【9/16-17】体験入隊

   

【9/16】

朝:おにぎり
昼:ミラノ風カツレツ、小鉢x2、汁物
夜:チキンステーキ、小鉢x2、汁物

【9/17】

朝:パンx2、スープ、牛乳
昼:牛しぐれ煮、小鉢x2、味噌汁
夜:鍋

・お誘いを受けて自衛隊に生活体験(=体験入隊)してきた。16日の昼から17日の昼まではあちらで出された食事である。

・新兵と同じようにシゴかれる……といったことは特になく、もちろん厳しいニュアンスはあるものの、自衛官の方々は総じて優しく面倒見も良く、また諸事につけ常に安全面での注意喚起があり(「ここに溝があるから気をつけてくださーい!」)、健康状態も非常に気遣ってくれるので、リスクを感じることはほとんどなかった。みなさんも興味と機会があれば気軽に(?)参加してみるとよろしかろう。

・体験したことを逐一書く代わりに、今回学んだことをメモ代わりに残して行きたいと思う。以下はこの二日間で得た情報を私なりに咀嚼してまとめたものなので、「それは違うぞ」という事情通の方の意見があればコメント欄にてお願いしたい。私はそれを受けて特に本文を修正したりはしないので、より正確な情報を求める方はコメント欄を参照して、各々勉強してね。

 *

・自衛隊では戦闘服の腕まくりですら任意ではなく、やり方が統一されており、腕まくりをするタイミング、長袖に戻すタイミングも上官の指示により一斉に行われる。ベッドメイキングのやり方、毛布の片付け方なども統一されていて、かなりの正確さ、丁寧さを求められる。

・基本教練(右向け右とか、休めとか、敬礼とか)も当然、やり方、タイミング共に統一されている。更新時の歩幅と歩く速度も統一されている。1歩が75cmで1秒間に2歩。

・細部まで統一することにより、非常時(戦時)における集団行動を可能ならしめる意味合いがあると思われる。逆に言えば、細かいことまで徹底して統一し、一人一人に正確さを強要しないと、多様な人間集団を同一命令の下に規律をもって動かすことは難しいのだろう。

・こういった細部までの統一はかなり息苦しさがある。これに慣れて息苦しさを感じなくなった頃には、息を吸うように規律ある集団行動が取れるようになるのだろうか。

・規律≒練度。少なくとも周りからはそう見えるらしい。災害派遣された自衛隊の車両がピシッと止まってると、諸外国の軍隊は「自衛隊こんなところまでピシッとしてる、すげえな」とビビる(強そうに見える)。「強そうに見える相手にはケンカは仕掛けてこない」。ベッドメイキングとかをピシッとやるのもここに繋がるのか。

・そう考えると様々なことが統一されており、高い精度でそれを守ることが強要されるのも国防の一環と言えるかもしれない。その意味合いを考えれば重要なことだと感じられる。

・余談だが、中学生の時にマスゲームという名称で、この基本教練と同じことを体育祭でさせられた。あの時はそれをすることの意味が全く分からなくて、「なんだか軍隊っぽくて嫌だなあ」くらいの感覚を覚えたものである。しかし、「軍隊っぽく」ではなく、実際に軍隊の中で(もう軍隊って言っちゃいますけど突っ込まないように!)、軍隊に必要なものとしてマスゲーム(基本教練)を受けると、その必要性が実感を持って上のように感じられた。なるほど、これは必要なものだ。中学生にやらせる意味は未だによく分からんけれど。

・軍曹はこの兵たちの統率を分隊規模で取るお仕事。どんなに壮大な作戦も末端の兵がちゃんと動かないと意味がないので、軍曹の働きは大事だと感じた。

・話は大きく変わって指揮官の話。以下は懇親会にて一尉(中隊指揮官)から聞いた話なので、具体的な事例は色々異なると思う。

・一尉(≒大尉)の仕事は、中隊指揮官に任ぜられる期間が少しあって、後は大体幕僚。

・幕僚(≒参謀)は連隊規模からしかおらず、中隊にはいない。もちろん中隊にも中隊指揮官の下に作戦立案などの補助スタッフがいるが。(なお、陸自には大隊はほぼないらしい。中隊の上は大体連隊になるとのこと。色々と複雑な過程があったらしい。大隊があるところだと参謀はいるの?)

・指揮官が上から指示を受けると、それに対して幾つかのセクションの参謀(作戦参謀とか兵站参謀とか)がそれぞれの観点から意見を出す(「こうやったらいいんじゃないすか」「こうしたら三日くらいは兵站もちますよ」)。もちろんそれぞれの参謀も部下を使って調べさせた上で結論を出している。参謀というと作戦の立案(兵をどう動かすか)をしているようなイメージだけど、それは作戦参謀で、実際は兵站とか他にも色々考えるべきことがあるので、幾つかのセクションの参謀がいる。

・それぞれの参謀が意見を協議して(統一案を出す? 協議するだけ?)、指揮官に具申し、指揮官の考えと同じかどうかをチェックする。これが「戦術」。

・頭のいい奴ら(参謀)が考えることなので、手元のデータが同じなら大体みんな同じ意見になる。それどころか敵側も同じ意見になる。なので、その時点で基本的な勝ち負けは敵味方お互いに分かってしまう。

・まずはこの「誰でも同じ見解」を出せる能力が求められる。そこに至れない人もいるので。

・「普通にやるとこうなる」という現状を把握した上で、それを崩すために指揮官が「普通はこうする」から、あえて外れた作戦案を出したりする。参謀が「あえて外れた作戦案」を具申することもある。漫画とかに出てくる「すごい作戦」はこの流れで生まれる(銀英伝でムライ参謀長があえて型どおりの意見を出して、ヤンがそれを大幅に修正して奇策を成功させるのは結構リアルな流れ!)。

・ただ、指揮官がそれをやると部下は顔をしかめるし、部下がそれをやると指揮官は「えー、そんなのやんなくても」って言う。(陸自はこの「あえて外れる」能力が弱いとのこと)

・一尉によれば、データ同士を戦わせる(数字の上で勝ち負けを判断する)能力に加えて、指揮官は頭の中で立体的に作戦状況を構築する能力が必要とのこと。前者だと「誰でも同じ見解」が出せるけど、さらに後者が必要。(この辺のニュアンスは私の理解が曖昧)

・戦争は(今のところないので)もっぱら演習。演習では「ちょっと難しい課題」が出されて、それを遂行するために参謀ががんばって考えて、指揮官が妥当性を判断してGOし、兵が作戦通りにピシッと動くことで良い結果を出す。

・演習を通して参謀は作戦立案能力を、指揮官は判断能力、指揮能力を、兵は規律をもって指揮に従い動く能力を練磨する。

・ちなみに対戦形式の演習もあって、実際に戦車とかヘリコプターとかがバリバリ動くリアル将棋みたいなことになる。実弾は撃たないので、「ここにこれだけ戦車があって、相手側はこうこうだから、ここは戦車の勝ちじゃない?」みたいに上が判断する。

・演習で良い結果を出すと上から評価されて認められる。作戦上、その部隊は難しい場所とかに投入されたりするようになる。演習時の成績を加味して、「じゃあ、この9割くらいは実戦でも発揮できるだろう」みたいな判断で投入される。

・演習は訓練であると同時に、その後の演習や実戦におけるデータ収集?

・指揮官は参謀からの意見具申の妥当性を評価しなければならない。そのために必然的に参謀職をしてから指揮官になることになる。

・よって、「参謀→指揮官→より上の参謀→より上の指揮官」といったキャリアコースとなる(ここちょっと自信がないけど、たぶん連隊の参謀→連隊の指揮官→旅団(師団)の参謀→旅団(師団)の指揮官、といった流れになるのでは)

・でもこれだけだと浮世離れして人間としてのバランスが悪くなるので、途中で新入隊員募集の部署とか広報部とかに異動させられて、世俗社会と触れ合いバランスを取るようにする。なので広報部でニコニコしながら接してくれる優しい自衛官のおじさんも、数日前までは山の中で体中に木の枝くっつけて走り回っていたのかもしれないのだ。

・広報部に回されたらずっと広報部というわけではない。ただし、海自や空自のような専門性の高いところだと、「広報一筋ウン十年」という人もいる。

・すごいやつはどこに回されてもピシッとやって、広報部とかも1年で終わらせて、どんどん上に登っていく。

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・今日の宣伝コーナー。

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 自衛隊もちょっと出てくるよ!

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