【2/7-8】おれの名はかがみ……エリート納税者……

   

【2/7】

朝:豚の味噌漬け、味噌汁
昼:大根とチキンのカレー、ナン、サラダ
夜:ハンバーグ、サラダ、フルーツヨーグルト

・「質問は正しく質問できた時点で9割方解決している」。諸君はこの言葉を知っているだろうか? そう、私がついさっき作った言葉だ。

・私は今日、満を持して税理士による無料相談会へと向かった。昨晩は深夜2時までかけて、私は全ての経費を整理してまとめ、銀行口座と突き合わせて全ての収入をエクセルに記入し、そして、各社から届いた書類を一社ずつまとめた。データ的には完璧であり、その上で青色申告を行う上での幾つかの疑問点をリストアップしている。

・会場には三十名ほどのご年配のおっさん、おばちゃん、じいちゃん、ばあちゃんが座っていた。人の数はそれほどではない。てっきり100人単位の人でひしめき合ってると思っていたのだが、全然そんなことはなく、座って2時間も待てば私の番となった。待ち時間もノートPCで作業していたので全く苦ではない。

・私はここにいる誰よりも優良な相談者である自覚があった。なにせデータは全て揃っているし、分からないことも明確なのだ。そして、私が分からないことは、おそらく税理士さんたちは何度となくその質問をぶつけられ、答えてきたはずであろうから、簡単に私にその知恵を授けてくれるはずだ。むろん、私にはそれを理解するだけの論理的思考力もある。「何がなんだかさっぱり分かりません!」「何が分からないのかも分かりません!!」 私はこのような納税弱者たちとは一線を画する…………そう、いわばエリート納税者…………。税理士もきっと気持ちよく私の質問に答えてくれて、「あなたのような完璧な相談者は初めてです!」と涙を流して喜んでくれるだろう。

・私は意気揚々と税理士のお姉さんの対面に座った。そして、言った。

「私の最終目標は青色申告による65万円控除です! そのために幾つか分からないことがあったのでご質問に来ました!!」

 まずはゴール地点を明確に伝える。次にその途上に立ちはだかる諸問題を伝えて答えを導き出す。ここまで正しく質問ができれば、もはやほとんど答えは得られたも同然であろう。ウワハハハ!!! 私はさっそくお姉さんに一つ目の質問を投げかけた。

「…………分かりました。そのためには***(専門用語)をまず***として、次にエクセルから***を、***の画面で***して……」
「ちょっと待ってください!」

 ちょっと待ってください!!!!!!

・待って、いきなり分からない。

「えっと……つまり***は***だから…………***は……なに??」
「***は***です」
「アッ、ハイ」
「なので、***という処理で***と***を突き合わせて***をする必要があるんです」
「アッ、ハイ。で……では、それをどうやって、やよい上で再現すれば……?」
「***を開いて下さい。ここで***を***して、こうすれば…………ほら? ***でしょう?」
「すいません……メモらせて下さい……」

 この辺で私の頭は既に大分混乱していた。既に数十分が経過している。

「…………えっと、これを全部やっていく?? あ、はい。なんとか、やります……。で、次に、この質問なんですが……」
「***は、***なんですが…………。すいません、このレベルから概念を説明していると時間がいくらあっても足りなくて……この無料相談会、一人30分までなんですよ」
「エッ」
「すいません……」
「あの……平均課税についてもお聞きしたいのですが」
「あ、それはすごく混み合った話なので、もうこの場では全然むりです」
「エッ……」
「あ、あの、気を落とさないでくださいね……」
「…………」
「た、大変だと思いますが、頑張ってください……」
「…………」

・エッ。

・マジで……?

・この私が……あれだけ真面目に準備して……。質問を全て、消化することさえ、できない……???

・エッ!?

・こ、この国の税制、大丈夫なのか……? エッ、ちょっと、難しすぎるのでは?? えええ……こんなの、国民の何割が正しく申請できるんだよ。いや、ムリだろう。だから税理士なんて専門職がいるのだと言われたらそれまでなんだけど、エッ、専門職に頼ること前提で税制作ってるのもどうなんだ、それ。
 
 
【2/8】

朝:フルーツヨーグルト
昼:焼き魚定食+アジフライ
夜:油そば

・翌日ーー。秋葉原の某税理士法人に書類一式を持った私の姿があった。

「じゃあ、帳簿を最初から作り直しましょうねー」
「アッハイ」
「最初から頼ってくれればよかったのにー」
「アッハイ」

 凄まじい安堵感にいま私は包まれている……カネで解決できることはカネで解決すべきだと、私は学んだ……。 

・いやでも、一回もトライせずに最初から諦めるというのも性に合わないし、今回のトライ自体は良かったと思う。最初から税理士に頼ってたら、「俺は頑張ればずっと一人でできてたかもしれないのに……努力を怠った……」という後悔を抱いていたかもしれない。だから、この(無駄だった)努力も全ては必要経費というか、ここに至るまでに必要なステップだったのだ。

・私の脳みそは非常に都合が良くできているので、今回のように結果的には明らかなミスをしていても、このような補正がかかり、「総合的に見れば決してミスでも損失でもない」という謎の認識にすり替わったまま、その後の人生を歩んでいくのである。よって私は人から「失敗したことはありますか?」と聞かれても、なんとなくこれらの経験を思い出すことなく、「いや……たぶん無いですね。だいたい成功してきたんじゃないかな?」と答えるのである。

・とりあえずお昼ごはんの焼き魚定食の画像を貼っておこう。

 *

『放課後ウィザード倶楽部』3&4巻と感想戦テキスト発売中です。

『放課後ウィザード倶楽部』感想戦

 で、困ったことにnoteの方の購読者の方から「コメントできねーぞ!?」という声がありまして。いろいろ調べたところ、どうもnoteではアカウントとIDが別の概念らしく、アカウント取得段階で記事自体は買えるけれど、IDを取得せねばコメントはできないようです。IDの取得方法もよく分かりませんが、とりあえず私をフォローしようとすれば取得できるらしいですので、なんかすいませんが、そんな方向でよろしくお願いします。

 江藤ことesも熱烈にツイートしてくれたので、どうぞよろしく。いまコメント欄では「小説家が漫画を書く時の強み、逆に漫画家が小説を書く時の強み、弱み」について質問が寄せられていて、私と江藤がそれぞれ答えています。

・かなり頑張って書いてるので、このテキストが技術論・創作論的な意味でしっかりした地位を獲得して、教科書的な感じで1~4巻も売れたらいいなぁ。

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・ダンゲロスボードゲーム、クラウドファンディングの締め切りまであと35時間です! レポートもばんばん更新!!

【2/7】終了まで後3日となりました

 ここまでの制作状況の進捗をまとめて、いくつかの新発表をしました! 地獄のミサワ先生、参戦!!!

追加カードの詳細です
 
 そして新規追加カード6枚をご紹介。苦労人の割には扱いの悪いエース先輩がついに……!

【2/8】製作日誌(15)「インターネット殺人事件が強すぎる問題」

 支援者さま限定記事もアップしました。今日もテストプレイしてたんだけど、何回やっても毎回楽しいので、結構いいゲームなんじゃないかと思う。

・そんなこんなであと1日半くらいですが、クラウドファンディングよろしくお願いします。5000円コースはボードゲーム本体もついてくるよ!

 - 日記