http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/872936.html
ま、これを見て、ですね。この高橋さんの気持ちが非常に良く分かるので、僕も便乗して愚痴ってみようかなと思うわけですよ。ぶっちゃけた話をするとですね、プロとして物を作るとクオリティが落ちるんです。もう、これはしょうがない。
他の業種は知らんけど、ゲーム業界とか、あと僕のやってる作家業とかはクオリティが落ちます。僕もそうだったけど、学生のうちは「プロとして仕事をすればアマチュアより立派なものが作れるだろう」って思うんですよね。それが残念ながらそうじゃない。
大体、僕の作品だと、ネットで発表したら100点のクオリティのものが、本にすると80~90点になります。といっても、別に手を抜いてるとか、そういうわけじゃなくって、もっと根本的なところに問題があるのです。そう、ずばり、カネですね。
アマチュアなら、費用も時間も無制限にかけられます。もちろん、カネと時間がある人に限られますが。しかし、プロはそうはいかない。プロとして物を作るからには、必ず利益を出さなきゃいけない。利益を出すためには費用や時間を抑えなきゃいけない。時間=費用(人件費)ですからね。儲けを考えないアマチュアの作品と、必ず利益を出さなきゃいけないプロの作品なら、もちろんアマチュアの方がいい作品が作れるんですよ。これはもう間違いない。
僕の本の話をすると、例えば1250文字のすごく完成された100点満点のコラムが書けたとします。ネットで発表するなら、これをそのままポンと載せればOK、100点です。でも、本だとそうはいかない。「どうしてもページに収まりきらないから1000字にしてくれ」とか、そういうことを言われるわけです。そんで、「今の形がベストなのになあ」とか思いながら250字分を削るんです。そういうことをチョコチョコとやってると、最終的な完成度は80~90点に下がっちゃいます。かといって、ページ数増やしたらそれだけ費用が掛かっちゃいますからね。僕だけの都合でどーこーいえません。プロには妥協が必要なんです。これはもうしょうがない。
そんで、カルドセプトの話です。僕はゲーム製作の事情は良く知らんので憶測で書きますが、たぶんこのゲームプランナーって役職はプログラミングはあんまりやらないと思うので、「どうすれば面白くなるのか分かってるけど、それを実際にやるのは他の人たちで、そして他の人たちは費用や時間・技術的な問題でそれを実現できない」という状況じゃないかと思います。要するにカネと時間がなくて、自分の考えていたものが全く実現できずションボリしてるんだと思うのです。
プロには妥協が必要だけど、妥協しなければいけない程度があまりに甚だしく、その結果、誰の目から見ても酷いゲームができちゃったんでしょうね。高橋さんに十分な技術と財力があれば、きっと彼が考える100点満点のカルドセプトサーガが作れたんでしょうけど、それがフタを開けてみると10点とか20点のカルドセプトサーガになっちゃった。そりゃ落ち込みますよ。
ちなみに、元デバッガーの個人的見解としては、このゲームのバグは、おそらく開発元も販売元も知ってて強行発売してますね。既知のバグはあるけれど、時間もカネもないからそのまま発売する、というのはカルドセプトサーガに限らず良くあることです。でも、これもプロだから妥協しなきゃいけないところなんです。
ユーザーからすれば「分かってるバグがあるなら全部直せ」と言いたいところでしょうが、実際問題そうもいかないんです。というのは、バグを直すというのは、プログラミングを書き換えるということで、そうすると新しいバグが出る可能性があるんです。つまり、デバッグに時間をかければかけるほどバグの数はゼロに近づくけど、本当に全くのゼロにするのは大変なのです。だから、時間やカネと相談して「こんくらいのバグならOKだろう」というところで販売するわけです。
ただ、その場合でも、カルドセプトサーガのような進行不能バグとか、ダイス目の法則とか、そういうクリティカルなバグは優先して絶対に直すし、そこまで酷いと流石に発売を延期するんですけどね。マイクロソフトとバンダイナムコの間で「年末までに~~本ソフトを出す」という協約があったらしいので、たぶん「致命的なバグがあることは分かっているが、それでも出さなきゃいけない」という状況だったのでしょう。まったく悲しい話ですが、プロってのはこういうもんなんです。
たぶん入社一年目で「よーし、プロ意識を持ってイイ仕事をするぞー」と思ってた高橋さんがショックを受けるのは良く分かります。同情します。ただ、それでも痛いニュースのコメント欄124の意見と僕も同意見で、
>> 仕事で失敗しない人間などいない。
>> 誰だってかならず失敗はするし、誰もが自分の守るべきものの為に日夜生きてる。
>> その中では当然理屈では通用しない不条理な事が幾等でも起こりうる。
>> だからこそ、責任の所在を明確にしたところからしかこういう発言はしてはいかんのだ。
>> 立派な人間とかの問題じゃなく、
>> 社会的な責任の所在を考え、関わった多数の人たちがどれだけ幸福になリうるか、という事を考えられるか?と言う問題。
>> こいつはこれで満足だろうが、他にも言いたい事がある奴は幾等でもいる。
>> 社会的責任や環境から言いたい事が言えないやつが沢山いる。
>> こいつの発言で迷惑を蒙った人や企業が沢山あり
>> その中にはたくさんの人たちが生活をかけて仕事をしてるんだ。
>> そいつらはどうしたらいい?
>>
>> 気持ちは痛いほど判るが、
>> 若い、といしかいいようが無い。
気持ちは痛いほど判るが、若い、としかいいようが無いのです。
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あと、こっからは作家としての僕の100%愚痴なんですが、僕は面白いことって「新しいこと」だと思うんですよね。でも、実際のところ、「新しいこと」って出版社としては怖いんです。大コケするかもしれないし。で、僕が「新しくて面白い」と思う企画を提示したら、それを「今までに通用した、ある程度実績のある古いこと」に置き換えて発売したいと言われるんです。そうなったら丁重にお断りしますけど。くだらないものを発売してお金を貰うよりは、自分が面白いと思うものをネットで公開して小銭を稼いだ方がマシだと思ってるので。
ちなみに、僕がお世話になってるシンコーミュージック社は非常に理解があって、僕が100点の面白さだと思うものを、80~90点くらいの面白さで発売しようと言ってくれます。他の会社だと、これが30点くらいになるんですけどね。具体的に言うと「完全覇道マニュアル」を小学生の権力闘争路線でOKしてくれたのがシンコーだけなんです。だって、サラリーマンを舞台にしたって、そんなのありきたりでつまんないでしょ?(苦笑)
ただ、やっぱりシンコーも冒険してることには変わりなくって、あんまり部数が出せないんです。部数が少なくなると単価が高くなってしまうので、そんで僕の本は高いんですね。というわけで、単価が高くて申し訳ないんですけど、僕の著作を面白そうだと思ったら是非買ってやって下さい。保身のためにも言いますけど、面白いと思ったものにはカネを出していかないと、どんどん市場から面白いものがなくなって、ありきたりな二番煎じばかりになっちゃうんですよ(´・ω・`)