今日は戦前戦後の教科書を漁りに教科書図書館に行ってきました。ホントは教科書で本一冊書こうと思ってたんだけど、それは断念。でも、いくつか面白いものを見つけてきたよ。
1、戦後から昭和30年くらいまでの小学校の理科・社会の教科書は、物語調で書かれている。
今の教科書みたいにたんたんとした客観的記述ではなく、登場人物がいて会話をかわしたりしながら、理科や社会の知識に触れていく形式となっています。
『4年生の理科 下』(昭和29年)
おとうさんはよしおのへやへいきました。ちゅういしてさがすと、いえだにが、何びきもはっています。そのもとを、あちらこちらさがして、とうとうつきとめました。それは、天じょううらのねずみのすなのです。
おとうさんは、ねずみのすをとりはらい、そのあとへ、D・D・Tをいっぱいふりかけました。
上記の通り、物語の中でイエダニやねずみなどに触れています。しかしこれ、単なる理科というよりは公衆衛生にまで踏み込んでる気がします。
2、地理は「いかに日本の形がカッコイイか」から始まる
戦時中の地理教科書では「いかに日本の形がカッコイイか」という説明から始まります。アジア大陸を代表して太平洋に突き出しているとか、これはもう神が与えた国としか思えないとか、まずそんなことが書かれています。「国土がカッコイイ」って、今ではなかなか持ち得ない美的観点です。
あと、教科書にはアメリカ、ヨーロッパ大陸に関する記述がありません。中国、台湾、シベリア、ハワイあたりはあるんですが、なぜかアメリカやヨーロッパはスルーしてます。また、地理というより民俗学にまで踏み込んでいて、「どこそこには食人の風習が残っている」とか、「この地の人たちは暗闇に幽霊がいると信じて、夜も灯りを消さない」など、現代では小学生に絶対教えないようなことも記述されてます。
3、ハワイは日本の島扱い
『初等地理 下』(昭和18年)
元来、日本人の数は、ハワイ諸島全体にかけて百六七万人に及び、全人口の約四割を占めている上に、農業・水産業を始め、多くの産業は、ほとんど日本人の手によって行われていますから、ハワイ諸島はいわば日本の島と見ることができるのです。
ムチャクチャ言ってます。今の韓国みたいです。戦中のことを省みると、あんまり人のこと言えなくなりますね……。でも良い方に考えれば、韓国もそのうち正気にもどって竹島返してくれるかもしれません。
4、軍国ラップ
『ヨイコドモ 下』(昭和16年)
日本ヨイ國 キヨイ國。
世界ニ 一ツノ神ノ國。
日本ヨイ國 強イ國。
世界ニ カガヤクエライ國。
すごく韻踏んでます。かなりのライムフェチです。
5、戦時中の修身教科書が普通にこわい
『初等科修身』
「十一 にいさん」
うら庭で、にいさんといっしょに、するせんのいもを植えていると、何だか、家の中がにぎやかになりました。
やがて、しょうじがあいて、
「やあ、なかなか精が出るね。」
と、おじさんの声がしました。いとこの健ちゃんも、にこにこしています。
おかあさんが
「きりのよいところでやめて、うちへおはいり。」
といわれました。
ぼくは、にいさんと、そこらにちらばっているわらぐつをかたづけて、うちへはいりました。
おじさんが、
「どうだ武男君。足の方は。」
といはれますと、にいさんは、
「たいしたことはありませんが、まだ、ちょいちょい痛みます。」
といいました。ぼくは、にいさんのふじゆうな足の方を、そっと見ました。
にいさんは、戦地で左の足にけがをして、長い間病院にいましたが、もうよくなったので、この間、かえって来たのです。
おじさんは
「だいじにするんだね」
といわれました。
「ええ、そうして、もう一度戦地に行ってはたらきたいと思います。」
と、にいさんは元気な声でいいました。
「そうだ。その気持ちが大切だ。戦地へ行かない者も、みんな、にいさんと同じ気持ちで、しごとに精を出して、りっぱに御奉公しよう。」
と、おじさんはいわれました。おかあさんが
「今度は進や健ちゃんが、兵隊になる番ですね。」
といわれたので、ぼくは、健ちゃんと顔を見合わせて、思わずにっこりしました。
すごく、こわいです。