昨日の前編に続き、新條まゆ先生の「あなたに繋がれたい」レビューです。残りの短編２篇とまとめを掲載。
『悪魔の仮面』
テニス部マネージャーの菜月は、同じくテニス部員である翔吾くんと付き合っていました。しかし、菜月には翔吾に言えない秘密があったのです。
実は彼女は、生徒会長にお酒を飲まされ、いつの間にか犯された経験があるのでした。そして、生徒会長から「俺と寝たことを彼氏にバラされたくなければ、俺との関係を続けろ」と脅迫されており、今でも二人の関係は続いていたのです。何度も書くのもアレですが、言うまでもなく犯罪です。
そんな折、生徒会長もテニス部の合宿に参加することになりました。夜間、林の中を歩いていく生徒会長。不審に思い尾行する菜月。しかし、生徒会長に気付かれてしまい、二人は暗い林の中で二人っきりになるのでした。
菜月がなぜ林の中にいたのかと聞くと、生徒会長は「星を見ていた」と答えます。「意外とロマンチストだ」と呟く菜月。生徒会長は「うるせェよ、バーカ」と笑います。今までの印象が最悪だっただけに（犯して脅されてただけですからね）、生徒会長の初めて見る笑顔にホッとする菜月。日頃悪いことばかりしていると、少し普通のことをしただけで、とても良い人に見えてしまう典型例です。だって、彼、笑っただけですよ。牛股師範でも笑うくらいしますよ。
林の中にいた二人を発見した翔吾くんは、生徒会長に「菜月と二人で林の中で何をする気だったんだ！」と責めたてます。これだけだと酷い言い掛かりですが、今回は何気に正鵠を射てます。そこで生徒会長……
「犯っちまってただろうなぁ、いつもみてェに…」
二人の関係をバラしてしまうのです。酷ェ。翔吾くんは「最低だ、お前ら！」と叫んで走っていってしまいました。翔吾くん可哀想すぎです。カズくんと違い、翔吾は優しくて普通のいい彼氏だったのに……。菜月にしても、翔吾くんとの仲を壊さないために生徒会長の言いなりになっていたわけですから、そこまでしたのに約束も守らない生徒会長は酷すぎます。彼女は「悪魔！ 悪魔！」と生徒会長をなじりますが……
生徒会長「お前が俺を悪魔にしたんだ。何度も抱いて忘れられない体にしたのもっ…あいつとの仲メチャクチャにしたのも、すべて…お前を手に入れるためだ」
なんという自分勝手な男でしょうか。この男は一体何を考えているんだ。しかし、菜月は……
菜月「もうダメ抑えられない。和臣くん（生徒会長）が好き――…もう…誰を傷つけても何を失くしてもかまわない」
ち ょ っ と 待 て 。
翔吾くんの最大の不運は、こんな非常識な人間が身近に二人もいたことだと思います。で、信じられないと思いますが、これでハッピーエンドです。彼氏持ちの女の子を犯して脅して破局させて、そんでハッピーエンドなのです。翔吾くんには、最後まで何の救いもありません。まゆたん的には「とにかくセックスさえ気持ちよければどうだっていい」のです。
「痛い愛」
最後はタイトルからして読む気が失せる短編です。主人公は紀香という女の子、彼女は路地裏にたむろしているゴロツキのリーダー（龍一郎）に片思いしています。
ある時、彼女がいつもの路地裏を歩いていると、血まみれの男が彼女にぶつかり、男の血が彼女のほっぺに付きます。この男はたったいま龍一郎がボコボコにして血まみれになってたのです。
そんな男一人を血まみれにしたばかりの龍一郎が近づいてくるのですから、彼を好きな紀香といえどやっぱりビビってしまいます。しかし、龍一郎は彼女の頬の血を指で拭い、ペロリと舐め（なんで舐めるんだ）、「怖がらせて…ごめん…」と優しく接してくれたのです。そんな彼の態度に、紀香は「怖くないのかも、本当は優しい人なのかも」と思うようになります。冷静に考えると、自分のせいで汚れがついたのを拭っただけですから、別にそんな優しいことはないんですけど、やっぱり「日頃とても悪い不良が～」というアレなのでしょう。
龍一郎を優しい人と思い込んだ紀香は彼にアタックし、人前でストリップをしたりして、龍一郎の心を掴みます。えーと、ここからは別に面白くないので適当に書くと、龍一郎は昔、恋人をチンピラどもに輪姦されたことがあって、その仕返しにチンピラを刺して塀の中に入った経験があり、その時のチンピラが復讐で紀香をさらうけど、龍一郎が助け出してくれてハッピーエンドです。
↑迫力の戦闘シーン
タイトルが「痛い愛」だし、主人公はゴロツキのリーダーということで、きっとどうしょうもない展開だろうと思ったら、このお話が一番まともでした。生徒会長よりゴロツキのリーダーの方が人間としてまともでした。
でも、紀香をさらったヤンキーですが、彼がものすごいセックス上手なら、きっと紀香は「もう一度…縛られたい――――…」とか言って、彼になびいていたに違いありません。
総評：４つの短編をまとめると……
「あなたに繋がれたい」→監禁調教したらハッピーエンド
「カラダごと奪って」→道端で会った女を抱いて、女の彼氏をブチ殴ってハッピーエンド
「悪魔の仮面」→女を犯して脅して彼氏との仲を引き裂いてハッピーエンド
「痛い愛」→ゴロツキのリーダーに恋して、刃傷沙汰に巻き込まれた後、ハッピーエンド
となっており、何とか理解できるのは最後の「痛い愛」だけです。「あなたに繋がれたい」「カラダごと奪って」は、どちらもたまたま出会った主人公に何故か男がぞっこんになる時点で意味が分かりません。そんな男にメロメロになる主人公も、また意味が分かりません。「悪魔の仮面」は全体的に理解不能ですが、特に、主人公が生徒会長になびいた理由がまるで分かりません。
しかし、このまるで分からない三作品ですが「男も女もセックスがすごく巧かった」と考えると何とか理解可能です。つまり……
「あなたに繋がれたい」
男：偶然レイプした女だけど、女はすごくセックスが巧かったからぞっこんになった
女：ムリヤリ監禁調教されたけど、すごくセックスが巧い男だからメロメロになった
「カラダごと奪って」
男：偶然道で会ってホテルに連れ込んだ女だけど、女はすごくセックスが巧かったからぞっこんになった
女：偶然道で会って強引にホテルに連れ込まれたけど、彼氏がどうでも良くなるくらい男のセックスが巧かったからメロメロになった
「悪魔の仮面」
男：なんとなく喰ってみた女だけど、すごくセックスが巧かったので、脅したり彼氏を傷つけたりしても手に入れたくなるくらいぞっこんになった
女：犯されたり脅されたりしたけど、彼氏を捨てても良くなるくらいセックスが巧かったからメロメロになった
というわけで、セックスが巧ければそれで良いのではないでしょうか。
結論：まゆたんはセックスのことしか考えてない
