昨日のJASRACの話の続きです。
判決文なるものがあったので読んでみたのですが、これがもうげっそりする難しさで、いや別に文章が難しいわけじゃないんですけど、読み慣れてない人間にはかなり苦痛な内容でした。ただ、頑張ってある程度読んだところで、いくつかの点で読売新聞の記事はちょっと反JASRACすぎると感じました。読売新聞の記事では、ライブカメラ設置以前は著作権侵害してたけど、設置後は侵害してなかったのにピアノ没収された、という感じを受けますが、どうも判決文によれば(あくまで判決文によれば)設置後もデサフィナードオーナー側(以下、オーナー側)は著作権侵害をしてたかもしれないようです。つまり……
「カメラ設置前は侵害してた→設置後は侵害してない→これから侵害するかもしれないからピアノ没収!」→「JASRACひどい!」
「カメラ設置前は侵害してた→設置後も侵害してた→これから侵害するかもしれないからピアノ没収!」→「うん、そりゃ侵害するかもな」
というわけで、心象は全然違ってくるわけです。ただ、その辺りの事実関係が判決文を読んでも良く分からない。ムズかしくて。
なので、痛いニュースのコメント欄で「申し訳ないが読んでも良く分からんので教えて下さい」と聞いてみたところ、丁寧な人が教えてくれました。以下、コメント欄より引用。
>> 結婚式の二次会等の貸切営業でも営利目的がありうると認定した上で(判決37p),カメラ設置後にも,二次会等で著作管理物を演奏していたことを認定している(43p-46p)。そのうち,店が営業主体となったものとして,平成18年6月のライブを挙げている(56p-57p)。
>> それと,仮処分時には,「本件訴訟による解決がなされるまでの間」著作管理物の演奏をしないことを表明したから,本件訴訟が終わればまた演奏することが明らかだとしている(59p-60p)。
>> この2点が現在及び将来の侵害の根拠とされている。
以下はド素人の僕の解釈であり、あんまり信用しないで欲しいんですが、これと判決文を合わせて読むと、ライブカメラ設置後の以下の二点が問題になっているようです。
1、結婚式の二次会とか貸切営業は営利目的であり、二次会で著作管理物を演奏してた→でも、これはレストランオーナーが侵害したわけではない。却下。
2、店が営業主体でライブをやって(店がプロ歌手を呼んで歌手に謝礼を払った)、そこで著作管理物が演奏されてた→問題アリ
1に関してはJASRAC側の言い分は退けられた(?)ようですが、2に関しては、レストランオーナー側の認識とJASRACの認識に相違があるようです。以下、判決文より引用。
>> 原告の同年9月
>> 8日付けの警告書が送付されたのを受けて,被告は,同月17日付けの書
>> 面で管理著作物の使用料を支払う義務があるのは被告が招聘したライブの
>> 場合で奏者が同使用料を支払っていない場合に限られると理解していると
>> の書面を送付し,現時点では包括的利用許諾契約を締結する意向はないと
>> の趣旨の書面を送付した。
店が呼んだ歌手がJASRACに金を払ってない場合にのみ、金を払う必要があるとオーナー側は解釈しているようです。しかし、
>> 被告は,本件仮処分事件の平成17年2月23日の審尋期日に,本件店
>> 舗における演奏に管理著作物を使用しないと述べていたが,その後,ライ
>> ブの出演者等が原告から管理著作物の利用許諾を得たことを書面で確認す
>> るなどの措置は執っておらず,演奏された楽曲が管理著作物であるか否か
>> も十分に調査してはいなかった。
実際は店が呼んだ歌手がJASRACに金を払っているかどうかをオーナーが確認しておらず、オーナー自身も歌手が演奏している曲がJASRAC管理曲かどうかは完全には判別できない(当たり前ですね)ことがウィークポイントになっているようです。
というわけで、読売新聞の醸すようにオーナー側は完全に清廉潔白というわけではないようです。といっても、別にオーナー側が黒と言ってるのではなく、「今回のは誰が見ても明らかにJASRACが黒」という話ではなく、「確かに係争の余地はある裁判」だと言う話です。それで裁判長の判決も、別にエキセントリックではないという意見があります。このレベルになると、僕にはそうなのかどうかすら分からないのですが……。
しかし、それはそれとして、ではJASRAC管理曲を演奏しない店舗がどうやって演奏しないことを証明する(=JASRACに金を払わない)ことができるのかなど、やっぱり良くわかんないところです。JASRACが今回それを問題にしているのかどうか(ライブカメラによる証明の是非)すら良く分かりません。
まあ、そんな感じで、とにかく今回の話はそんなにキレイに白黒つく話ではないということです。そこまでは確かだと思う。けど、それ以上のことになると、僕は法廷のことはまるで素人なので、何がどこまで正当性があるのかホントに分かりません。それを今の裁判で専門家が考えてるんだから、僕に分かるはずがなくて当然なんだろうけど……。あと、ここまで読んでもらって申し訳ないんですが、上に書いてることも僕にはあまり自信が持てないので、鵜呑みにはせず自己判断でお願いします。