから、私、最近ムカついちゃって。リーダーに気のあるフリして接近して、私のお弁当食べさせたんです。ぞうきんの絞り汁でダシを取ったり、生ゴミから食材を調達したりした特製のお弁当です。あれを食べた時のリーダーの顔、みんなにも見せてあげたかったなぁ。私のお弁当、猫にあげたら悲鳴をあげて逃げましたからね。相当キツかったと思いますよ。あ、私、元イジメられっ子だったから、こういう陰湿なのは得意なんです。あーあ、それにしてもみんなが羨ましいなぁ。私もタルタロス行きたいのにー。え? なんで、そんなにタルタロスに行きたいかって? 実は……」
「正直やってられないであります。ある日、リーダーが『今日は影の破片を探そうと思う。オレは階段で待機してるから、お前らは各自宝箱を探しに行け』と命令したであります。私たちは嫌々探したであります。それで、必死にアイテムを回収して階段まで戻ると、リーダーは退屈そうに(天田くんから取り上げた)槍を振り回して遊んでるだけであります。しかも、私達が探してきたアイテムは没収であります。やってられないであります。でも、リーダーは気付いてないであります。実は……」
「ワンワン!(実は個別探索中に拾った現金はリーダーに内緒で僕たちがガメてるワン。リーダーはそうとも知らず『よしよし、順調にお金が貯まってるな』とか思ってるワン。でも、ホントはみんな自分の財布にしまいこんでるワン。命懸けで冒険してるんだから、このくらいの当然の役得だワン。それにしても、結構この稼ぎがバカにならないワン。リーダーみたいに武器や防具を買わなくていい分、自分の好きなことにお金を使えるワン。先月はこのお金で国産牛を買ったワン。そうとも知らず、リーダーは『ほれ、コロ、骨を手に入れてやったぞ』とかいって骨をくれるけど、こんな得体の知れない骨いらないワン」
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というわけで、「タルタロスで個別探索」→「仲間が宝箱からお金回収」→「( ゚Д゚)ウマー」計画は見事に頓挫しました。なんか一向にお金が増えないと思ったら、あいつら見つけたカネ全部ガメてやがったよ。売っても二束三文にもならないアイテムは渡してくるくせに現金は自分の懐かよー、くそったれー。