【4/7-17】人類は万難を排して豪華客船に乗るべき
【豪華客船の感想日記】
・総評
すげー良かった。むちゃくちゃ良かった。人類は万難を排して豪華客船に乗るべきである。しかし、これは誰でも乗れば無条件で幸せになれるものかと言えば怪しく、既に勝利している人がさらなる勝利を積み重ねるためのものかもしれない……。
・これに乗った
今回は旅行代理店のクルーズプラネットを利用。こちらのコースとほぼ同じ旅程のものとなった(最初の寄港地がセント・マーチン島ではなくセント・トーマス島である点だけ違う)。お船の名前は「ハーモニー・オブ・ザ・シーズ」。なので、この日記はハーモニー、及びロイヤル・カリビアン・クルーズ社の同クラス船への乗船を検討している人にとっても情報的価値が高いと思われる。
・英語
アメリカ人が何を言ってるのか、本当に全く聞き取れなかった。おかしい……インドの時はもう少しなんとかなったのに……。読み書きはなんとかなるのだが、とにかくヒアリングが全くダメダメだ。
今回は行きの飛行機が遅延したのもあって、お船に乗るまでは凄まじいストレスに晒された。お船は乗船時間を過ぎると容赦なく置いていく。なのに、飛行機が遅延して予定していた乗り継ぎには間に合わない。航空会社(アメリカン航空)から「とりあえず明日の早朝に替わりの便を出してやるから、今日は手配しておいたホテルに泊まれ」と言われるが(ここまでの情報を把握するだけでも大変だった)、まずホテルにどうやって行けばいいのか分からないし、ホテルから翌日早朝に空港まで行く方法もよく分からない。「そんなんタクシー乗りゃええやん」と思われるだろうし、まあ実際そうしたのだが……。
なにせ、ここからはワンミスすら許されないのだ。ワンミスでお船に乗れず、われわれの夢の豪華客船生活と数十万円が消し飛んでしまう。幸いタクシーの運ちゃんが非常に親切な人で、ホテルのロビーに話をつけてくれて、翌朝のタクシーの手配などもしてくれたのだが、なにせ運ちゃんとロビー係員の会話内容がほぼ理解できないので不安で仕方ない。あまりに不安なので私からも色々尋ねたのだが、係員は私がさっぱり英語を聞き取れないので次第に面倒くさくなったのか「日本人! 全てオッケーだ、お前は寝ろ!!」と言われて追い返されてしまう。むちゃくちゃ怖かった。インド人は全てオッケーとか言いながら何もオッケーじゃなかったりするからな……。まあ、アメリカ人は本当にちゃんと全部やっててくれたんだけど、あまりに心配すぎてぜんぜん眠れなかった(妻は隣ですやすや寝てた)。
話を戻して、何が言いたいかと言うと、クルーズプラネットはさすがHIS系列の大手代理店だけあって、われわれのような旅慣れぬ脆弱者にも負担なく旅行ができるように色々なフォローをしてくれているのだが、そうであっても、このようなレアなアクシデントに晒されるとクルーズプラネットのフォロー能力を超えてしまい、われわれは突然にtrialへと直面してしまう。しかもワンミス即死だ。こうなると英語力の不足が死活問題になってくるが、しかしまあ、こういう事態はそこまで頻繁にあることではないので、通常は英語ができなくても大丈夫なはずだ。たぶん。
一方、お船に乗ってしまえば、過ごすだけなら何の問題もない。なにせわれわれは客だ! 船側はお客であるわれわれが分かるように努力してくれる! 相変わらずアメリカ人の話す英語は何も聞き取れないのだが、とにかく何とかなる。
しかし、楽しむという面で言えば、明らかに英語は聞き取れた方が良い。船内で催されるミュージカルや様々なイベントは、英語が分からなくてもある程度楽しめるが、当然分かった方が楽しいに決まっているし、セミナーやスクール系のイベントは英語が分からないと全く楽しめない。あと、やや危険なアクティビティもあるのだが、そのへんは説明が理解できないと怖くて参加できない。
それに何より、船内では他の客からかなり頻繁に話し掛けられる。みんな、「ウオーッ、お船で超盛り上がるぜ!」みたいな気持ちで来ているので非常にフレンドリーなのだ。そういった会話のチャンスを全て逃していたので残念で仕方がない。。英語力の不足により、おそらくお船の楽しさの50%程は損なっていたのではなかろうか。
だから、今からお船に乗る人は英語力を磨いて、英語の映画くらいは字幕なしで楽しめるくらいになってから乗るべきである。……べきではあるのだが、そのハードルはあまりに高くて、そんなことをやっているとおそらく一生お船には乗れないので、まずはとりあえず乗ってみて、必要性を痛感してから、改めて英語を学んでお船に乗るべきだろう。
あと裏技として、「よく分からないことは子供に聞く」という手段を発見した。子供はゆっくり喋ってくれるし、難しい言葉も使わないからだ……! いま思えばインド人とある程度会話できたのは、彼らもそんなに英語が得意じゃないからかもしれない。
・お金
まず初めに言っておくと、豪華客船とは言うものの、ハーモニーは決してセレブの乗り物という感じではない。メインターゲット層は中の中から、せいぜい上の下くらいだろうか。かなり商業主義的なニュアンスが強く、「お船の中でたくさんお買い物してね!」「寄港地でこんな楽しいことがあるからお金使ってね!」という感じである。お船に乗りさえすれば、後は一銭も使わずに楽しみまくれる……というわけではない。が、一方でわれわれは大してお金を使わずに楽しみまくったので、楽しみまくることも十分可能ではある。
追加で必要になるお金としては、まずショッピングだ。船内には様々なブランドショップがあり、実際安い。また寄港地でも宝石などを買うのに税金的にはとても良い条件だという。次にアルコールだ。アルコールは飲み放題プランが一日60ドル程である他、一杯10ドル程度でも飲める。日本の相場から考えるとだいぶ高い気がするが、フロリダのバーもそんなもんだったのでアメリカの相場なのかもしれない。そこからさらに寄港地でのアクティビティやカジノなどの賭け事がお金の消費理由として続くだろうか。
ゆえに買い物欲と飲酒欲が刺激され、さらに寄港地やカジノで色んな体験がしたくなると、お金をじゃぶじゃぶ使うことになるが、われわれは買い物も飲酒も程々にして、寄港地も主にビーチで遊んでいただけなので、追加で使ったお金はせいぜい7万円程である。しかし、これらを刺激されちゃう人はじゃぶじゃぶお金を溶かすことになるだろう……。誘惑に弱い人は自制心を鍛えるか、もしくはお金をたくさん稼いでから行こう。
・船酔い
ほとんど揺れない……という話だったが、体感できる程度には揺れる。しかし、人一倍乗り物酔いしまくる私が船酔いしない程度なので、そんなに恐れる必要はない。たまによく揺れる日があって(おそらく船のスピード自体が早かったのだろう)、その時だけはちょっと辛かった。
ところで、実は今回、私がお酒にあまりお金を使わなかったのは、この船の揺れのせいが大きく、というのは、酔っ払ってるのか、船が揺れているのかよく分からないのである。みんなプールに入りながらカクテルを飲んだり、バーで音楽を聞きながらスピリッツを飲んだりしていて、かなり楽しそうで羨ましかったのだが……。
・食事
上はメインダイニングでのロブスターの写真である。ウェイターがさらにロブスターを一尾持ってきてくれた上に、食べ終わったあとも、「まだいるか?」と聞いてきた。
お船での食事は基本的に全て無料。そして無限に食える。いつでも食える。色んなところで食える。
基本はウインジャマーで朝昼のビュッフェ、夜がメインダイニングでのフルコース(っぽいもの)となるが、その他にも色んなところで色んなものが食べれて、プールサイドでハンバーガーを無限に食ったり、真夜中にピザを吐くまで食ったりできる。夜にあえてウインジャマーのビュッフェに行くのもぜんぜんアリだ。また、有料の特別レストランに行くこともできる(が、無料のレストランで十二分に満足できる……)。
色んなところで色んなものが食べれるのだが、実はどうやらほぼ全ての料理バラエティはウインジャマーのビュッフェに集約されているようで、つまり、ウインジャマーのビュッフェに供されているアレコレが、別のレストランでは部分的に供されている、というのが実際である。ただ、メインダイニングでのメニューだけは一部がメインダイニング限定かもしれない。メインダイニングで豪華な夕食が食べれるのに、あえてウインジャマーのビュッフェを夕食に選ぶのはこのためで、少なくともメインダイニングで供される前菜とデザートはだいたいウインジャマーでも食べられると思われる。メイン料理も近しいものがウインジャマーにもあったと思う。なお、メインダイニングでフルコースを食べた後にさらにウインジャマーに行って食い放題するとかのわんぱく行為も可能だ。
というわけで、料理のバラエティ自体はレストランのバラエティに比較すると意外と限定されているのだが(色んなお店がある割には結局ウインジャマーに行けば全て揃ってる)、そうは言っても十分なバラエティなので一週間程度で飽きることはないだろう。アメリカ料理は当然としてイギリス、インド、アフリカ(?)あたりの料理も部分的にある。だが、なぜか和食はない。いちおう有料の和食レストランもあるにはあるが……。
↑朝食ビュッフェの例。私の盛り付けだが、妻の採点は「30点」とのこと。何が30点かというと、アメリカ人の朝食を再現しようとしたのである。びっくりしたのだが、どうやらアメリカ人は「朝にサラダを食う」という文化がないらしい。どこのビュッフェに行ってもサラダがない。実際にアメリカ人の盛り付けを見ていても、皿の上はほとんど真っ茶色で、炭水化物(パンやワッフル)と脂質(ベーコンやハムなど)以外の栄養素を取る気が全くない。せいぜい卵を付けたり、キュウリやトマトの薄いスライスを1~2切れ乗せる程度だ。
そんなアメ朝食に衝撃を受けて再現をしようとしたのが上の写真だが、採点してくれた妻からは、
「カリカリベーコンの盛りが足りない」
「何でもいいから俺はとにかく食いたいんだ、という気持ちが足りない」
「日本人の奥ゆかしさが出ている」
「彩りが美しすぎる」
「ベーコンを5倍にして、パンケーキを少なくともあと2枚は追加すべき」
などと激しいダメ出しを受けた。
ちなみにこれが妻の「自己採点65点」の朝食である。野菜スティックがある時点でせいぜい45点程じゃないかなぁ……。確かにベーコンの盛りはかなりアメリカしてるが……。
なお、食べ物は(実際にどこまで公式に許されているのか分からないが)メインダイニングでの食事以外は持ち運びがかなり許容されているっぽい。ルームサービスもあるが、チップ代などがそれなりに必要なので、多少面倒だが、ごはんやらケーキを自室に持って帰るのがいいだろう。プールサイドで食ったり、バルコニーで大海原を眺めながら食べたりできる。プールサイドのチェアーに座って、海を眺めながらナチョスを齧っている時はマジで天国かと思った。
なお、プールの近くのソラリウムという大人専用エリアには、こういうカゴ的なものが幾つか点在している。
内部はこんな感じであり、カップルがイチャイチャするのに最適な空間となっている。かなり人気が高く、朝8時に行ってもほとんどが埋まっている。
カゴの内部からの眺望はこんな感じ。ここに食べ物を持ち運んで、海を見ながら昼食を取り、そのままカゴの中で妻と一緒にウトウトする。天国かと思った。
ちなみにその時の朝ごはん。アメリカ人の朝食はもはや諦めた。
・飲み物
飲み物に関してはかなり不便である。部屋にはコーヒーメーカー的なものも特になく(スイート以上ならあるらしい)、ミネラルウォーターも有料だ。対策としては近くの無料レストランからジュースやアイスティーなどをコップで貰ってきて、保冷庫に冷やしておく。お部屋の清掃係の人に「アイスプリーズ!」と初日に行っておけば一日二回氷を持ってきてくれるので(数時間で溶けてなくなるが……)、それを適宜入れて飲む。
しかし、コップにドリンクを入れて持ち運ぶのだと、両手を使ってもせいぜい2つが限界だ。ここで小技となるのが紙パックの牛乳とココアで、これらは朝食のビュッフェで手に入る。これならば保管も簡単だが、部屋の保冷庫の機能が微妙なので牛乳類は当日中に飲んだほうが良いと現地の日本語係員の方が言っていた。ホットティーは紅茶、ミントティー、日本茶までTバックが色々とある。なお、コーヒーはなぜか知らんが驚くほどまずい。
毎日10ドル程を払えばコーラなどのソーダ類が飲み放題となる。私はあまり魅力を感じないが、アメリカ人はソーダ大好きらしく、多くの人がこれを利用していた。さらに毎日30ドルでソフトドリンクが飲み放題となる。数種類のソフトドリンクがそもそも無料だし、10ドルでソーダが飲み放題なので、このコースの存在意義がよく分からないが、たぶんスムージーとかが飲み放題なのだろう。
また前述の通り、毎日60ドルでアルコールも飲み放題となる。アルコールは安くて8ドル程、高いカクテルだと15ドルとかする上にチップが18%自動加算されるので、ぐいぐい飲みたい人はドカンと5万くらい支払って連日飲み放題にした方が良いかもしれない。これまた上に書いたとおり、プールサイドで飲んだり、海の中で飲んだり、バーで音楽を聞きながら飲んだり、メインダイニングで夕食時にワインを飲んだりなど、お酒があると楽しそうな局面は実際に数多ある。
妻が海辺で飲んでいたピニャコラーダ。チップ込みで14ドルくらいか。結構なお値段だがすごい優雅さだ。こういうのを気兼ねなく楽しめるので飲み放題も悪くないのかもしれない。
・船内設備&イベント
恐ろしく楽しい。毎日が楽しくて、楽しすぎて、寝る時間すら惜しい。
今回は「ゆっくりする」のが目的で、船内イベントも色々あるとは聞いていたが、あんまりやる気はなかった。そういうのにあくせくするのではなく、妻とふたりで海を見てゆっくりしたり、ビーチでのんびりしたり、散策したり、そんなことを考えていたのだが…………。
いや、ゆっくりできないですね。ぜんぜんゆっくりできないですね……。船内設備のバラエティも豊かだし、毎日のイベント量も凄まじい。上に写真で挙げた回転木馬やウォータースライダーなんかは、実はそれほどでもない。これらは見た目が華やかで、幸せな空間を演出してくれるが、一回遊べばそれまでなので、お船の楽しさの本質とはさほど関係ない。
……というわけで、ここから出し抜けに本稿の主題に入ろうと思うのだが、実はお船の楽しさの本質は、
「無限にデートができる」
ここにあると思う。これが冒頭で書いた「既に勝利している人がさらに勝利を積み重ねるためのもの」という疑惑に繋がるのだ。
とにかくデートプランが無限に出てくる。船を一通り見て回るだけで、「プールデートしたら楽しそう」「一緒にミニゴルフもいいな」「美術館デートもいい」「カジノを初体験してみるのはどうだろう」などなど楽しい妄想が無限に広がる。船内新聞で本日のイベント一覧を見ても、「一緒にミュージカル行きたいな」「一緒にパレードを見たいな」「一緒に新婚イベントに行きたいな」などなど……。これは子供連れの家族でも同じことができると思う。子供用の施設やイベントも多数あり、無限に子供を遊ばせることができるのだ。
ところで、実はお船で得られる楽しみはほぼ全て東京でも得ることができる。朝イチで妻とフィットネスジムに行き、ビュッフェで朝食を摂り、昼までプールで遊んで、プールサイドでハンバーガーやナチョスを食べながら日光浴し、お部屋でお昼寝して、夕方からはミュージカルを鑑賞、フルコースのディナーを味わった後、ライブパーティーで盛り上がり、最後はジャズバーで生演奏を聞きながらウイスキーを味わう……。
だいたい毎日がこういう具合なのだが、一つ一つを分解してみると、確かに東京でも全て味わうことのできる楽しみではある。しかし、東京にいると、こんな一日を過ごそうなどという気がしないのだ。そこには休日でも避けられない最低限の家事とか、お金の問題とか、体力とか、計画を立てるのが面倒とか、そもそも外に出るのが億劫だとか色々あるのだが、お船はそれらを全て気にせず全力で遊び続けることができる! 家事はほぼ何もしないでいいし(お風呂に入った時に下着を洗うくらいだ)、お金はどれだけ遊んで飲み食いしても全て無料(実質前払いだが)、疲れたらすぐに部屋に帰って昼寝ができるし、遊ぶ施設もイベントも飽和状態なので計画を立てるのも簡単、外に出るも何もお船の中で全て完結する。とにかく他に何もすることなく毎日めいっぱい遊んで、バカバカ食って、限界まで疲れたら寝るのである。
こうして見てみると、普段のわれわれは様々な条件により「楽しむ機会」を損失していることが分かる。休日の夜にジャズバーで生演奏を聞きながら酒を飲むとか、ごく普通に東京でも可能なことなのに、そういうのに結構憧れてるのに、実際していない! そこには、他のことで忙しいとか、お金が掛かるとか、外に出るのが面倒とか、ばんごはん食べたら眠たくなるとか色々あってできていないのだが、お船ではそういう「機会」が間断なく提供されるのだ。様々なイベントを横目に断腸の思いでお昼寝をしたり、就寝したりしていたくらいだ。
こうしてわれわれは間断なく提供される「楽しむ機会」により、乗船中、無限にデートをし続けることができる。つまりお船の楽しさの本質とは「一緒に遊べる楽しさ」を最大限にエンハンスするところにある。親でも子供でも妻でも夫でもいいのだが、とにかく、一緒にいたい、一緒に遊びたい相手との楽しさを最大限にしてくれる。しかし、これはそもそも家族仲や関係性が良好で、「既に幸せ」でなければ難しいとも思う。もちろん健康も重要だし、まとまった稼ぎもいるだろう。
というわけで、お船を楽しむには意外と前提条件がもろもろ必要だと思うのだが、それらをクリアできている人は万難を排してでも豪華客船に乗るべきである……。私もこの条件がいつまでクリアできているか分からないので(健康とか収入とか)、できるだけ早くまたお船に乗りたい……。しかし、今回は新婚旅行という免罪符を使って12日間の休みを確保したわけだが、今後はどうやってまとまった休みを取るべきか。いやでも、人類は年一くらいで何とかまとまった休みを取ってお船に乗るべきだと思うのだ。
なお、船内イベントには「単身者集まれ~!」的なものもあるので、ソロ参加者の方でもひょっとすると何とかなるのかもしれない。
・船内パーティー
ミュージカルやアイススケートショーなどが船内で催されていることはHPなどでも書かれているのだが、文字情報ではあまりアピールされておらず、意外と魅力が分からないのが、船内でのアクティビティ・クルー主催のパーティーで、何をやるかというと、船内大通りでの仮装と音楽と踊りである。……と言っても、何も楽しさが伝わらないと思うのだが、なにせこの船に乗っている客の大半は遊ぶ気マンマンで来たノリノリのアメリカ人たちである。仮装したスタッフがバンドの生演奏をバックに壇上でノリノリで踊りまくると、周りのやつらももうノリノリでめちゃくちゃ楽しい。
ビジネス的な観点から見てもこれは重要だと思う。今回のアクティビティマネージャーはJerryというヒゲのオッサンだったのだが、この「ノリの良さだけでメシを食ってるんじゃないか」と思うほどにノリノリなオッサンのことが私は大好きになってしまった(あと、彼の横でいつもノリノリで踊っている若干太ましいお姉さんも)。Jerryは船内テレビでもクソみたいなバラエティ番組をやっていたりして、これが顔に洗濯バサミを挟む競争とかの本当にクソみたいな内容なのだが、まあそんなことはどうでも良くて、ポイントはこういった番組を通してJerryが自分のキャラクターを確立させていくところにある。
漫画や小説などもそうだが、これらの作品は基本的にストーリーのクオリティで売るものではない。キャラの魅力で売るものだとよく言われる。購買層は物語が好きだから作品を買うのではなく、キャラクターに入れ込んだ結果としてお金を支払うのである。それと同様に、お船での体験は非常に素晴らしいものであったが、しかし、同等の素晴らしい体験は他のお船でも可能かもしれない。だが、JerryというキャラクターにはHarmony of the Seasにもう一度乗らないと出会えないのである。これがデカイ。
……まあ、実際にはアクティビティ・マネージャーもコロコロ変わってると思うし、そもそも各船でのルーティーン制かもしれないので(カリビアンクルーズ社はたくさんのお船を有している)、もう一度ハーモニーに乗ったとして、またJerryに会えるかどうかは分からないのだが。
↑手前のグラサンヒゲがJerry。
・服装
ドレスコードに「フォーマル」とあるので、みんなビビると思うが、実際のアメリカ人たちは「おまえら、フォーマルの意味知ってる!?」ってくらいにラフな格好をしてくるし、特にレストラン側もなんもイチャモン付けてきたりしないので、さほど恐れる必要はない。
感覚的にはハロウィンの仮装に近い。「ハロウィンだから仮装しようぜ~~」くらいである。正装を堅苦しく強制されるというよりは、フォーマルなスーツやタキシード、ドレスなどで着飾った人たちがたくさんいて楽しい感じである。
だから面倒なら別にやらなくてもいいのだが、当然やってる人の方がノリが良くて「楽しい人たち」だと思われるので、そういう意味でやった方が良い。その意味でわれわれ日本人の場合、大正解は紋付袴、もしくは着物である。絶対に目立つしウケる。
あと、英会話がロクにできない状況で地味に役立ったのがマリッジリングで、これがあるだけで「自分は既婚者である」という最低限の情報を伝えることができる。たったこれだけの情報でもコミュニケーション上、意外とバカにならない。その意味で言えば、おそらく普段着の正解はこれだ。
船内でも寄港地でも、とにかく色んな外人から「ニーハオ!」と言われる。そんなん言われても挨拶をされたことにすら気付かず、すれ違って数秒経ってから、「あ、今の、俺に対しての挨拶だったの!?」となり、挨拶を返せなかったことを申し訳なく思ったりする。少し会話が成り立った場合は、そういう状況から「フロム・ジャパン」と伝えるだけで、相手はびっくりしたり喜んだりしてくれるので、上の服装により効率的に「フロム・ジャパン」であることを一目で伝えられると良いのではないか。
・寄港地
英会話ができないことで地味に困難なのが寄港地での観光である。お船は三ヶ所の寄港地に立ち寄る。と言っても別に船から出なくてもいいのだが。感覚的には「デートプランの選択肢がさらに幅が広がる」感じなので、まあ、みんな大体お外に出ていく。
ただ問題は、出航時間になるとお船は容赦なく置いて出ていってしまうので、これが怖いのだ。船が視認できるような近場をうろつくだけなら何の問題もないのだが、港からタクシーで移動しなければ観光地に行けないセント・トーマス島が最も恐ろしかった。なにせタクシーの運転手さんは訛りがキツくて、ただでさえ聞き取れない英語がさらによく分からない。それにそもそもこれはどう考えてもタクシーではない! 乗り合いバスだ!! なんかもはや概念の段階でよく分からないし、さらに言語も聞き取れないので、ちゃんと帰れるかどうか気が気ではなかった(しかし、そうして苦労して往復したコキ・ビーチの美しさは筆舌に尽くしがたいものであった)。
次のプエルトリコ、及びプライベートビーチのラバディは船から徒歩圏内に観光地があり、プエルトリコは近くの要塞を見学する場合、要塞の上からお船が見えるので安心感が絶大である。実際、徒歩10分程だ。ラバディも徒歩10分程でビーチに辿り着けるし、みんな大体一緒に移動しているので迷う恐れもない。
・費用対効果
今回のお船は大体一人40万円くらい掛かったので、数字だけを見ると全く安くはないのだが、しかし、クルーズの費用対効果は実は絶大に高いと言える。
こちらのロイヤル・カリビアン・クルーズ公式サイトでクルーズ検索をしてみて欲しいのだが、お船に乗るだけなら実は7泊でも800ドル程から乗れたりする。実際はこれに寄港料やらチップ代などが掛かるので、実質12万円くらいにはなるが、とはいえ、7日間で宿代・食事代・諸々のエンターテイメント込で12万円は費用対効果バツグンだと言える。これ、私がアメリカ人だったら年イチで行っちゃうよね。
まあ、問題は日本からだと飛行機代などがどうしても掛かることで、軽く計算してみたところ、
お船:12万
飛行機:9~11万
現地での移動と宿:5万
となって、どうやっても30万弱は掛かるという計算になった。なお、現地での移動と宿は現地の手配会社である日本総合ツアーズを利用する前提なので、ここの利用すら諦めてホテルやタクシー代を自分で捻出すればさらに2万程は削れるかもしれない。ホテル宿泊を諦めればさらに1万削れると思うが、こうなるとだいぶ敷居が高い。
なお、今回は旅行代理店のクルーズプラネットを利用したが、クルーズプラネットも現地での送迎やガイドに関しては日本総合ツアーズに委託しているので、直接に日本総合ツアーズに申し込むことも可能だ。ただ、クルーズプラネットさんも非常に良くしてくれたので、特に初心者には悪くないと思う。クルーズプラネットも最安価格で28万(+諸々で4万ほど)からあるので、色々自力でやるのと比べてそう無茶苦茶高いわけでもないと思う。
個人的には旅慣れたベテランでないならば、日本総合ツアーズは利用した方が良いと思う。飛行機でマイアミに着いてからホテルへ、ホテルからお船へ、お船からホテルへ、ホテルから空港へと送迎してくれるだけでも非常にありがたいし、船内での過ごし方ガイドや様々なTipsも助かった(係の人に聞いてなければ、飲み物を部屋に持ち帰っていいなんて思わなかっただろう)。船内では英語が分からなくても何とかなるが、最低限、避難訓練と下船手続きだけは理解しなければならないので、そこの説明があるのもありがたい。帰りの飛行機のチェックインをフォローしてくれるのも安心感が大きい。クルーズプラネットなり日本総合ツアーズなり利用してれば、旅慣れておらずとも英語ができずとも、かなり何とかなるのではなかろうか。
……われわれの場合は、シカゴで一度放り出されて悪戦苦闘するハメになったのだが。
ただ、われわれは、クルーズプラネットさんの提供してくれる優しさに満ちたパッケージングに甘えすぎていて、現地情報などの下調べが不十分だったことは否めない。最初から全て自力解決を目指してめちゃくちゃ調べてから挑んだ方が、シカゴで突然放り出されるなどのイレギュラーな状況にも対応できたかもしれない。とはいえ、さすがアメリカは文明国だし、なんのかんのでギリギリ会話も通じるし、今になって振り返ってみると特に何ら危機的な状況ではなかったのだけれど、しかし、心理的な恐怖は凄まじかったな……。
・最後に
お船から去る時は本当に名残惜しくて仕方なく、妻も「このまま一ヶ月乗り続けて、お船のまま日本まで帰りたい……」と言っていたくらいである。分かる~~。このめちゃくちゃ素晴らしいお船体験から日常に帰るのかと思うと、なかなか憂鬱ではあるが、しかし、別にこれで終わりではなく、60万貯めるだけで、また何度でもお船に乗れるのだ。まあ問題はお金よりもむしろ時間であって、どうやって2週間の休みを取るか、だが……。私はフリーだからまだなんとかなるが、妻が就職したら難しい気がする。なんで日本は2週間の連続休みすら取れない体質なのか。
ともかく万難を排してまたお船に乗りたいものである。
*
<今後の活動予定>
【4/22】パンスト異業種交流会
【4/28】第三回トークメーカー・ボードゲーム部
【4/29】第16回マンガ新連載研究会定例研究会
【5/6】ゲームマーケット
【5/12】B&B「リアル人生ゲーム完全攻略本」イベント(詳細未定)
※毎週金曜夜:ダンゲロス・ボードゲーム会(in東中野ディアシュピール)