「東京エロガンス」「愛+少女」とハードなエロ少女漫画レビューが続きましたので、今回はエッチじゃない少女漫画をレビューします。単行本「蜜のDestiny」収録の短編「女王様のゆううつ」です。
『女王様のゆううつ』
今回の主人公は女子高生の松嶋麗奈さん。
「相変わらず美しい」
「この世のものとは思えない」
とまで言われる程の南高のアイドルです。少女漫画は読者が自己投影しやすいよう「地味だけどひたむきでがんばる女の子」が主人公になることが多いので、誰からも好かれる超可愛い主人公というのはレアケースです。作者の武内先生も、いつもの基本設定とは違う逆転の発想で描いてみようとしたのでしょう。そのチャレンジ精神は手放しで賞賛したいところです。
そんな彼女の想い人は、柔道部の坂本和巳くん。小さな体で厳しい練習に耐えて頑張る彼の姿に、半年以上前から片想いしていたのでした。
麗奈が和巳くんへの想いを口に出すと、その噂は瞬く間に全校へと伝わります。しかし、放送部の「どうですか? 南高一の美女に愛されてる気持ちは?」とのインタビューに和巳くんは「…おれは地味な子が好きだ」と答え、麗奈はフラれたと思いショックを受けてしまうのです。
一方、校内では「じゃあ和巳が好きな地味な子って誰なんだ!?」と憶測が飛び交います。その結果、柔道部の紅一点、田原正子ではないかとの結論に。それを聞き、麗奈は田原さんに会いに行きます。
で、この田原さんですが、明らかにTAWARAさんをモチーフにしたキャラクター。そんな彼女を見た時の麗奈さんは……
「…じ、地味…!! すごいちんちくりんな顔、小さくて小太りな体、象のように太い足。う…うらやましい…!!」
どう見ても性格最悪です。本当にありがとうございました。
あの……読んでてどんどん、この主人公が嫌いになっていくんですけど……。
和巳くんのために何とか地味になろうとする麗奈は、「おさげ」「メガネ」「正規の制服(普段は自由服)」の三点セットで地味な女の子になろうと努力します。しかし、和巳くんからは「似合わない」と言われ、周りの女の子からは「正規の制服かわいー!」と称えられてしまいます。
「あたし、全然地味になれてない」
地味な格好をしたはずが、結局みんなから持て囃されてしまい、苦悩する麗奈。もう勝手にやって下さい。
で、その後いろいろあって、二人は少し仲良くなります。「試合に勝ったら、オレ告白するから」と和巳くん。それを聞いた麗奈や周りの人たちは「和巳は試合に勝った田原さんに告白するらしい」と早合点。田原さんは嬉しくて泣いちゃいます。可哀想になぁ……。
試合に勝った和巳くんは、当然のように田原さんを無視して麗奈に駆け寄り告白します。ああ、田原さんかわいそう……。麗奈は和巳くんが自分を愛してくれたことに驚き……
「だって、あたし、美人で、目立って、全然和巳くんの好みの子じゃ…」
…………(゚Д゚)!?
麗奈を抱きしめる和巳くん。彼女のモノローグはさらに続きます。
「たとえようもなく美人で、みんなに愛されるミス南高。でも、たったひとりの人に、好きって言ってもらいたいの――」
自分のことを「たとえようもない美人」とまで言い切ったのは、この漫画が初めてではないでしょうか。
しかしまあ、ここまで来ると……