ちょっと仕事の関係で見る必要が生じたんで見てみました。
大長編ドラえもんなんて久しぶりに見たんですけど、まず、「雲の上に自分達だけの王国を作ろう」というイマジネーションに驚かされます。いや、これ、子供の遊びにしては、そりゃあ魅力的なものですよ。だって、リアルシムシティーっすよ。劇中ののび太が先生に向かって「宿題はしないが居残りをする気もない」と言い張るだけの魅力はあります。しかし、宿題はしないが居残りをする気もないってのもすごい話だよなー。将来が不安だぜ。
で、王国を株式制にしたりして、いろいろやって王国が設立した後、雲の上に住む天上人と邂逅するんですが、その時のスネ夫の台詞がすごかったです。
「これは僕の勘だが、天上人たちは何か恐ろしい陰謀を企んでるのではないだろうか」
すごい。小学五年生にして(少なくとも表面的にはフレンドリーな)天上人をここまで疑えるなんて。しかも勘だよ、勘。疑うことを知らない純真さが子供の特徴なのに、たかが勘でここまで疑うなんて、これはもう一つの才能だと思う。スネ夫、すごい。
で、天上人のノア計画(大雨で地上文明を一度洗い流す)に対し、ドラえもんは天上世界に壊滅的打撃を与える道具を持ち出し牽制します。のび太は慌てて「そんなもの使う気なのー!?」とか言うんだけど、ドラえもんは、
「使うつもりはないけど、対等な話し合いをするためにはこれが必要なんだよ」
うひー、核武装によるパワーバランス出たー。
しかし、地球人を非難する天上人たちは、大人になって見ると、自分勝手この上なく映りますなー。彼らは自分たちの存在を地球人には知らせず、「地上人が環境破壊するせいで天上人の人口が減って迷惑だから、ノア計画やりましょう、すぐに」と言ってるわけで、おいおいそりゃねえだろって感じです。弱者である地上人に対し、すげえ一方的。まずは自分達の存在を明かしてから、現状の改善を求めるのが道理でしょうに。まあ確かに、律儀にそんなことやってたら地上人は反撃するだろうけどさ。それにしたって誉められたもんじゃない。
で、いろいろあって、最終的にはドラえもんの自爆特攻で和平の道が開かれます。自爆特攻ってのも、またすごい話だよなぁ……。
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正直、序盤の夢に溢れた展開&巧妙な伏線はともかく、中盤以降は急ぎ足で一つ一つのエピソードがあまり深められていなかった気がします。雲の王国崩壊後、なぜ縛られていたのび太たちが(瀕死のドラえもんを連れて)逃げ出せたのかも良く分からないし、キー坊の説得が最終的なキーになることも、「結局偉い人の後押しかよ」という感じは拭えません。天上人に捕らえられていた家族の安否も不明です。
しかし、暴力(ジャイアン)に負ける大株主(スネ夫)、暴力・資本力(スネ夫)を圧倒する国家権力(国王のび太)、核武装によるパワーバランス、カルト思考による排他主義(天上人)、クーデター(密猟者による雲の王国奪取)など、現代社会に置き換え可能な様々な要素が渾然一体となっており、雲の上なんて世界を舞台にしておきながらも、緊迫感のある映画ではあったと思います。でも、説教臭くてあまり好きになれない。天上人怖いし。
追記)そうそう、中盤でドラえもんが電気ショックでイカれるんだけど、あれがマジで怖かった。「狂人に普段どおりに話かける子供(のび太)」って絵はすげえ怖い。なんか見てると欝になる。子供の頃はそんなことぜんぜん思わなかったのになぁ。